コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
特に何か特別な事が有る訳では無かった。唯、何と無く動く脚に全て身を任せて進んで行った。着いた場所は何の変哲も無い教会。誰も居ない、誰も使って居ない、廃墟と化した神を信仰する場所。
「……何で此処に来たんだろ」
自身も良く理解出来て居ない此の状況下で何か行動出来る訳も無く、教壇へ向かう。私は神など信じない。だから、どんな窮地に立たされようとも助けを求め無い。仏教徒でも、イスラム教徒でもヒンドゥー教徒でも無い。唯、何も信じたく無いし、信じる事が出来ない。
「其処に居るのは誰だ?」
不意に掛けられた声に驚き、振り向く。其の人は黒いローブを着て、深くフードを被って居た。
「此処に居るのが誰でも良いんじゃ無くて?
結果は変わらないのでしょう?」
相手は此処に通い詰めて居るのだろうか。此の教会には一体、何の目的があって来て居るのか。此処が廃墟になった理由を知って居るのだろうか。次々と浮かび上がる疑問に対する答えは何一つ無く、私は冷ややかな風と静寂に包まれた空気に耐える事しか出来なかった。
「まぁ、そうだな…だが、俺は純粋に御前が誰なのか知りたい」
私は其の一言が嬉しかった。此の男の人は私を純粋な気持ちで、唯、知りたがっている。家族ですら私に興味を示さなかったのに。初めて会う赤の他人に、私を悲しみから救い出してくれたと感じてしまう。
「………宮霧聖華。貴方は?」
「星山一希。宜しくな、宮霧」
「えぇ、宜しく。星山さん」