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ムツキは日除けテントの方で一生懸命に作業をしているケットを指差す。


「へ?」


「……ケットだ!」


「ニャ? 呼んだかニャ?」


 ケットがムツキの方へと近付く。ケットが着ているのは赤や黄、青、緑と原色ばかりでかなり目立つド派手なアロハシャツである。アロハシャツはボタンが小さな巻貝でできており、海らしさをふんだんに盛り込んだものだ。さらには、大きめの薄茶色のサングラスをかけ、真っ白な花のレイを首にかけ、背中には何故か弾いたこともないのにウクレレを背負っているという、やり過ぎ感もありつつ最強の組合せだった。


「モフモフに服は可愛い……最強だ……。これは譲れない……。なんで、この世界に水着やアロハシャツ、花の首飾りやウクレレだっけか……があるかなんて、そんな細かい考えや疑問は吹き飛ぶような可愛さだ。もう何でもいいんだ。この可愛さを目に焼き付けられただけで、俺は今日海に来た甲斐があった。他の妖精たちもアロハシャツだけでも着ているようだし、ここはまさに俺にとっての楽園かもしれない!」


「ありがとうニャ♪」


 ムツキにモフモフスイッチが入ったことで全ては流れた。ケットや妖精たちがいなければ、本当に誰を選んでいたのかは誰にも分からない。


「旦那様の変なスイッチが入ったな……」


「というか、スイッチ入れて逃げたわね、ムッちゃん……」


「ムツキさんは選ばないを選んだわけですね」


「マスター、その選択にはガッカリです……」


「ダーリン、こういう時はちょっと男らしくない……」


「ま、まあ、ハビーは本当にみんなのことがそれぞれ一番で、誰も傷付かないようにしたんだろ」


 ユウは「女の子の中で」という条件で再度問いただそうとも思ったが、ムツキにこれ以上意地悪をすると嫌われるかもと判断し、今回は見送ることにした。


「まー、ケトちんなら仕方ないなー。さて、じゃあ、何をしようかなー」


「とりあえず、日焼け止めは全員塗り終えているから……準備体操をして、海に入ればいいんじゃないか?」


 ユウの言葉にナジュミネが答え、全員で準備体操をする。


「行くか!」


 ユウ、ナジュミネ、リゥパ、サラフェ、コイハ、メイリが海へと駆け出す。ユウとメイリ、リゥパ、コイハは浅瀬で水の掛け合いをし始め、サラフェはいつの間にか持ち出していた大きな浮き輪の上でぷかぷかと海に浮かび、ナジュミネは一心不乱にクロールで沖へと泳いでいた。


 一方、ムツキはビーチパラソルの下で本を読み始め、キルバギリーはその隣のビーチパラソルの陰で砂のお城を作り始めた。


「キルバギリーは泳がないのか?」


「そう思ったのですが、内部からの禁止命令が出たので諦めました」


「あー、やっぱり」


 ムツキが納得したような表情を見せるため、キルバギリーは何かを知っているのかと思い、彼に問う。


「マスターには禁止命令の意味が分かりますか?」


「うーん、どうだろうな。キルバギリーは超高性能だから防水加工も多分大丈夫なのだろうが、一応避けるようにプログラミングされているんじゃないか、って思っただけだ」


 キルバギリーは半分納得したような様子を見せた後に、ムツキの方を見る。


「一応、マスター権限で解除できるようですが」


「俺はキルバギリーが心配だから解除したくないかな。すまん、みんなと遊べなくて」


「……いえ、マスターの気持ちが聞けて嬉しいです」


 ムツキとキルバギリーがそのような会話をしている中、海のチームでは、戻って来たナジュミネがユウたちのグループに合流する。


「海は気持ちいいが、旦那様がああしていて、隣に誰か1人がいる感じだと家の中とそう変わらないのではないか?」


「はっ! た、たしかに。みんなで何かをしよ! 一旦、ムツキの前に集合!」


 ユウの号令でムツキの前に皆が集まる。皆で何かをしたいらしいユウが一生懸命にアイデアを出そうとして、やがて、1つのアイデアを閃く。


「そうだ! ビーチバレーなんてどう?」


「ビーチバレー?」

「ビーチバレー?」

「ビーチバレー?」

「ビーチバレー?」

「ビーチバレー?」

「ビーチバレー?」


 ナジュミネ、リゥパ、サラフェ、キルバギリー、コイハ、メイリは馴染みのない言葉に首を傾げる。


「ビーチバレーか。えーっとだな。ざっと説明すると……」


 ムツキが全員に説明をする。ただし、彼もきちんとしたルールを知っているわけではないため、割と抜けの多いルール説明となっていた。この世界にビーチバレーのルールブックなど存在しないので、誰も確認のしようがないのである。


「なるほど。チームで行う運動ゲームなのだな。分かった。まずチーム分けだな。ただし、旦那様とユウ、2人はダメだ」


「なんで?!」


 提案したユウを除け者にしたことで、彼女は半分憤慨したように叫ぶ。


「なんでって、勝てるわけがなかろう……」


「うぅ……ムツキ……。ナジュみんが仲間に入れてくれない……」


 ユウはムツキにしがみつく。彼は彼女の濡れた頭を指で梳くようにしながら軽く撫でる。


「よしよし。まあ、それは仕方ない気もするな。じゃあ、こうしよう。プレイヤーだけじゃ進まないだろ? 俺とケットとクーが審判をするから、ユウは楽しく実況をしてくれ。実況をがんばったら、俺からご褒美をあげるぞ」


「うー……ご褒美……何でもいいの?」


「え、あー、倫理的に問題ない範囲でなら?」


「……分かった」


 ユウは皆で遊べないのは不服だが、実況が楽しそうなことと、ムツキからのご褒美ということで渋々了承した。そこにリゥパがニコニコな笑顔で口を開く。


「ムッちゃん?」


「ん?」


「私たちには何かご褒美ないの?」


「ご褒美か。そうだよな。何がいいんだ?」


 リゥパはご褒美がほぼ確約したことに嬉しそうにする。


「最近、いつも誰かと一緒だから、勝った2人は1人ずつイチャイチャできる権利なんてどう?」


「えーっと、俺は構わないけど、皆もそれでいいか?」


 ムツキはリゥパの提案に頷き、周りの反応を窺う。


「妾は賛成だ」


「私とサラフェは賛成です」


「え、なんでサラフェまで……まあ、いいですけど……」


「俺は構わないぜ」


「僕も大賛成♪」


 満場一致ということでご褒美が決まった。


「じゃ、決まったから、準備だね。これからムツキ争奪戦ビーチバレー大会をするよ」


「いや、争奪はしないでくれ……」


 ユウの言葉に、ムツキは少しばかりの訂正をしてからケットたちと準備を始めた。

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