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「すべては、パン工場からだった。」
そこには、パンの香りが漂い、優しいジャムおじさんがいた。
彼は、パンを作る心優しい職人だった。
……いや、表向きに過ぎない。
彼が求めていたのは――完全支配。
世界を正と悪に分け、自らが創り出した象徴を崇めさせること。
そして、そのために作られたのがアンパンマン。
ジャムおじさんは、ある研究をしていた。生命を持つパンを生み出す実験だ。
彼は夜な夜な、奇妙なパンを作り続けた。そこに、ある素材を混ぜ込んだ。
それは――”ばいきん”。「”菌”が必要だ。」
彼は地下で菌培養。そしてついに成功。こうして生まれたのが、アンパンマン。
しかし、実験には副作用があった。別の”生命体”が誕生すること。
そう――ばいきんまんは、アンパンマンを生み出す過程で生まれた失敗作だ。
ばいきんまんはアンパンマンと同じだ。しかし、ジャムおじさんは、彼を見た。
「…これはひどいな。」
ばいきんまんは、パン生地ではなく、汚れた菌の塊だった。
彼はすぐに焼却処分されるはずだった。
だが――
「やめろ!!」ばいきんまんは、必死に逃げ出した。
ジャムおじさんは、追わなかった。彼には 悪も必要だったからだ。
「アンパンマンが『正義』であるためには、『悪』も存在しなければならない。」
ばいきんまんは、生まれた瞬間からジャムに利用されていたのだ。
ジャムおじさんは、アンパンマンに言い聞かせた。
「お前は『正義』だ。お前は『みんなを助けるヒーロー』なんだ。」
アンパンマンは、そう信じて疑わなかった。
しかし、彼は知らなかった。
彼が倒してきたばいきんまんが、自分と同じ実験から生まれたことを。
ある日、アンパンマンは地下に迷い込んだ。そこには、古録が残されていた。
「被験体 No.01——アンパンマン」
「被験体 No.02——ばいきんまん(廃棄処分)」
「な……んだ、これ……?」
彼は震えた。自分は実験体にすぎなかった。
ばいきんまんは「悪」だったわけじゃない。悪にされたのだ。
「ジャムおじさん……これって……」
アンパンマンは、問いかけた。ジャムおじさんは、静かに微笑んだ。
「お前は正義でいればいいんだよ。」
「世界は、私が創った”物語”なんだから。」