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ー交わる瞬間ー
あれから、数日が過ぎた。
神谷はあまりにも忙しく、自由に会う機会を作れなかった。
けれど、心の中ではずっとあの告白が引っかかっていた。
あの時の自由の真剣な目と、優しい笑顔が、胸の奥に残り続けている。
そして、そんなある日、仕事が終わった後、神谷は一人で帰ろうとスタジオを後にした。
その時、ふと後ろから足音が聞こえた。
入野「……神谷さん」
振り返ると、そこには自由がいた。
いつもより少し、真剣な表情を浮かべている。
神谷「何だ、まだ仕事?」
入野「……いえ、終わりました。少しだけ、話したいことがあって」
その言葉に、神谷は不安が胸をよぎる。
でも、逃げたくないという気持ちが強くて、そのまま自由に歩み寄った。
神谷「話したいこと?」
入野「はい。あの……実は、今日は少し、俺から頼みたいことがあって」
自由は、神谷を見つめるその目がどこか真剣だった。
そして、ほんの少しの沈黙を経て、口を開いた。
入野「……もし、神谷さんが嫌じゃなければ、今夜、一緒に食事に行きませんか?」
その一言に、神谷は思わず足を止めた。
食事――それだけではない、自由の表情が、まるで「もう逃げないでほしい」と言わんばかりに懇願しているように見えた。
神谷は答えられず、ただ一瞬黙っていた。
神谷(こんなことで逃げられるのか?)
その瞬間、胸の奥に何かがこみ上げてくる。
そして、意を決して口を開いた。
神谷「……お前、何か俺に伝えたいことがあるんだろ」
自由は少し驚いたように目を見開いたが、すぐに静かに頷いた。
入野「……はい。ずっと、言いたかったことがあって」
その言葉に、神谷は心の中で覚悟を決めた。
これ以上、逃げるわけにはいかない。
神谷「じゃあ、行こうか」
そのまま、二人は歩き出した。
その後、二人は近くのカフェで落ち着いた席に座った。
神谷は自分が何を言われるのか、少し怖い気持ちもあったが、自由の真剣な表情を見て、少し心が落ち着いた。
入野「俺、神谷さんのことが好きです」
神谷「それはもう、聞いた」
神谷は軽く笑って答えるが、自由の目はまだ揺るがない。
入野「でも、俺はそれだけじゃない。神谷さんに、もっとちゃんと伝えたいことがあるんです」
その声に、神谷は顔を上げた。
自由は少し照れたように顔を赤くしながら、静かに続ける。
入野「俺、神谷さんと一緒にいられたら、どんなに幸せかって思っています。でも、それだけじゃなくて……もっと、こういう気持ちを伝えるには、きっと時間がかかると思う。でも、今日だけは、覚悟を決めて言いたいんです」
神谷「覚悟?」
入野「はい。……もし、神谷さんが迷っているのなら、これ以上待つつもりはありません」
その一言に、神谷の胸が高鳴る。
そして、自由が立ち上がり、少し距離を置いて言った。
入野「俺は、これからもずっと、神谷さんのことを想い続けます。でも、もし神谷さんが今、少しでも俺を気になっているのなら……今すぐにでも、答えを聞きたいです」
その直後、神谷は立ち上がった。
神谷「答えを、出せるわけがないだろ」
自由は静かに目を閉じて、少しだけ肩をすくめた。
入野「そうですね。でも、俺は待ちません。今すぐにでも、神谷さんに告白します」
その言葉に、神谷の胸はもう一度大きく鼓動を打つ。
そして、突然自由が近づいてきた。
入野「……俺、どうしても、神谷さんと一緒にいたいんです」
その言葉が、やけに胸に響く。
そして、自由が神谷の目の前でじっと立ち止まる。
その瞬間、神谷は一歩踏み出して、自由の手を取った。
神谷「……答えが、今すぐに出せなくても、いいだろう?」
自由は少し驚きながらも、静かに頷いた。
入野「はい」
そして、神谷は少し照れたように言った。
神谷「じゃあ、一緒にいることに、しようか」
その瞬間、二人の距離が急に近づいた。
心の奥で感じていた恐れや不安が、ようやく少しずつ溶けていくのを感じる。