テラーノベル
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主だよーん
みんなみてくれてるの感謝
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収録が終わったあとも、部屋の灯りは落ちない。
それぞれが自分の席に戻り、自然と作業に入る。
撮影は表の仕事。
ここからが裏の仕事だった。
ドズル
「今日のデータ、あとで共有しますね」
おんりー
「了解です。カット位置、メモ送ります」
MEN
「サムネ候補いくつか作っときますわ」
おらふくん
「ぼんさん、さっきのとこ面白かったですよ」
ぼんさん
「いやいや、みんなのおかげっすよw」
いつも通りのやり取り。
空気は穏やかだ。
なのに、ドズルの中にだけ小さな違和感が残っていた。
収録中、ほんのわずかに遅れた返事。
冗談に乗るまでの一瞬の空白。
でも、「最年長なんで」と言ったときの、あの少し固い笑い方。
気にするほどではない。
それでも、気になってしまう。
ただの疲れかもしれない。
数十分後。
ドズルが飲み物を取りに立ち上がる。
戻る途中、ぼんさんの席の後ろを通った。
モニターが二つ並んでいる。
左は編集画面。
タイムラインが細かく区切られ、テロップの配置が調整されている。
右は——コメント管理画面。
新着コメントが、上から順に並んでいる。
〈今日も面白かった〉
〈ドズル社最高〉
〈おんりー安定してる〉
〈MENのツッコミ冴えてた〉
〈おらふくん癒し枠すぎる〉
〈このメンバーほんと好き〉
ぼんさんの口元が、ほんの少しだけ緩む。
スクロール。
〈ドズルさんの進行ほんと安心〉
〈おんりーのプレイやっぱ上手い〉
〈MENのテンポ好きだわ〉
〈おらふくんいると空気やわらぐ〉
小さく、息を吐く。
(心の中:よかった)
他のメンバーを名指しで褒める言葉が続いている。
棘のある言葉は、ほとんどない。
(心の中:今日は、少ないな)
一瞬だけ、肩の力が抜ける。
その下。
〈ぼんさん好き〉
〈声落ち着く〉
そして。
〈最近テンション低くない?〉
〈前のほうが面白かった〉
〈最年長ならもっと引っ張れよ〉
〈空気重い〉
カーソルが静かに動く。
削除。
非表示。
報告。
迷いがない。
編集画面に戻り、カットを進める。
数秒後、またコメント欄へ。
〈ドズルさん疲れてない?〉
〈おんりー声小さくない?〉
〈MENの建築詐欺説w〉
指が止まる。
一瞬。
そして、削除。
ぼんさん(小声)
「……みんなへは、やめて欲しいな、、」
誰にも聞こえない小さな声。
自分への言葉なら、慣れている。
でも、メンバーへの棘は残したくない。
削除。
削除。
ドズルは思わず足を止めそうになる。
けれど、そのまま何も言わず通り過ぎた。
これは仕事の一部だ。
コメント管理は必要なこと。
誰かがやらなければいけない。
ただ——
こんなに一人で、黙々とやるものだっただろうか。
しばらくして。
ドズル
「ぼんさん、まだやってるんですか!」
声をかける。
ぼんさん
「あ、はい。もうちょいで終わります」
振り向いた顔は、いつも通り笑っている。
ドズル
「遅くなりますよ?」
ぼんさん
「大丈夫っすよ。慣れてるんで」ニコッ
慣れている。
その言葉が、妙に引っかかった。
ドズル
「コメント、多いですか」
少し踏み込んでみる。
ぼんさん
「まあまあですね。ありがたいことに」ニコッ
さらっと返す。
“ありがたい”ものばかりではない。
それでも、ぼんさんは淡々としている。
ドズル
「手伝いましょうか?」
ほんの軽い提案のつもりだった。
ぼんさん
「いえいえ。”最年長”なんで、このくらいは」
固い表情で無理に笑う。
(メンバーには普通に笑っているように見える)
またその言葉だ。
“最年長”なんで。
ドズルは、それ以上何も言えなかった。
夜が少し深くなる。
MEN
「お先です!」
おらふくん
「ぼんさんも、みんなも無理しないでくださいねー」
ぼんさん
「はいよー」
軽い返事。
部屋に残るのは、ドズルとおんりー、そしてぼんさん。
カチカチカチカチ
やがて、おんりーも作業を終える。
おんりー
「ドズさん、僕も今日はここまでで」
ドズル
「お疲れさまです」
おんりーが帰ったあと、部屋は一段と静かになった。
カチカチカチカチ
キーボードの音。
カチッカチッ
マウスのクリック音。
スクロール。
削除。
スクロール。
削除。
止まらない。
ふと、ぼんさんの手が止まった。
画面には、短い一文。
コメント💬
〈最近、ぼんさん無理してない?見ててちょっときつい〉
アンチではない。
心配の言葉かもしれない。
でも。
ぼんさんの指は動かない。
数秒後。
…そのコメントは、非表示になった。
削除ではない。
ただ、見えなくしただけ。
そしてまた、作業に戻る。
ドズル
「……ぼんさん」
ぼんさん
「どうした?」
ドズル
「今日、ちょっと疲れてません?」
ぼんさん
「いや、全然。めちゃくちゃ元気ですよ?」
即答。
ドズル
「なんか収録、少し静かだった気がして」
ほんの少し踏み込む。
ぼんさんは一瞬だけ視線を落とした。
ほんの一瞬。
ぼんさん
「そんなことないっすよ」
笑う。
ぼんさん
「もう少しテンションあげるかぁー!」
少し小さな声で
「”最年長”なんで」
微かに聞こえた
その言葉は、冗談に聞こえなかった。
ドズル
「…」
ドズルは、何も言えなくなる。
“最年長”。
その立場が、どれだけ重いのか。
背負わせすぎていないだろうか。
気づかないうちに、任せすぎていないだろうか。
数分後。
ドズル
「ぼんさん!今日はもう帰りましょう?」
少し強めに言う。
ぼんさん
「え、でもまだ編集が、、」
ドズル
「明日でもできます」
沈黙。
ぼんさんはモニターを見つめる。
タイムライン。
コメント欄。
そして、ゆっくりとウィンドウを閉じた。
ぼんさん
「……じゃあ、今日はここまでにします」
立ち上がる。
その背中は、いつもより少しだけ小さく見えた。
部屋の灯りを消す。
外の夜風が冷たい。
並んで歩きながら、会話はほとんどない。
けれど、ドズルの中で確信が生まれつつあった。
これは気のせいじゃない。
ぼんさんは、何かを抱えている。
そして、それを——
誰にも渡そうとしていない。
静かな夜の中で、
ドズルは決めきれないまま、ただ歩いていた。
次に声をかけるときは、
もう少し踏み込むべきかもしれない。
そう思いながら。
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コメント💬まってまーす(。-∀-)ニヤリ
コメント
2件
初コメ失礼しますっ〜!! 話の書き方など、人物の口調など詳しく書けていて とてもすばらしいですっ!! 続き頑張ってください〜っ!!!