夜道。
何か祝いにと出掛けたものの、
行く先は決まっていない。
これじゃあ、ふらっと夜道を歩いているだけだ。
そんな時。
ぼっと灯る街灯が私の目へと映った。
やけに眩しいなとは思っていたが、こことは。
思いもしない、予想もしなかった小さな商店街へと、
私は何故か足が動いていた。
人はあまりいない。
ここら返の商店街にしては珍しいな。
レンガの壁に貼り付いているポスターを見つめる。
ハンドメイド
午後2時~午後10時30分まで開催
ああ、そういう事か。
もう時間も遅い。そりゃあ 人が少ない訳だ。
……ぁ、
これ好きそう。
彼女が好きそうな物を手に取る。
いや、きっと、好きだろうな。
変な柄のうさぎのステッカー 。
“わかるかなぁ、これが芸術ってヤツなんだよ”
なんて、ドヤ顔で言ってきそう。
見た目の清楚感からは考えなれない程、 変な物好き。
この事を、
彼女の婚約者と言う奴は知っているんだろうか。
緊張すれば、小指を曲げる癖がある事 。
遊園地のゴーカートが上手い事 。
夕暮れが苦手な事 。
そこまで、
ちゃんと深くまでをも知っているんだろうか。
私の方が彼女を知ってる 。
私の方が彼女を幸せに出来る 。
そう心からの自信がある 。
だとか、打ち明ける隙もないけれど 。
でも、結婚祝いに、ステッカーは何か違う気がする。
そう思い、変な柄をしたうさぎのステッカーを、
私は手放す事にした。
コメント
3件
今回もめちゃくちゃ良かったです!!!! 祝い物を買いにどこに行くかなんて、 検討つかないですよね…(?) まぁ、暗い時間帯だと居ないですよね… …嫉妬しても、そんな事を考えても、 言えないのが本音でしょうね… 次回も楽しみに待ってます!!!!