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二十五万。
不自然に曲がり、黒紫色に腫れ上がった指では、もうまともな仕事などできなかった。omrがどれだけ「wkiのために」と願っても、肉体はすでに限界を迎え、魂は磨り潰されて消えていた。
wkiはいつものように、別の女と遊び惚けて朝帰りをした。
玄関を開けても、いつもの「おかえり、wki」という、縋るような、湿り気を帯びた声が聞こえてこない。
「おい、omr。飯は? 金はどうした」
返事はない。リビングは静まり返り、カーテンの隙間から差し込む朝日が、床に溜まった「何か」を照らしていた。
キッチンに向かったwkiは、そこでようやく立ち止まった。
床一面に広がっていたのは、赤黒い海。その中心で、omrは冷たくなっていた。
利き手の指を折られるのを恐れたのか、あるいはwkiの期待に応えられない絶望に耐えかねたのか。omrは、wkiが「味が薄い」と投げ捨てたあの安物の万能ナイフで、自らの喉を深く断ち切っていた。
傍らには、血に汚れた一通の封筒と、震える筆跡のメモ。
『wki、ごめんね。二十五万、足りなかった。俺の臓器とか、全部売ったら、少しは足しになるかな。最後まで役に立てなくて、ごめんなさい。大好きだよ。』
封筒の中には、omrが文字通り命を削ってかき集めた、血塗れの数万円。
それが、omrという一人の人間が残した全財産であり、人生の総計だった。
wkiはそれを見て、悲しむどころか、心底忌々しそうに舌打ちをした。
「……チッ、ふざけんなよ。死んだら金も稼げねえだろうが。ゴミが最後までゴミみたいなことしやがって」
wkiは死体を蹴り飛ばそうと足を上げた。
しかし、その足は空中で止まった。
いつもなら、蹴れば「ごめんなさい」と泣き叫ぶ声がした。
殴れば、痛みに耐えながらも自分を愛おしそうに見つめる瞳があった。
どんなに裏切っても、どんなに壊しても、自分を全肯定してくれる「舞台装置」が、そこにはもういない。
wkiは、omrの死体のそばに転がっている、あの不自然に曲がったままの中指に目を止めた。
自分が折った、omrとの「絆」。
冷え切った部屋の中で、wkiは初めて、自分を無条件に支配させてくれる「おもちゃ」を失った喪失感に気づいた。
「……おい、起きろよ、omr。死んで逃げられると思ってんのか?」
wkiの声が虚しく響く。
返ってくるのは、換気扇の回る乾いた音だけだ。
omrの表情は、驚くほど穏やかだった。
wkiに怯え、暴力に震え、金の算段に狂わされていたあの卑屈な面影はない。
死ぬ間際、彼はようやく、wkiのいない、痛みも裏切りもない場所へ逃げ出す許可を自分自身に与えたのだ。
wkiは、血溜まりの中に落ちていた数万円を拾い上げた。
指先にまとわりつくomrの血。
それは洗っても洗っても、二度と落ちない呪いのように、wkiの肌にこびりついた。
omrは死をもって、wkiから永遠に逃げ切った。
そして、wkiという男には、二度と埋まることのない虚無と、自分を愛した唯一の人間を自らの手で壊し尽くしたという、後味の悪い記憶だけが残された。
朝日が昇り、部屋を白々と照らし出す。
地獄のような共依存の幕は、最も静かで、最も残酷な形で下ろされた。
終わり
疲れた