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赤桃
ドロドロ
赤くんクズめ
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赤side
吐いた息が白く溶けるほどの寒気の中、鍵を開けて玄関に入ると暗闇の中に佇む恋人の姿があった。
赤「びっくりした…怖いんだけど」
桃「….随分帰り遅かったね」
数時間前にちょっと出かけるとだけ伝えてから、日付はもうとっくに越しているのだからそう言われるのも無理はない。
伏せがちになった桃色の瞳は、無表情にこちらを見据える。
赤「あー…うん、高校のときの友達とばったり会ってさ。話してたらこんな時間になっちゃった」
ごめんごめん、と苦笑気味に答えながらマフラーを解く。
そう言いながら靴を脱ごうと中腰になった瞬間、目まぐるしく視界が回った。
手首を乱雑に掴まれ、勢いよく壁に押し当てられた衝撃で後頭部を強打する。
頭全体が揺らがされるような苦痛に眉を顰める俺に、ないくんは見たことないくらい冷たい表情を突きつけた。
桃「いつまでこんなごっこ遊びするつもり?」
口では静かな怒りを淡々と紡ぎ、長い爪を強く立て、左手首から血液が細く流れていく。前まで綺麗にネイルまで施されていた爪先は、今じゃ節々が欠けてボロボロになっていた。
赤「……離して」
桃「俺その匂いほんとに大っ嫌いなんだけど。甘すぎて吐きそう」
恐らくさっき遊んだ女達の誰かしらの香水が移ったんだろう。
心の底から不快そうに荒がる息が、俺の鼻先に生暖かくかかって鼻腔を擽る。
桃「さっきまでどこ行ってたの」
赤「だーからコンビニだって」
桃「いっつもそうやって適当なこと言って…ふざけてるのもいい加減にして」
頭上から降り注ぐ怒号を、冷静な瞳で静かに受け止める。
手を振り解こうとしても、怒りに任せた握力は強すぎてびくともしない。
桃「俺がこの数週間どれだけ耐えてたか分かんないの?…気のせいかも、思い直してくれるかもって思ってたけど、何も変わってないんだね」
赤「いや、だって別に悪いことじゃないじゃんね」
桃「は?」
赤「俺はないくん好きだけど、今日遊んできた女の子達のことも好き。それだけ」
桃「っだからそれが浮気だって…!」
赤「そもそも浮気が悪いなんて思わないしなぁ。りうら縛られるのきらーい」
張りつめた空気の中、繰り広げれる論争はイタチごっこで生産性がまるで無い。
すると、ないくんはさっきまでの憤りりを少し和らげて、眉尻を下げた。
桃「……なんで…」
桃「…俺たち、最初はこんなのじゃなかったよね」
赤「そうだねぇ」
悲哀の色が強い言葉を零してから、下唇を前歯で噛むのが見えた。釈然とした俺の返事が気に入らなかったんだろう。 手首は未だ離してくれない。
ないくんっていつもそう。怒るのが下手くそすぎる。
何でも要領よくこなすくせに、俺のことになると すごい不器用になるの。
ほんと可愛い。
赤「ないくんはさぁ、なんで自分が悪いって考えにならないの?」
桃「……え…?」
俺だっていつまでも受け身でいられないし、もう譲ってあげない。
緩慢に目を剥く桃色の瞳と目線を交えると、自然と口元が緩んだ。
赤「ここ2、3ヶ月、どれぐらい2人の時間があった?…寂しかった。寂しくて死にそうだった」
桃「寂しいって…前にもそんなこと言ってきて俺ちゃんと治したよね?飲み会も友達からの誘いも全部断ったし、残業だってなるべくしないように」
赤「ふーん」
赤「そんなので一緒にいたつもりだったんだ」
鳩尾を突き刺すようなイメージで放った言葉は、想定より低く掠れた。
そんな言葉の含む冷たさは彼もちゃんと分かってくれたみたいで、華奢な指先から段々力が抜けていく。
ないくんが動揺で瞳を大きく揺らしている隙に、その手を振り解いて青白い手首を鷲掴んだ。
赤「辞めてよ、仕事」
赤「俺は家でずっとないくんのこと待ってたよ。それで単位足りなくなっちゃったから大学中退するの。….だからないくんも仕事なんて行かないで俺と居て」
桃「っそれはだめ…!一緒にいたい気持ちは俺も同じだけど、二人でこの先もずっと幸せでいるためにはどうしてもお金は必要なんだよ…」
赤「二人の時間を削ってまで手に入れる幸せになんの価値があるの?だったら不幸でいいよ」
淀みの無い口調で、すっかり威勢を失って青ざめたその面に畳みかける。
喉が詰まった様子で立ち尽くす彼を横目に、床に落としてしまっていたトートバックを肩にかけ直し、アウターの裾を摘んでシワをぴんと伸ばした。
桃「っ待って!!」
無言でその細身の真横をすり抜けた瞬間、再び俺の手首はないくんの手中に囚われ、玄関に向かっていた両足が留まった。
桃「やだ…..待って…っなんで…」
あまりにも弱々しい声と共に、綺麗な顔が歪んでいく。
赤「『なんで』って何が?」
桃「….どうしたら….俺…っ」
彼の身体の震えが、指先を介して俺に伝う。
ひゅっ、ひゅっ、って、言葉の狭間で聞こえる酸素の詰まる音。
その顔は何?
悲哀?戦慄?絶望?不安?
……あぁ、もう…
桃「….どうしたらちゃんとりうらのものになれる…? 」
もう耐えられない!♡
桃「…っ!ちょ、りう…」
驚く声を遮って、その整った唇を奪った。
欲望と衝動のままフローリングに押し倒す。
桃「…っ、ん、…♡まっ、…!♡」
カサついた唇を押し付け合いながら、彼の唾液全部絡め取るみたいに舌で翻弄する。
愛おしくて、愛おしくて、胸が焼け散りそうで。
桃「っは、っ…は…♡…っ…?」
赤「…ないくんはいっつも考えすぎなんだよ」
顔真っ赤にして激しく肩を上下させる恋人を前に、優しく諭すような言葉を選んでいく。
前に洗脳みたいだと言われたことがあった。
人聞きの悪い。
赤「頭空っぽにして、りうらの言うことだけ聞いてればいいの」
うん、そうだね。
最初はこんなのじゃなかった。
街中で片手繋いで、面白いもの綺麗なもの沢山共有して、『楽しいね』『幸せだね』『大好きだよ』なんて笑い合うような、そんなカップルだった。
…..つまんない。つまんないでしょ、そんなの。
赤「不安にさせちゃってごめんね。分かってくれるならそれでいいの」
メンヘラが彼氏に依存しがちなのは、自己肯定感の低さが影響しているとどこかで聞いた覚えがある。
元々スペックの割にそこまで高くない彼の自己肯定感を、最底辺まで堕とすのはさほど難しくはなかった。
むしろ上手く行き過ぎた故、ないくんを肯定できるのはもう俺しかいない。
桃「…もう離れないで…っりうらがいなきゃ、…」
赤「ないくん何にもできないもんね?知ってる」
枝毛だらけの桃色の襟足を優しく梳かし、細い体躯を自分の胸に引き寄せる。
年下に泣いて縋るなんてみっともない。
でもそんな弱いないくんが一番可愛いから。
赤「……死んでも離さないよ」
𝙚𝙣𝙙 .
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初めまして、お呪い(おまじない)です!
短めの読み切りでしたが、いかがでしたでしょうか。
年下に支配される年上の関係性が好きなんです…初投稿なので自分の性癖に忠実になってみました😽
これから作品沢山書いていきたいと思っているので是非よろしくお願いします…!
コメント
1件
初コメですめちゃくちゃ好きですーー😭‼️ 赤の思惑にまんまと引っかかって小さくなっちゃう桃ほまに好きです😭😭口調も解釈も人物像もド一致ですありがとうございましたパないです😭😭ひーー😭😭💖