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ぅ ぃ
13
紅葉
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講義の合間にスマホを確認する。一時間程前に届いていたメッセージ。其処には残業を免れなくなってしまったといった内容が記載されていた。
「syu、もしかしてkzから?」
隣に座っているのは友人のrm。大学に入学してから出会い、学部が同じこともあって仲良くなってからはずっと一緒にいる。そして彼には、自分と同じ共通点があった。
「うん、そう。今日残業だって」
「そっかー。こっちは定時で帰れるって連絡きてたけど。やっぱ社会人って大変だな」
「そうだね」
Syuにはkzという恋人がいる。自分より四つ年上の、社会人の彼。出会ったのは数年前。ひょんなことから知り合いになり、一目惚れをしたsyuが懸命に口説き落とした。Syuが大学生になった当初はkzの一人暮らしする家に通う日々だったが、余りにも入り浸っていた為そのままの流れで今は一緒に暮らしている。
そしてrmもsyuと同じように社会人の恋人がいる。Kzの友達のfu。以前、syuと一緒にいた時にkzと共にいたfu。四人で何回か会う内に段々と魅かれていって何時しか付き合うことになっていた。これは後日談だが、rmと付き合いたいfuがkzに頼み込んで会える回数を増やしていたとか何とか。同棲はしていないが、rmがfuの家にいる時間は長い。
兎にも角にもそれぞれのカップルは似たような形で付き合っているのだった。
「fuは何て?」
「定時だけど、少しだけ残らないといけないみたい。Syu、授業終わったらスーパー寄ってかね?」
「いいよ。Kzが遅くなるなら夕飯作っといてあげたいし。丁度冷蔵庫の中が寂しくなってきてたから、買い物行かないとご飯作れない」
「じゃあ、とっとと残りの講義を受けて帰るとしますか。何作るか考えとかなきゃ」
「俺は結構時間ありそうだから、煮込み料理とかしてもいいかも」
「それはあり~」
そんなことを話していると、教授が入室してくる。此の教授は私語に関して厳しい人物だ。二人の周囲で同じように談笑していた学生達も途端に黙る。それによって静まり返る室内で、教授は独特のペースで授業を開始するのだった。
(ご飯、何がいいかなぁ)
ノートにペンを走らせながらsyuは考える。Kzは元よりかなり少食だ。それに反してsyuは平均的かそれ以上によく食べる。Syuの胃袋に合わせた料理は、kzが遅い時間に食べるには少し重い。
適度なボリュームはありつつも余り胃に負担をかけすぎないもの。色んなメニューを脳裏に浮かべながら、残りの時間を過ごすのだった。
「……さて、準備しますか」
講義が終了し、syuとrmでスーパーに寄った。それぞれ食材を購入して帰路に着く。Rmは鮭のホイル焼きを作るとかそんなことを言っていた。しめじとえのきと何種類かのキノコを買っていたのが印象的だった。
対するsyuはロールキャベツを作ることにした。手間はかかるが、のんびり準備をしていたとてkzが帰宅するまでには充分間に合うだろう。
少々柔らかくしたキャベツの葉に、肉だねを包んで巻いていく。きゅっと巻いても剥がれてしまうときは、パスタを刺してつまようじ代わりにした。このまま煮てしまえば、形が崩れることもないし抜き取る手間が省ける。スープの味付けのベースはコンソメ。コトコトと煮ながらサラダを用意する。雰囲気的にはパンの方が合うと思うが、生憎と米が食べたい。故にご飯を炊き、今日食べないだろう分は明日の朝ごはんにおにぎりにすることにした。
そうこうしているうちにスマホが鳴る。仕事が終わったという連絡で、後三十分もしたら帰宅出来るという。
「すぐに食べれるようにしとこう」
ダイニングテーブルに食器の準備をテキパキとしていく。ロールキャベツも温め直し、サラダを冷蔵庫から取り出した。お揃のコップに冷たい麦茶を注いでいると、玄関の方から音がした。
「おかえり」
ひょこり、と顔を出すと丁度kzが靴を脱いでいた。Syuの姿を見ると彼の顔が綻ぶ。
「ただいま」
「残業、お疲れ様。大変だったでしょ」
「残業自体はまだいいんだけどさ、定時の少し前に言うのはほんと止めてほしいわ」
夕食の準備が整っていることを伝えると、kzは急いで準備するとのこと。料理が冷めないようにとの気遣いからだろう。パタパタとスリッパを鳴らして自室へと行き、部屋着に着替えるとすぐに洗面所へと向かう。手を洗っている水音を聞きながら、syuは温かく湯気の立つロールキャベツを皿によそった。
「「いただきます」」
揃って挨拶をし、食事が始まる。ロールキャベツはしっかりと煮込まれており、味付けも丁度よい。少食のkzは二個。よく食べるsyuは三個。
「ん、美味し。作るの大変だっただろ?」
「今日は時間があったから。美味しいなら良かった」
それぞれがこの日、あったことを話しながら穏やかに食事の時間は進んでいく。出来る限り、二人は一緒に食事を摂るようにしていた。互いに時間が合わないときはあるが、そうでなければ毎日、これを続けている。二人で過ごす時間の大切さを、彼等は知っているのだ。
「はー…、美味かった」
食事を作っていない方が食器を洗う。そういう決まりになっていた。
残った分はタッパーに入れて冷蔵庫に保管し、kzはテキパキと食器を洗う。その間にsyuは風呂を洗って湯を張る。風呂が沸けば二人一緒に入る。此れも、彼等が一緒に住み始めてから続けていることだった。
「あったかいねぇ」
男二人では少々狭い湯舟にくっついて入る。Syuの胸元に背を預け、頭を撫でられながら入浴するのがkzは好きだった。頭を撫でられ、首筋にキスを落とされていれば段々とそういった気分にもなるもので。
「なあ、syu」
後ろを振り向き、そう言えば彼は正しくkzの言いたいことを理解する。このまま風呂場で致すこともあるが、のぼせてしまう可能性もある為回数は余り多くない。この日も促される侭に風呂から上がり、ふわふわのバスタオルでくるまれた。
気分が盛り上がっているときはこのまま寝室へと直行する。湿る髪はそのままに、ベッドへと押し倒された。
「syu…ッ」
首に腕を回してキスをねだる。kzが望むままにsyuは応え、そしてぐずぐずに蕩かしていく。何時も、syuはkzを可愛がる。それは、食事にしてもセックスにしてもだ。
「kz、可愛い」
「ふぁ…っ」
指が頬をなぞり、再びキスが落ちる。次の日も仕事と学校がある。Kzに負担がかかる為、程々に。しかししっかりと互いに欲は吐き出して。絶頂後の気だるさに身を任せているkzを寝かしつけ、syuは片付けの後に彼の横で眠りにつくのだった。
「……俺、このままだと年上失格な気しかしない」
「どうした突然」
とある休日の昼下がり。この日はsyuとrmで学校関連の用事が入っており二人は不在。その為kzとfuでランチに来ていた。同じ社会人といえど、二人の職場は別な為毎日合っている訳ではない。そのためこうして二人になる機会があると、当然話すのは自分の恋人のこと。
喋るならば余り混んでいなく、滞在しやすい場所がいいと選んだカフェ。丁度テラス席が空いていた為そこを選んだ。ボリュームのあるチキンサラダにしたkzと、から揚げのランチにしたfu。食べている最中にkzが唐突にそんなことを言う。
「俺さ、最近ずっと仕事が忙しくて中々早く帰れなくて。それでずっとsyuがご飯の準備とかしてくれてんの。それはいいんだけど最近気付いたんだよ。俺、家にいる時ずっとsyuに世話してもらってるって」
本来ならば年上の方が年下を甘やかすべきなのだとkzは思う。しかし現実は真逆でsyuが日々kzの世話を焼き、食事から何まで彼の手を借りている状態。余りにも心地よくて気にしていなかったが、最近はたと思ったのだ。これは余り良くないのでは、と。
「成程なぁー。え、kzって下だっけ」
「うん」
Fuの問いに返答をしてkzは本当に頭を抱えた。夜の情事ですらsyuに頼り切りになっている。これでは本当に年上失格だと。
「まあ、年上だからって世話されちゃいけない訳じゃないじゃん」
「そういうfuは?」
「俺はrmのことめちゃくちゃ甘やかしてる」
「ほら~。年上としての役割とかさ、威厳とか色々あるじゃん。俺もsyuを甘やかしたいし、何ならお世話もしたい」
その後も自分がsyuにしてあげたいことをつらつらと語る。唐揚げを齧りながら聞いていたfuだが、段々面倒になってきたようで。相槌も適当になっていく。
「fu、ちゃんと聞いてる?」
「あー…」
「聞いてないじゃん」
力が抜けたように溜息を吐くと、kzは皿に残っていた最後のトマトを口に放り込んだ。同じくらいにfuの皿も空になる。見計らったかのように店員がデザートを持ってきていいか二人に尋ねに来た。デザートと食後の飲み物を頼み、待っている間にfuは言った。
「出来る所からしてみたらいいんじゃね?」
「例えば?」
Fuの提案はこうだ。平日は社会人の自分達に出来ることは少ない。その分、休日に色々してやればいいのだと。
「確かにそれなら出来るかも」
「だろ? 俺もrmの世話になってることも多いから、出来るときに色々してるよ。早速だけど、今日の夕飯でも作ったら?」
「それいいかも」
「この後合流するだろ? そっから一緒に買い物行ってさ。今日はsyuの好きなご飯でも作ってやるといいよ。俺もそうしよ~」
Fuの提案にkzは素直に乗ることにする。その手始めとして、自分が休みの今日の夕食作りだ。夜の情事はどうしてもsyuが主導になってしまうが、その点に関しても自分にやれることはある筈。
年上として、どうしてもsyuを甘やかしてやりたいという誓いをしながら、kzはデザートの最後の一口を放り込んだ。
「kzのご飯食べるの、もしかして久しぶりかも?」
「うわ、そんだけsyuに作ってもらってたのか。何時も悪いな」
「気にしないでよ。俺も好きでやってることだし」
学校での用事を終わらせたsyuと合流し、二人は買い出しをする為にスーパーに寄った。Fuとrmも買い出しをして帰るとのことだったが、最寄りのスーパーが違う為別行動となった。
キッチンに立ち、野菜を手に取る。余り凝った料理を作ることは出来ないが、それでもsyuと暮らすようになって人並に作ることが出来るようになった。
「キノコ、たくさん入れてほしいな」
「了解」
今日のメインは鮭とキノコのホイル焼き。味噌汁は玉ねぎとワカメで、サラダも作る。副菜として、ほうれん草のお浸しも用意することにした。
トマトが嫌いなsyuの為に、ミニトマトはkzのものにしか入れない。サラダはシンプルにレタス、コーン、ツナ。ドレッシングは最近嵌っている玉ねぎのやつ。
ほうれん草は一度茹でて冷ましてから水気を絞る。醤油は砂糖で甘目に調整してほうれん草に掛けた後、ゴマを散らして完成だ。
味噌汁に入れるワカメを水で戻し、玉ねぎを素早く切って小鍋に投入。ホイル焼きに入れるキノコはエノキとしめじの二種類。鮭と共にアルミホイルで閉じて加熱する。
Kzが料理をしている間にsyuはダイニングテーブルを整える。そして完成した料理達を次々にテーブルに並べた。最後にお揃いのコップに麦茶をよそい、食事の準備が完了した。席に着き、挨拶をして食べ始める。
「んっ、美味しい」
「出汁の加減も良さそうだな」
特別手の込んだ料理ではない。しかし、二人で一緒に食べる食事はとても暖かかった。互いに話す内容も、今日あったことや次の休みにどうするかといった穏やかなもの。
「ほれ、syuこっち」
「ん?」
食事の片付けもし、入浴も済ませた。楽な部屋着に身を包み、二人分の茶を淹れてキッチンから戻ってきたsyuをkzがそう言って手招く。ソファの前のテーブルにカップを置き、言われるがままにkzの横に腰を下ろした。すると、彼はsyuの身体を引っ張り自分の膝の上に頭を乗せさせる恰好で寝転ばせる。
「どしたの?」
「ん~…偶にはな」
kzは上機嫌でsyuの髪を指で梳く。彼がこういったことをするには必ず理由があることをsyuは知っている。上機嫌ならば、好きにさせればいい。それにこうして穏やかな手つきで撫でられるのは、非常に心地も良かった。
「……このまま寝ちゃいそう」
「そんなに?」
「うん」
昼間ならまだしも、夜も大分更けている今ソファで寝こけたら朝まで起きられる気がしない。kzがこうしてくれるのは嬉しいが、余りに心地よすぎるのも考えものだ。
kzを見れば、何らや思うところがあるような表情をしている。決して彼に不快な思いをさせる心算はない為、syuはひとつの提案をすることにした。
「今日はさ、kzが俺のことぎゅってして寝てよ」
そう言えば分かりやすくkzの表情が変わる。少々名残惜しいが身体を起こすと、kzがsyuの肩にぴたりとくっついてくる。彼の行動に悶えそうになるのを堪えつつ、syuはカップを手渡す。
「ありがと」
そう言うkzの表情はとても嬉しそうだった。
カップを片付け、就寝準備を整えて寝室へと行く。布団に潜り込むと、何時もはsyuの胸元に収まるkzが両手を広げてsyuを呼ぶ。素直に腕の中へと収まれば、彼はぎゅっと抱きしめてsyuの頭を穏やかに撫でた。
(あ、これやばい)
愛しい恋人を包んでいることが多かった為気付かなかったが、逆の立場になるとその心地よさが染みてくる。トクトクと鳴るkzの鼓動。鼻腔を擽る、彼の香り。その全てがsyuを包み込む。そしてあやすように撫でられる頭。
「おやすみ、syu」
眠気でとろんとしてきていた瞼にkzがキスを落とす。ぼんやりする思考の中でkzの服をぎゅっと握り、syuはまどろみの中へと落ちていった。
Kzがsyuの為にしている行為が、年上だからこそ恋人に甘えさせたいという思いからきているものだとsyuが知ったのは、暫く後のことだった。
あの日以降、以前よりも積極的に色んなことをやるようになった。元々家事は互いに時間のある方がその日多めに行うと決めていたこともあり、その配分は変わらない。そうではなく、さりげなくsyuを甘やかすのだ。
心地いい為、不満だったりすることは全くないのだが、突然どうしたのかと思っていたのだが、そんな疑問はある日突然解決することになる。
「kz、頑張ってるらしいじゃん?」
とある日のこと、fuと偶然会い暫しの時間カフェで茶を飲んだ。その時に自分達の近況を話していると彼がそう言ったのだ。どういった意味なのか尋ねれば、彼は先日kzと話していたことを教えてくれた。それを聞いて納得する。だから突然、甘やかすような行動を取るようになったのだと。
「可愛いことするなぁ…」
そう呟けば、fuは笑いながら彼の気持ちも分かってやってくれと言った。そんなこと言われずとも分かっている。
Kzは年上らしく振舞いたいと願い、syuを甘やかすという方法に出たのだ。そんなことをしなくともいいのに、という思いが湧き出つつも包み込んでくれた腕は非常に心地よかった。
Syuは年齢差を余り気にかけてはいないのだが、もし逆の立場だとしたらkzと同じことをするかもしれないと、そう思った。
「教えてくれてありがと」
「おう」
Fuに礼を言い、家への道を歩く。その足は、自然と速くなっていた。
「ただいま」
「おかえり」
帰宅し、リビングに行けば彼はソファで寛ぎながらスマホを弄っていた。しかしsyuの姿を見るとすぐにスマホを横へと置く。そして両手を広げ、syuを誘った。
「はー…生き返る」
「なんじゃそりゃ」
kzの胸元に顔を埋め、堪能をしているsyuの言葉にkzは思わず笑いを零す。
「いや、幸せだなーって」
「そっか。それなら良かった」
「ねえ、kz」
「ん?」
「……んー、やっぱりいいや」
「ふはっ、一体何なの」
年上らしく振舞いたいkzの思いを尊重して、syuはそれ以上言葉を重ねるのを止める。代わりにしたのは、深いキス。
「は…っ、何なんだよもー」
「んー、今度は俺がkzのこと甘やかそうと思って」
そのままソファに押し倒し、再び深くキスをしながら服の隙間へと手を差し入れる。段々と蕩けた表情になるkzに欲情していると、不意に彼がsyuの頬を撫でた。
「存分に召し上がれ」
何処か余裕を感じさせるように微笑みながら言う彼に、何だかんだ言いつつも年の功には抗えないな、とそんなことを思うsyuなのだった。
「……で、散々と抱き潰した後の感想としては?」
「俺が抱き潰したのに、何か抱かれた後のような気分」
「中々最高じゃん、それ」
コメント
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うわあ、もうこの空気感がたまらないですね……。kzが「年上失格」って悩むところ、すごく可愛くてでも切なくて。でもsyuは全然気にしてなさそうなのに、そういうとこもお互い思い合ってて尊いです。最後の「抱き潰したのに抱かれた後のような気分」、もう名言すぎて笑いました。お互いを甘やかし合う関係、じんわり沁みます🫶