蓮&風雅の過去
今から10年前。
11歳の時、俺は両親に売られて、あの研究室に連れてこられた。
どうやら俺の両親は借金を肩代わりしてもらう代わりに、被験体として俺を差し出すと約束したらしい。
愛されていない自覚はあったから、何も思わなかった。
その実験が、能力のない人間に能力を与えるというものだった。
俺は毎日のように怪しげな薬を打ち込まれ、この身体強化という力を手に入れた。
その後もベッドに縛り付けられ、軟禁状態で日々監視されていた。
そこには、俺以外にもたくさんの子どもたちがいた。
風雅とは、そこで出会ったんだ。
風雅は俺のことを”蓮にぃ”と呼んで慕ってくれていた。
俺と風雅はどこへ行くときも、いつも一緒だった。
俺にとっても、風雅は弟のような存在だったんだ。
風雅と出会ってからは、充実日々か続いていた。
他の子どもたちとも、良い関係を築けていたはずだった。
………あの時が来るまでは。
どうやら、俺と風雅はいわゆる”特異体質”というものだったらしい。
つまり、力が強すぎたのだ。
研究室側がコントロールできなくなるのではと恐れ、俺たちは殺処分されることとなった。
すると俺たちの力を妬んでいた奴らが、どうせ殺されるんだからと、嫌がらせをしてくるようになった。
その嫌がらせはエスカレートしていき、いじめへと発展した。
毎日毎日殴られて、時には性欲のはけ口として扱われたこともあった。
痛い。
気持ち悪い。
辛い。
何で。
何でこんな目に遭わなければならないのか。
そんな疑問ばかりが、何度も何度も頭をよぎった。
今まで仲良くしていたはずの子どもたちも、見て見ぬふりをして助けてはくれなかった。
殺処分に反対していた研究員も、慰めの言葉をかけるだけで、何もしてくれなかった。
俺はもうすでに、そこで人間を信じれなくなっていた。
そして、ついに殺処分決行の日がやってきた。
俺は最後の最後までせめて風雅だけは殺さないでくれと、研究員たちに訴え続けた。
けれど、誰も聞いてはくれなかった。
それどころか、冷たく嘲笑うかのような目で俺をみてくるだけだった。
研究員の1人が風雅を捕まえて俺に見せつけるかのように押さえつけ、もう1人がナイフを手に迫っているのを見た時、俺はもう無理だと諦めていた。
けれどその時。
『いやだよぉぉぉぉっ!助けて、蓮にぃっ!!』
その声を聞いた瞬間、俺の中で何かが切れる音がした。
その後の記憶はあまりない。
ただ、目の前が赤黒く染まって。
………………気づいたら、全員殺していた。
それから俺たちは旅に出た。
風雅には自由になったのだから、どこへでも好きな所に行けばいいと言ったのだが、ついていくと言って聞かないので連れて行くことにした。
旅の道中で悪人を見つけては殺すことを繰り返していた。
正直風雅の教育に悪いとは思っていたが、それしかやることがなかったのだ。
そんな時、ボスに出会った。
どうやら俺たちのことが噂になっていたらしい。
一緒に来ないかと言われて、このまま彷徨っていてもどうにもならないと思ったので、仕方なくついていくことにした。
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