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〜side小柳〜
「今日ってこれ‥‥新しい子たちの研修?」
「んー、俺たちは危なくなりそうなら手を貸すくらいで行こうぜ。もうそろそろ大丈夫だろ」
俺たちは街の中を歩いていた
目的地はこの繁華街を抜けた先にある
隣には星導
なんだかんだありつつ、星導もまだこの組織に在籍している
俺は‥‥
淡い期待を消せず、この場所を離れられないでいた
「この街も大分変わったね」
「そうだな。随分時間も経ったしな」
「どのくらい経つ? 」
「‥‥わからん。一世紀位?」
「経ったかもな。でも凄くない?一世紀以上も『Dytica』の名前が存在し続けるって」
「そうだな。ま、俺のこだわりで残してもらってるんだけどな」
「良いんじゃない?もしかしたら見つけてくれるかも知れないし」
星導が俺を見てニヤニヤと笑う
俺は星導の肩にグーパンを食らわす
そんなやりとりをしていると、前を歩いていた後輩達が俺たちに向かい手を振っている
「小柳さん!星導さん!早く来てくださいよ」
その言葉に軽く手を挙げ、応える
「おい、俺たちもしかしてジジイ扱いされてる?」
「そんなことはないでしょ。見た目は変わらないのに」
「それにしても今日、人多いな」
「帰宅ラッシュも終わりかけなのにね。あ、雨も降って来てない?」
「寒くなってきたのにやめてくれよ」
突然の雨に小走りで後輩を追う
街の人々も傘を開き出す
人が多いのに傘を差し出す人が増えて、ますます進みにくくなる
人混みをすり抜け歩道を進む
星導とすら距離が離される
「うわ、強くなってきたな」
予報には無かった雨が本気を出して降り始める
上を見上げていた俺と、傘を真深に差していた方と勢いよくぶつかってしまった
「す、すいません!大丈夫ですか?」
傘を落とししゃがみ込む男性に声をかける
俺の声に顔を上げ、目が合う
俺は傘を拾い男性に差し出した
歳の頃合いは大学生くらいだろう
彼は差し出す傘には目もくれず、俺を見ていた
その顔が急に眉間に皺を寄せ、手で胸を抑えつける
俺は慌ててしゃがみ込み、肩に手を掛けた
「どこか怪我されましたか⁈」
俺が肩に置いた手を掴まれ、大きな瞳が俺を捉える
「‥‥‥‥小柳?」
END.