主人公:なつ
高校1年
努力するのは嫌い
人と関わるのも嫌い
俺の家が“普通ではない”と気づいたのはつい最近、高校生になってからだった。
なにをするにも親の許可が必要で、
1人で出歩かせてもくれない。
いわゆる過保護というものだ
その上、勉強には厳しい
そんな家庭。
勉強はわりとできるほうだった
先生からも上の高校を進められた
「このままがんばれば…」って一言つけて。
でも、自信なんかなかった
努力する気もない。
どうせ落ちたら問い詰められるのも嫌で
家から1番近くの底辺高校の名前を第1希望に書いて提出した。
親から渡された山のような受験対策ワークにも一切手をつけず、部屋にこもってゲームばかりしていた。
もちろん落ちる訳もなく、難なく合格した
入学式。死ぬほど嫌いな自己紹介
な(暇72です。好きなことはゲームです。よろしくお願いします。
無難な自己紹介を終え、目立ちたがる奴らを横目に陽キャ陰キャの人定めをして終わるのを待つ。
これが第1段階
第2段階、これからつるむ奴を決める
これが俺の1番苦手な作業。
教室の隅で笑顔で話している2人組を見つけると意を決して声をかけた。
幸いにも、優しく輪に入れてくれて助かった。
3人組だと俺が孤立するだろうと思っていたがそんなことはなく、
す(ひまちゃんゲーム好きって言ってたよね。どんなのするの?
み(俺も知りたい!!
いつも俺が話の真ん中だった。
どうやら好かれているらしい
でも正直、うざかった
教室で孤立しないように声をかけた
ただのルーレットに過ぎない。
話に入らず、ただ聞いてるだけで十分だった。
そんなことなど言えるはずもなく、その場のテンションでなんとか誤魔化す。
心のバロメーターが下がっているとき2人の声が耳に入ってくることはなく、いつも無視してしまう。
そんなとき2人は、俺の事を知っているかのように俺の手を握って2人で話し始める。
よくできた友達だ。
きっと誰もが友達になりたがると思うだろう。
そんな奴ら。
そんなある日。
み(なっちゃん明日ここ行こ!!新しくできた隣町のカフェ!!
遊びに誘われた
親が隣町に1人で行かせてくれる訳もなく、
俺はやんわりと断った。
な(明日、親に手伝えって言われててさ笑
ごめんむりだ
す(えーじゃあ明後日は?
な(…ごめん
す(んー、そっか…
愛されてるね、、ひまちゃん
そう言い、苦しそうな笑顔を俺に向けた。
す(俺らの家ね、結構複雑でさ…
2人はそう、ぽつりぽつりと話し始めた。
す(だから俺、ひまちゃんが羨ましい…
みことも静かに頷く。
このとき俺は初めて2人に嫌味を感じた。
「俺の家の事詳しく知らないくせになに知った気になってんだ」って。
同時に、俺の家が普通ではないんだと気づいた。
正直、俺はふたりが羨ましい。
たとえ、ほっとかれてても、忘れられてても。
俺は自由が欲しかったんだ。
誰にも縛られないで自由気ままに過ごせる日常が。
とうてい、俺は親に愛されてるとは思えない
ただの親の自慢物でしかない俺。
2人は体が弱かった。愛想が良く、先生にも好かれてた。
それでも、体調不良を隠そうとするから先生にも凄く心配されていた。
俺だって、もちろん体調悪い時もある。
体調を隠すのは俺の方が上手いかもなんてとにかく自分に言い聞かせている。
先生はいつも、2人と一緒にいる俺に「2人のこと頼んだぞ。ちゃんと見ていてくれ。」
と俺に言ってくる。
俺は2人の親じゃない。
お世話係でもない。
2人して体調が悪くなったあの日。
俺は、今すぐにでも倒れそうな身体を励ましながら2人を保険室に連れていき、
2人をよろしくお願いしますと必死に笑顔を作って保健室を出た。
階段下でうずくまり、涙をこらえながら先生に言われた言葉を頭の中でループさせる。
不幸続きかなにか、サボりだと思われた先生に長らく説教をくらったようだったが、
なにを言われたかまったく覚えていないので、ここは割愛する。
そして俺は2人の顔も見ずに、帰りたくない家に帰った。
俺はもう限界だった。
学校に行くのもいやだった。
次の日、親に連絡が行かない程度でゆっくりと学校に向かった。
もちろん遅刻だったが、
「日頃の行いがいいから」と遅刻は記録されず、消えた。
それもそれで期待されてるようでなんかいやだった。
2人といると居心地が悪くて
その日のお弁当は「約束があるから」と言って誰もよりつこうとしない棟の隅で食べた。
これが俺の第1章。
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