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いつも通り勤務先の居酒屋「天神鳥(てんじんちょう)の羽」に出勤した名論永(めろな)。
「お疲れ様でぇ〜す」
と引き戸を開くと
「お!めろさん来た来た」
と神羽(じんう)が「待ってました」と言わんばかりに名論永に近寄ってくる。
「ん?」
「ちょっとホンキ(ホン・キオーテの略称)に買い物行こうって思ったんすけど
金城崩(かんしろほう)さん1人だと、なにかあったときにぃ〜…ね?
ま、ここら辺は治安良いから、そんなことないだろうと思いますけど」
「なるほど?それで待ってましたと」
「そっす」
「そっか。うん。あとなんかあってもオレじゃなんにもできないよ」
「ま、そこは男としてね?犠牲になってもろて」
「なるほど」
「納得するんすね」
と笑う神羽。
「ていうか、LIMEくれたら来る途中で買いに行ったのに」
と言う名論永に、神羽は固まり
「…そうじゃん」
と呟いた。
「天才っすか」
「いや」
「あ、オレがバカなだけか!」
と笑う神羽。
「いやぁ〜」
肯定にも否定にも取れる言い方をする名論永。
「んじゃ。次からはLIMEするんで。よろしくっす。とりま買い物行ってきます。ついでに一服もしてきます」
「うん。…タバコ吸えるとこ近くにあったっけ?」
「ホンキ裏の公園」
「あぁ〜」
「じゃ、いってきます」
と行って出て行った神羽。
「あ、お疲れ様です」
と夏芽に言う名論永。
「お疲れ様です」
ペコッっと頭を下げて言う夏芽。着替えに控室というか更衣室へ行く名論永。
荷物を置いてエプロンを持って、エプロンをつけながらホールに戻る。
「あ、そうだ」
夏芽が思い出したように話し出す。
「「人生色のパレット」ピンク色に入るところまで読みましたよ」
「お。1/3(3分の1)くらいー…かな?」
「ですね」
「人生色のパレット」は特に章が分かれているわけではないが
序章は人生なにもうまくいかない主人公の悲壮の“青い”感情から物語が始まる。
バンドで成功を夢見る主人公は、夢を叶えるために、夢を追うために働いて
しかし仕事も夢もうまくいかず、自分らしさも押し殺し
今までパレットは「夢」「愛」「恋」「自分らしさ」「未来への期待」など
明るい色だったのに、夢を叶えるために、夢を追うために仕事を忙しくするという矛盾や
その仕事も怒られてばかり、夢もうまく追えない、そんな負の感情で
綺麗だったパレットに暗い色の絵の具が垂れていき、混ざり
パレットはぐちゃぐちゃに汚れ、汚い色になっていた。
そんなときパレットを一旦綺麗に洗い、その真っ白なパレットに向かい合い
「自分が本当にしたいことはなんなのか」ということを明確にし
「夢」「未来」への“黄色”の章が始まる。そしてピンク色の章とは「恋」の章である。
このように「人生色のパレット」を読んだ人の中では、章を勝手に色ごとに分けているのだ。
「どお?そこまで読んでみて」
「おもしろいです。これからどうなるのか楽しみです」
「そっかそっか」
「すいません。読むの遅くて」
「え?いやいや。読むのが早いのが正義じゃないから」
「そうですけど、早くお話がしたくて」
という夏芽の言葉に嬉しさがあったが、なにか嬉しさとは違う感情も生まれた名論永。
「うん。オレも内容について金城崩さんと話したいけどね?
でもせっかく作者先生が丹精込めた作品を焦って読んだりして
一場面一場面、雑に流してしまうなんて、作品にも作者先生にも失礼だしね」
「本当に小説がお好きなんですね」
「あ。あぁ。うん。そうね」
「そんなめろさんがおもしろいって太鼓判の。読み終わるのが楽しみです」
「ま、オレだけじゃないけどね。世間一般的におもしろい作品とされてるからね」
「たしかに。でも、めろさんと「人生色のパレット」のお話するの楽しみです」
という夏芽の言葉に、少し心が躍る名論永。
「うん。オレも楽しみ」
という名論永の言葉に、心躍る夏芽。ホン・キオーテで買い物を終え、黄色いレジ袋を横に置いてベンチに座り
「…ふぅ〜…」
一服する神羽。口から空に上がり消える煙を見ながら
金城崩さんとめろさんは心配ないんだよなぁ〜…。心配なのは
と思っていると
「なぁ〜にしてんすか」
目の前に雪姫(ゆき)が現れた。
「あ。心配なのが来た」
思わず呟く。
「心配?なんすか」
と言いながらワイヤレスイヤホンを外す雪姫。
「ん?コミュ障具合?」
「急に失礼すぎるんですけど」
「失礼すぎるってか事実すぎるでしょ」
ベンチの神羽の横に座る雪姫。そしてホン・キオーテの黄色いレジ袋の中を人差し指で覗く。
「なに買ったんすか」
「ドレッシングとかいろいろ。足りなくなりそうなやつ」
「言ってくれたら買ってったのに」
と言う雪姫に
「ふっ」
思わず吹き出す神羽。
「なに」
「いや?めろさんにもおんなじこと言われたわぁ〜と思って」
「そりゃ言うでしょ。毎日行くんだから」
「そっかぁ〜」
と言った後タバコを吸い、煙を口から吐き出した後
「やっぱオレがバカなだけかぁ〜」
と言う神羽。
「それはそうだと思います」
「キッ…ツいねぇ〜?相変わらず」
「そおですか?」
と言う雪姫に、神羽はまたタバコを吸ってコクコク頷き、煙を吐いた後
「喋らなんなぁ〜と思ってて、喋るようになったら割と毒吐くし。しかもなぜかオレにだけ」
と言う。
「それは…。めろさんはまともな人だし」
「まるでオレがまともじゃないみたいな言い方」
と笑いながら言う神羽。
「まあ。金髪タトゥーでバカはまともとは言えないでしょ」
「バカってなぁ〜」
「バカじゃないんすか?」
「ま、バカではあるけど」
「ですよね?ま、もちろん「バカ=まともではない」にはなりませんけど
本件ばかりはそこは=になりますね」
「本件。なにが違うんだろうな」
「うぅ〜ん…。人?」
「人?」
「人による。一見まともそうな人でも話したらヤバそうな人とかもいるじゃないですか」
「いるねぇ〜。わかる。…え。オレはヤバいやつってこと?」
と「え」という表情で自分を指指す神羽。
「ヤバいやつってほどではないですけど、まともな思考ならタトゥーは入れませんって」
「まあぁ〜そりゃそうかぁ〜」
「まあぁ、でも…」
と呟く雪姫に
「ん?」
とタバコを咥えながら聞く神羽。しばらく沈黙が辺りを包む。
雪姫はやんわりと、遠回しにでも自分の気持ちを伝えようか迷っていた。
神羽にだけ毒を吐くのは、神羽への気持ちが溢れ出ないようにするための防御壁なんだと。
神羽は急かしたりせず、タバコを吸って待っていたが
なにかどこかから視線が向いているような気がして、煙の中、チラッっと辺りを見渡す。
すると女性が神羽のほうを見ていて、目が合って、神羽はタバコを咥えて目を細める。
すると目が合ったほうの女性が小さく手を振った。
「…誰だ」
と呟く神羽に
「え?」
と神羽が向いているほうを見る雪姫。手を振っている女性が近づいてきた。
「天鳥(あまどり)じゃん。覚えてる?」
と自分を指指す女性。
「…あ…あぁ〜…。あぁ!名取(なとり)か!」
「そうだよ。名取七幸(なこ)。一瞬忘れてたでしょ」
「忘れるもなにも。てかそっちこそよくオレがすぐわかったな」
「いや。成人式から全然変わってないし」
「そっかそっか。…そうか?」
「そう。ていうか成人式でも高校から変わんないって話したし」
「そーいや、ほぼ全員から言われたなぁ〜。変わんないって。え待って。ガキっぽいってこと?」
と言う神羽に
「言ってない言ってない」
と笑う七幸。同級生で盛り上がる中、めちゃくちゃ居づらい雪姫だったが
立ち上がってお店に行くと、かえって目立って、気を遣わせることになるかもしれない。
ということで置物になることを徹底していた。
「なにしてんの?」
「ん?これから姫舞(ひま)と友豊(ゆか)と映画行くんだぁ〜」
「…」
「誰だっけ」というのを出さずに笑顔で考える神羽に
「瀬戸門(せと)姫舞と桃野(ももの)友豊ね」
とフルネームを言う七幸。
「あぁ〜。瀬戸門と桃野ね。仲良かったもんな。まだ仲良いんだ?」
「ズッ友ぉ〜」
「てかこの時間から映画?」
「社会人だとね。天鳥は?居酒屋やってんでしょ?これから開けるの?」
「そぉ〜よぉ〜。従業員と一服中」
と言う神羽に、雪姫にペコッっと頭を下げる七幸。雪姫もペコッっと頭を下げる。
「今度姫舞と友豊と行っていい?」
「もちろん。あ。名取の好きだった金兜(かなと)くん、たまにお店来てくれるよ」
「マジで!?ヤバ。てか懐かしすぎる。汐旗(しおはた)先輩変わんない?」
「変わらずイケメンです」
「ヤバァ〜。まだバンドしてるって話は回ってくるんだけどね。えぇ〜ヤバ」
「ちなみに金メダル、銀メダル、銅メダル、全員うち(お店)来るよ」
「マジ!?」
「マジマジ。話せばいいじゃん。高校時代あんま話してないんだし」
「でもなに話せばいいのさ」
「え?当時ファンでしたーって話せばいいんじゃん?てか言わなくても言うし」
「いや言うなよ」
と言った後、スマホを見る七幸。
「んじゃ、そろそろ行くわ」
「ん」
「行くときLIMEする」
「ん。LIME知ってたっけ?」
「変わってないでしょ?」
「変わってぇ〜…」
と言ってからタバコを咥え、スマホを出し、LIMEを開く。
「わいんやん?ほえ(訳:ないんじゃん?これ)」
と七幸にスマホを見せる。スマホの画面を見る七幸。
「うん。知ってる知ってる。ここにLIMEすればいい?」
「ん。来る時間と人数言ってくれたら空いてる空いてない返すわ」
「ん。頼んだぁ〜」
「じゃ、映画楽しんで」
「ん。そっちもお店頑張って」
「あざす。じゃ、またなぁ〜」
「ん。またぁ〜」
と手を振りながら歩いていく七幸に手を振る神羽。
「同級生」
「でしょうね。話聞いてればわかりますよ」
「いや、高校んとき、オレ陽キャ男子に避けられてたからさぁ〜。
陽キャ男子だけじゃないか。男子生徒ほぼ全員かも。
ほら、ぎおちんたちと仲良かったから、先輩と仲良いの怖がられてたんよね?
特にぎおちんは目つき悪いからさ?朝弱いから、朝はなおさら。
ただその分後輩にも人気あったメンバーと仲良いから、女子からは割と重宝されてて」
「へぇーー…。左様ですか」
少しツンとした言い方をする雪姫。
「んだよ。興味なしかー?」
と笑いながら言う神羽に
なくはないけど、元カノの話とかは聞きたくないしな…
と思う雪姫。神羽はタバコを吸って携帯灰皿にタバコを入れ
「じゃ、そろそろ店戻るか」
と立ち上がる。
「私は戻るってか行くんですけどね」
「細かいなぁ〜。梨入須(ないず)にとってはもう家みたいなもんでしょ。
“戻る”じゃなくて“帰る”でもいいくらいだろ」
と言う神羽に少し嬉しかった雪姫だが
「いや、さすがにお店を家ってのはね」
と照れ隠しを言った。なんて話ながらお店に戻った2人。
「ただいま戻りましたぁ〜」
「おかえりなさい」
「おかえりさない。あ、梨入須さん。お疲れ様」
「あ、めろさん。お疲れ様です」
「梨入須さん!お疲れ様です!」
「おぉ…。お疲れ様…です…」
めちゃくちゃ小声で返す雪姫。そそくさと更衣室へ行く。
「一緒だったんだ?」
と言う名論永に
「あぁ。公園でタバコ吸ってたら寄ってきたんすよ」
と返す神羽。
「寄って、きた?」
なんて話ながら開店準備を整えた。暖簾を出し、提灯と看板の明かりをつけて
「さあ!いざ待機!」
お店を開けてしばらくは待機。しばらくしたら奥樽家の父や常連さんなどが訪れ
新規のお客さんなんかもちらほら入ってきて賑わい始めた。また引き戸が開く。
「いらっしゃいませ!」
と神羽が言うと
「お疲れ様」
と微笑む金兜。
「おぉ!金兜くん!お疲れ様っす!」
「2人なんだけど、いける?」
「全然いけるっすよ。カウンターでいいっすか?」
「いい?」
と後ろの女性に聞く金兜。
「あ、はい。どこでも」
「んじゃ。カウンターでいい?」
「も、ちろんです」
カウンターに座る金兜、その隣に座る女性。
誰だ。彼女か?
と思いながらもおしぼりを出す神羽。キッチンに「2人」と手で伝え
金兜と金兜の隣の女性がとりあえずの飲み物を頼んで
それを神羽と名論永で作り、お通しと一緒に飲み物を渡す。
「じゃ、お疲れ様」
「お疲れ様です」
と乾杯する金兜と金兜の隣の女性。神羽が
誰っすか、金兜くん。その方は誰でどういう関係なんすか
と思っていると、まるでそれを察したかのように
「あ、こちら、バイト先で仲良くしてもらってる木扉島(ことじま)青さん」
と紹介した。
「あ、初めまして。木扉島青です」
と青がペコッっと頭を下げる。
「あ。そうなんすね。あ、自分この店のぉ〜…店長?やってます、天鳥神羽って言います。
よろしくお願いします」
と笑顔で自己紹介する神羽に
「よろしくお願いします」
と言いながらペコッっと頭を下げる青。
「金兜くんは高校の先輩で」
「はい。汐旗さんから聞いてます。お店やってる後輩がいて。って。
それで今日行ってみる?って言われたので来させてもらいました」
「あ、そうなんすね」
「そうそう」
「あ、そうだ。今日ひーる?同級生と会ったんすよ」
「へえぇ〜。でも達磨の1個下って
神羽と神羽と仲良かった子くらいしか覚えてないんだよなぁ〜。申し訳ないけど」
「でも金兜くんのファンでしたよ?」
「あ、女の子?」
「そっす」
「ま、でも、ファンでしたよ?って言われて覚えてはない、かなぁ〜?」
「ま、いっぱいいましたもんねぇ〜」
「ファンがいっぱいいた?汐旗さんってファンクラブあったんですか?」
と神羽に聞く青。
「いや、ファンクラブはない」
と否定する金兜。
「けど、うちの世代と1個下の世代
そして金兜くんたちの1個上の世代からもめちゃくちゃ人気だったんですよね?」
「すごいじゃないですか」
「いや…。まあぁ、あえいがたいことに。でも1個上からのいびりすごかったからね」
「あぁ。男先輩からの?」
「そうそう。銀(銀同馬のアダ名)って目つき悪いじゃん?だから呼び出されて」
「そんなことあったんすか?」
「あったよ。あとで大爆笑したんだけど、呼び出された理由が銀本人じゃなくて
「オレの彼女がお前んとこのイケメン」あ、この「イケメン」って漆慕のことね?
「オレの彼女がお前んとこのイケメンに気ぃ取られてんだけど
どーしてくれんだ」ってので呼び出されたらしくて」
「ぎおちん(銀同馬のアダ名)可哀想に…」
と額に手をあてながら言いつつも笑いを堪える神羽。
「そんなことあったんですね」
「そうなのよ」
「でも楽しそうですよね」
「ま、楽しかった、よ?もちろん」
「文化祭とかでもバンドで演奏したんですよね?」
「したした。1年から3年まで。というか卒業してからもちょくちょく」
「オレらの卒業年にも演奏してくれましたもんね。
卒業したあの先輩たちが演奏するってなって、めっちゃ集まってましたもん」
と青に言う神羽。
「そうなんですね。すごい。大人気だ」
「まあ。ありがたいことに?母校での人気はいまだにある」
「今も!?ですか?」
「ありがたいことにね」
「今年は?呼ばれてないんすか?」
「今年も…まあ…文化祭呼ばれてはいますね」
「すごー」
「予定合えば観に行ったらいいじゃないですか」
と青に提案する神羽。
「あ、行きたいです。行けるもんなんですか?」
「行けますよ。自分も去年行ったっす」
「えぇ〜。行きたい」
と金兜と見る青。
「そう言われると思ったから言わなかったのに」
「嫌なんですか?」
「客席に知り合いがいるって思うのはちょっと…。オレはね?
メンバーのエースってやつは、ただただゲーム感覚でやってるから
客席に誰がいようが関係ないタイプらしいんだけど、オレは小っ恥ずかしいのよね」
「なるほど…」
と腕を組み、少し悩む表情をする青。しかしすぐに
「行きます」
と言う。
「うん。木扉島さんならそう言うと思ったよ」
「え。そうですか?」
「うん。意外と意地悪だもんね?」
「意地悪ではないですよ。
からかいがいのある人見つけたら、からかいたくなる性分なんですよ」
と微笑む青を見て
すげぇ人に捕まったな。金兜くん…
と思う神羽。そんなこんなで12時、24時、0時前に金兜と青はお店を出て
その後いつも通り神羽、名論永、夏芽、雪姫で乾杯していた。そしていつも通り明け方まで営業をして
「んじゃ!今日もお疲れ様っした!」
いつも通りお店前で解散した。雪姫は神羽と、夏芽は名論永と帰っていった。
「めろさんって地元はどこなんですか?」
「ん?地元?一応東京だけど」
「あ、そうなんですね」
「うん。地方組だと思った?」
「いや。どこ出身なのかなぁ〜って」
「金城崩さんは沖縄のどこ出身なの?」
「どこ…。うぅ〜ん。ま、市街地のほうじゃないです」
「観光客が行くようなとこじゃないってこと?」
「そうですね。というか沖縄って市街地以外はほぼおんなじ感じだと思います」
「へえぇ〜。そうなんだ?」
「沖縄来たことあります?」
「あるよ。家族旅行で」
「あ、高校の修学旅行とかじゃないんですね」
「あぁ。うん。うちの高校の修学旅行は長崎だったから」
「そうなんですね」
そんな他愛もない話をしていると夏芽の住む家の前まで着いた。
「いつも送ってもらってありがとうございます」
「あ。いやいや。夜も遅…朝か」
と言う名論永にクスッっと笑う夏芽。
「ま、ここら辺は治安良いから大丈夫だとは思うけど、念のためね」
「ありがとうございます」
ペコッっと頭を下げる夏芽。
「いえいえ」
名論永もペコッっと頭を下げる。
「じゃ、またぁ〜…月曜日か、な?」
「はい。また月曜日」
と夏芽は笑顔で返して、名論永は自分の家へと帰っていった。
「妹ちゃん高校2年だっけ?」
「はい。高2です。一番楽しい盛り」
雪姫と神羽も他愛もない話をしながら帰っていた。
「だよな?うちのも高2だから覚えてたわ。いいよなぁ〜高2。羨ましい。戻りたい。仲良いんでしょ?」
「いい…。ほうなんじゃないですかね?周りの話を聞く限り」
「うちは仲悪いからなぁ〜」
「そうなんですか?」
「まあぁ〜、悪い…ってか仲良くはない?うちの場合そもそもオレが一人暮らししてるからな。
そもそも妹と関わりが少ないのよ」
「そっか。妹さん実家か」
「そうそう。実家なんてそうそう帰んないからさ?たまに実家帰っても妹いないときもあるし」
「LIMEとかはしてるんすか?」
「んん〜…。してるってほどでもないな。誕生日プレゼントのリストとか
誕生日プレゼントありがとうとか、誕生日おめでとうとか。なんかイベントとか報告用のLIMEって感じ?」
「へぇ〜。そんなもんなんですね」
「梨入須んとこは?」
「LIMEですか?」
「そうそう」
「んん〜…」
と思い出す雪姫。
「…あ、でも私たちもそんなにLIMEはしないかも」
「なんだそれ」
と笑う神羽。
「いや、私の場合毎日顔合わして話してるから、逆にあんまLIMEする意味?意義?がないんですよ」
「なるほどな?それはそうか」
「そう」
「ま、仲良きことは美しきことよ」
なんて話していたら雪姫の家の前に着いた。そしていつも通り
「んじゃーなー」
と帰ろうと背を向ける神羽の背中を見て勇気を出した雪姫。
「店長」
と雪姫に呼ばれて
「はい」
振り返る神羽。
「あのぉ~…」
と少し下を見ながら言い淀む雪姫。
「店長って、免許持ってます?」
「…。は?免許?持ってるけど、一応」
「あの…アウトレット行きたくて。連れてってくれない、かなぁ〜って」
と言う雪姫に、膝に手をつく神羽。
「ビビったぁ〜…。辞めんのかと思った」
「え?」
「いや、なんか呼び止められて言いづらそうにしてるから、辞めんのかって」
「辞めるわけないでしょ」
「それはわからんやん。…あぁ〜。ビビった」
と言う神羽に、クスッっと笑う雪姫。
「アウトレット?…あぁ〜…たしかにいいかもな。じゃ、今度行くか」
「はい!」
「そんだけ?」
「はい」
「ビビらすなよなマジ。じゃ、またな明日な」
「はい!また明日!」
雪姫は家に帰り、自分の部屋でベッドに寝転がり、天井を見て
「…楽しみ」
と呟いた。