テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
comi
978
226
#異世界転生
しめさば
7,755
花月夜れん
2,111
<ヒャンド共和国>
三百数十年前、フェデラリー共和国の異端として存在していた単一民族ヒャンド人は自治区にて保護を受けていた。カルネ共和国が独立した影響を受け独立運動が盛んになり、時の大統領グスタフはデルタリアル王国、現在のデルタ王国の支援を受け未開の惑星ディーンに移住させたのが始まりだ。この惑星はディスティア帝国侵攻の妨げになる重要な拠点としての意味合いがあり、駐屯基地を作り今尚、経済や軍事支援を行っている。
<<ヒャンド共和国・デルタ軍駐屯基地>>
「さぁ、行こうかコロン」
「一応、礼を言う」
駐屯基地に到着したコロンは密入国者になるのでデルタ軍属として登録を済ませ入国させた。作戦が終了すれば正式にデルタ軍に入隊させるつもりだ。基地を出た3人は街中の様子を伺いながら、諜報部員が待機しているホテルへと向かう。
「臭!臭!くっさー!なんちゅう臭さなのだ」
ダウンタウンに入った途端、下水と何か良く分からない悪臭が漂い、鼻が効くコロンはしかめっ面で歩いていた。
「相変わらず汚い国だな、酷いもんだろアーレイ」
事前にキースから相当汚い所だと聞いてはいたが想像を絶する酷さだ。道端にホームレスが溢れゴミは散乱し、汚物の匂いが充満してとても先進国とは呼べない。
「この国が嫌われる理由が何となくわかるよ」
「怠け者と碌でもない奴しか住んでないからな、星団中の嫌われ者なんだよ」
ヒャンド人は上昇志向が強い者と怠け者とで二分され、それがそのまま格差社会を形成して貧富の差が激しい。地球で拉致された時の事を思い出したアーレイは、この国とは出来る限り関わらないようにしようと心の奥底で決めるのだった。
<<5つ星ホテル・デグネール>>
「この辺りでもまだ臭いのだ」
市街地に入り悪臭は気にならない程度になっていたが、鼻の良いコロンは相変わらず臭いを連発していた。そして協力者が待つホテルへと入る。
「お待ちしておりました諜報部のレスターと申します」
「第9艦隊のアーレイです」
レスターはヒャンドで活躍している凄腕ハーフエルフの女性諜報部員だ。しかしエルフ族はその美貌から襲われる確率が異様に高く素顔を晒せず、イスラム教の女性が使用するヒジャーブのようなスカーフで顔を隠していた。
<<スイートルーム>>
「これで会話と隠しカメラを無効化します」
スイートルームに入るなりレスターは先に持ち込んでいた盗聴盗撮阻害装置を起動させる。聞けばこの国では盗聴盗撮は当たり前で、このホテルは大丈夫だけど念を入れて使っていると語り、次に手のひらサイズの3Dプロジェクターを起動させると、テーブルの上に奴隷商と購入者の顔写真が移し出され、その数は大臣を含め20名程だ。
「もう全て調査済なのね~」
「アーレイ中尉が追加してくれたお陰で意外な事が判明しました」
アーレイが追加で送った諜報部員が活動し始めた直後、奴隷商の動きが活発化したと話し、情報漏れを疑い調べるものの原因が特定できず、レスターは回線ネットワーク自体を調べてみた。
「彼らは通信インフラの中に監視システムを割り込ませている事が判明しました」
賄賂が横行する国あるあるだ。金を積んで好き勝手にやっていると聞く。
「うわぁ~この国は腐りきっているわ~(呆」
「それを逆手に取りましょう♪」
奴隷商がいち早く逃げだす理由が判明しただけでも十分な成果だ。なのでレスターは今回も失敗する確率が高いと既に嘘の情報を流し、追加の諜報部員に撤退命令を出して準備は万端だと自信ありげに話す。そしてアーレイは早く対象者の偵察に向かいたくてうずうずしていた。
「とりあえず貴族宅に出向こうじゃないか」
「一つ気がかりな貴族がいます。購入はしているのですが、その、売却に関して・・」
とある貴族の1人は購入はするものの一切《《売却》》した痕跡が無いのだ。想像するだけで身の毛がよだつ野蛮な行為が行われると想像するレスターは、決して食人とは口に出そうとはしない。
「消息不明なんだな」
「はい、それも若い犬族ばかりです」
居ても立っても居られないアーレイだったが一旦冷静になり、今日中に調べを終える為に、各自に調べる屋敷の割り振りを行う。
「コロンはレスターと行動してくれ、キースと俺は単独で動く」
「わかったのだ、宜しくなのだレスター」
コロンに戦闘用モジュールの使い方を教えたあと、バラバラにホテルを出た3組はエアータクシーに乗り割り振られた屋敷へと向かう。
<<犬族消息不明の屋敷>>
アーレイはモジュールの性能をフルに生かし、見つかることなく侵入を果たす。そしてスキャンしながら囚われているであろう犬族を探し回っていた。
「軍事用モジュールは凄いな、さてここだな」
探索能力が高い軍用を使えば木造の屋敷など、全てが透けるように見えるので楽勝だ。グラフィックだけど忙しなく何かの用事を行うために動き回る侍女や、扉の近くに立ち命令を待つ執事などが手に取るように分る。
>
「2階に犬族発見」
「サンキュ〜」
>
因みにいつものAiフェは移植済みだ。しかし作戦行動中なので至って真面目だったりする。反応を頼りに2階へと上がり専用の開錠工具を使い部屋の中に入る。
<<犬族が監禁されている部屋>>
部屋に入るとベッドに座り毛づくろいをしている犬族の女の子が目に入る。茶色のちっちゃ可愛い折れ耳が特徴的で12歳くらいだろうか、毛並みが異常に良くとても清潔に保たれていた。
「人間さん、あなたはだーれ?」
誰もいないのに扉が開き直ぐさま閉まったのでビクッと身体が反応するものの、クンクンと得意な鼻を効かせ人間が入って来たことを察知したようだ。
「こんにちはお嬢さん、奴隷を探しているのだけど知らないかな?」
「私の事?奴隷とはちょっとちがうかも」
アーレイは驚かせないように扉の前でステルス解除すると、胸に手を当て軽く会釈をして敵意が無い事を示す。女の子に質問をすると予想とは違う答えに一瞬やらかしたと思ったが、奴隷の首輪を見て気を引き締め直した。
「首輪は奴隷用だよね」
「そうだけど美味しい食べ物くれるし全身マッサージとかしてくれるの。たまにモフモフされるけど」
美味しい物を食べさせると聞いたアーレイは出荷前の牛にビールを飲ませて肉質を上げる事を思い出してしまう。とはいえどんな理由があろうとも目の前に座る少女は家畜ではない。だが彼女がその事実を知れば大騒ぎになると予想し、どうやって説得するか思案を巡らす。
「じゃあ聞くけどここにいた他の犬族の匂いがわかる?」
「若い男の子と小さな女の子かな?どうしてそんなこと聞くの?」
「僕がここに来た理由は3人目の君が《《食べ物》》にならない為なんだよ」
「何ソレ?」
アーレイの言葉を聞き驚愕の表情に変わり、自身が食肉に変えられる意味がわかったのだろう。
「もう一度聞くよ帰るたい?」
「はい、私は”肉”にはなりたく無いです」
「夜に迎えに来るから待ってて、僕はデルタ軍のアーレイだよ」
「デルタ軍が助けてくれるのね、私はルーと言います」
ルーはデルタ軍が動き救出されるとわかり少し安心したようだ。念のため緊急連絡用の小型通信機を渡して部屋を出たアーレイは、残りの屋敷の偵察へと向かう。
<<3時間後・デグネールホテル>>
矢継ぎ早に4人の奴隷とコンタクトを取ったアーレイは救出する事を告げホテルに戻る。
「アーレイ中尉、奴隷商は陽動作戦に引っ掛かりまして、早速大臣宅を訪れていました」
レスターは監視衛星を使うと情報が漏洩するといい、第9艦隊と共に訪れているフォウルスターを使い足取りを追ったと語る。
「監視衛星が使えないってそれはそれで問題だけどな、こりゃ大掃除が必要だわ」
賄賂が横行しているこの国は一度締め上げないと星団統一など無理な話で、それに奴隷など絶対あっては成らない。アーレイはジェフに「絶対掃除をした方が良いぞ」と強く進言するつもりだ。それだけ今回の開放に力を入れていた。
「囚われている奴隷たちは16名ですので4ユニットで4回ですと3時間ほどでしょうか」
「その方が良いな、速攻で終わらせよう」
「うむ、賛成だ」
強面さんも少数で動いた方が良いと判断してくれた。多少忙しいが大々的に行ってバレるよりはいいだろう。次にアーレイは作戦の説明を始める。
「先ずは電波妨害を行い身柄保護を最優先で行う」
アーレイはジェフが勅命を出しやすい様に性的暴行を行う寸前の証拠写真を出来るだけ集めつつ、関係者全員の身柄を拘束して上空に待機しているステルス輸送艇に転送した後、デルタ駐屯基地に運び込むと説明をした。
「コロン、1人で出来る自信はあるか?」
「あるよ!馬鹿にするなのだ」
「コロンさんは凄く冷静で一人でも大丈夫ですよ」
レスターによるとコロンは囚われていた女の子に「絶対助けるから」と繰り返し約束をしていた。それに戦闘訓練を受けているのか動きもよかったと教えてくれる。
「間違っても殺すなよ」
「わかっているのだ。しかし反撃してきたらどうするのだ」
「お仕置きしてもいいぞ(笑」
「任せろナノだ」
やる気に満ちているのは良い事だが語尾が面白く感じたのかアーレイは半笑いをしていたよ。そして4人はデルタ駐屯基地に向かいステルス輸送艇に乗り込み作戦発動の時を待つ。
ーー
<<1時間後・ルーが囚われている屋敷>>
「アーレイ中尉、準備完了です」
ステルス輸送艇はルーが囚われている屋敷上空へと姿を現し、転送阻害を無力化すると直接アーレイを部屋へと送り込む。
「ルー、迎えに来たよ」
事前に渡した通信機に連絡を入れていたのでルーは慌てる事無く、アーレイの姿を見るとニコニコ笑顔で出迎えてくれた。
「アーレイからメスの匂いがするよ。1人は私と同じで、もう1人はハーフエルフ」
「ほんと鼻が良く効くね~それじゃ行こうか」
「うん!」
警戒心が無くなったのかルーはアーレイに近づくとクンクンと匂いを嗅いでいたよ。2人同時に輸送艇に転送されるがアーレイは関係者を捕らえるべくトンボ返りだ。
<<ダイニングルーム>>
スキャンすると夕食の時間と重なり食堂に反応が集中していた。アーレイは廊下に転送を行いステルス状態で食事を運ぶ侍女と共に室内に入る。
「味が薄いのだよ、明日は肉だ肉にしろ」
「申し訳ありません、最高級の魚をご用意しまいたがお口に合いませんでしたか」
ここの当主は平たい顔をしたオッサンで、ぐちゃぐちゃと音を立て肘をつき汚い食べ方をしている。魚料理は味が薄いと言い放ちどう見ても食通ではないだろう。
「ねぇあなた、”アレ”はいつ頃食べるのかしら」
「赤身が良ければもう食べてもいいぞ、もう少し太らせて脂を乗せるか?」
「そうですわね。この前は凄く”脂”が乗っていたので、次回は程よいのがいいですわ」
アレと表現しているが間違いなくルーのことだろう。会話を聞いていた執事と侍女は顔が引き攣り、もう我慢の限界だとわかる。しかし警察に密告しても賄賂を与え揉み消されるのを知っているのか諦めた表情を浮かべていた。
「ほれ、全員寝てろ」
「ウギャ!」
アーレイは反吐が出そうなくらい不機嫌になっていた。なのでステルス解除するとともに威力最大のスタンを放ち全員気絶させつ。立つものは崩れるように床に倒れ、当主夫妻は皿に向かってベチャと突っ伏してしまい見るも無残な姿をさらけ出していた。
<<輸送挺・内部>>
「これで全員だ、次の屋敷に転送したら基地に戻って引き渡して戻ってくれ」
「了解」
ルーに関わる全ての関係者を輸送挺に転送を済ませたアーレイは、次に猫族の少女が囚われている屋敷へと向かい寝室に送り込まれる。
<<猫族が囚われている屋敷>>
「昼間に会った女の子と違うな」
数時間前に訪れた時はナーと言う猫族の女の子と話をして、救出の約束をしたはずだが、目の前には同じ毛並みを持つ2回りほど小さな女の子がベッドに縛り付けられていた。
「見間違いだったか、いやこの感じは妹だよな・・・」
縛り付けられているということは、少し経てばこの女の子を蹂躙するために誰かしら来ると予想し待機する事にした。
<<20分後・・>>
「うひひ、どれどれ妹は少しは静かにしてくれるかな」
部屋の中で待機していると小太りの若い男が入って来て、いきなり服を脱ぎ全裸になるとそのままベッドにダイブしてしまう。
「ニャー!」
「今夜から俺が飼育してやるよ、お前の姉さんは暴れて大変なんだよ」
嫌がる女の子に跨り興奮している男は既にナーを蹂躙していたらしいが、暴れて言うことを聞かないのかこの子を追加購入したらしい。そしてアーレイは静かに動き出しスピードブーツのスイッチを入れ準備を済ませる。
「暴れたら姉さんを殺すからな抵抗するなよー」
「いやいやー、ニャーン!」
「ギャン!」
泣き叫ぶ女の子を見て興奮している小太りの男は真横でステルス解除したアーレイに気がついていない。そして股を開こうと女の子の膝に触れた瞬間、そいつのケツを思い切り蹴り上げぶっ飛ばすと、壁に激突して頭を強打したのか気絶してしまう。
「気持ち悪いやつだな漢になって出直せ」
「ぶぎゃー!」
怒り心頭のアーレイは大の字に寝っ転がっている男の股間を思い切り踏みつけ、漢にするつもりなのか何度も踏みつぶし全く容赦しない。激痛が走り悲鳴を上げながらそいつは泡を吹き、白目をむき出しのまま気絶するのだった。
「もう安心だ!今からデルタの基地に行くからもう少し頑張れ」
「ニャ!」
縄をほどき上着を掛け着るように促し頭を撫でると、女の子は安心したのかワーンと泣きじゃくりながら飛び込んできた。
「嗚呼、モフモフが気持ちがいいな〜」
「不審者だ!グワァ!」
抱きついてきた女の子を少しモフモフしていると、扉の向こうで騒ぎを聞きつけた護衛らしき野郎が飛び込んでくる。すかさずスタンを掛け身動きを取れなくするとそのままバインドのワイヤーで身動きを取れなくした。
「俺はデルタ軍の者だ、全て調べは済んであるから大人しく全員ここに連れてくるんだ」
「わ、わかりました。捜査に協力致します」
ホルスターからレーザー銃を取り出し頭に狙いを定めつつ軍服の紋章を見せると、護衛の男は贖う気持ちが失せたのか協力的な態度に変わった。そして執事を含めた関係者を寝室に呼び出し事の顛末を話すと、みな一応に諦めた表情を浮かべていたよ。
「今からデルタ駐屯基地に移送しそして事情聴取を行う」
「わかりました、地下にあと3人と奥の部屋に1人います。連れてきてよろしいでしょうか?」
「頼む、丁重にな」
デルタ軍が本気を入れて動き出したと感じた執事や侍女は諦めつつ、どこかホッとする表情を浮かべていたよ。
コメント
1件
みぅだよ🤍 第18話、読み終えたよ。 ヒャンド共和国、すごく荒んでるね…。でもアーレイたちの手際が良くて、ちょっと胸が熱くなった。特にルーっていう犬族の女の子が「肉になりたくない」って言ったところが刺さった。12歳だよ?あの年で自分の運命を悟るなんて、つらすぎる。 あと、猫族の妹を助けるシーン。小太りの男のケツを蹴り飛ばして、さらに股間踏みつけるところ、笑っちゃったけど「気持ち悪いやつだな」ってアーレイが言ったのが、めっちゃカッコよかった。モフモフ部分も癒しだったな。 次回で全員無事に救出されるといいな。続きが楽しみ🥀