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キラリと深い紺に煌めいた光は、流れるかのように泳ぎ、やがて、紺の中へと潜って行った。きっと、声も知らない誰かの願いを乗せている。
神頼みなんて馬鹿らしい。昔からずっと、そう思っている。神様なんて居る訳ない。呪いには居るよ?土地神とか水神様とか、厄介なヤツ。でも、想像している様な、願いを叶えてくれたりする、そんな都合の良い神様なんて、きっと居ない。
それなのに、何でコイツは願い星を見る度に、嬉しそうに報告して来て、お願い事をしようと促して来るのか。
「悟、悟!ほら!また流れ星!」
「なぁ、ンなの見つけて何になるんだよ…。」
「何って……!流れ星にお願い事をするのは定番だろう?!」
「願って何になるんだよ。如何せ、叶いっこねェよ。」
「滅多に見られる物じゃ無いし、テンション上がるでしょ!!」
「はぁ〜??何が楽しくてテンション上がるんだよ。ガキくせェ〜。」
「悟さぁ…。空気読もうよ…。」
「折角の流れ星なのに、ムードが台無しだよ。」
「るせー。寒ぃし部屋に帰ろうぜ。」
「はぁ”……分かったよ。」
星なんかに興味は無いし、寒いし、何ならゲームがしたい悟は、ムードガン無視の悟の所為で不機嫌そうな傑をお構い無しに、寮の部屋へと早歩きで戻った。
「傑〜。速く行くぞ。」
「分かった分かった。」
部屋に帰って来てからも、傑は、窓の外を見て流れ星を見つけては、テンション爆上がりで騒いでいた。
「お前…。よく飽きないで見ていられるな。」
「だって滅多に見られないんだよ?!」
「へーへー。」
「悟も一緒に見ようよ。綺麗だよ。」
「よっし!桃鉄しようぜー。」
「私の話聞いてる?」
傑の言う事はガン無視して、悟は、ゲームの準備を始める。そんな悟に溜息を吐いて、傑はますます不機嫌そうになるが、悟は、それも無視して、構わずゲームをやり始める。
「傑もやろうぜ。」
「えー…。」
「星くらい、また見られるだろ。」
「星じゃ無くて〝流れ〟星ね。」
「何時も見てる星とは全然違うから。」
「んぇー。」
「はぁぁ…。」
「悟って、出来る様になりたい事とか、叶えたい事、無いの?」
「無いって事は無い。」
「そう言うのを、流れ星にお願いするんだよ。」
「願っても何も変わらないだろ。」
「そうかもしれないけど、自分じゃ手の届かない事、出来ない事、如何しようも無い事、人間じゃ絶対に叶えられない事は、やっぱり神様とか、そう言うものに頼りたくなるだろ?」
「はぁ?俺達最強だし、神様になんて頼らなくても大丈夫っしょ。」
「はいはい。」
呆れた様に返答してはいるが、傑は、何処か嬉しそうな、柔らかな笑みを浮かべた。
「ま、悟にも何時か分かる時が来るよ。」
「分かった分かった。ゲームやろ。」
「はいはい。分かったよ。」
早くゲームがやりたい悟は、さっさと傑の話を区切って終わらせた。そんな悟に溜息を吐きながら、なんだかんだで、傑も、悟とゲームをやり始めた。文句を言いつつも、お互いに、二人で一緒に遊ぶ時間は、時間を忘れる程、楽しいものだった。
どんな事ですら、時間と共に過ぎ去ってしまうと気が付いたのは、傑が居無くなってからだった。
どんな事にすら、終わりがある事を、其の時、改めて思い知らされた。ずっと続くと約束されている物には、端から、ずっと続く事を願わないだろうに。永遠の物に、永遠なんて願わないだろうに。何時から、此の楽しい時間が永遠だと錯覚していたのか、普通に考えれば、絶対に有り得ない事だと分かった筈なのに。
でもさ、皮肉だよね。終わりが在るから、大切にしようと思えるなんて。
大切な物ばかりが、消えていってしまうんじゃ無くて、限り在る物にばかり惹かれている。終わりが在る物にばかり、価値を感じてしまう。最期が在ると分かっているから、最期が来ない様に祈ってしまう。でもそれは、ただの祈りに過ぎ無いと言うのに、願望でしか無いと言うのに、其の祈りが、まるで叶ったかの様に勘違いをして。其れで後悔したとしても、また繰り返して。今度こそは、今度こそは、って、本当、皮肉だよね。
「傑に、彼の時、何を願ったのか聞いておけば良かったなぁ。」
「傑。」
「僕もさ、実は、彼の流れ星を見た夜に、流れ星に願い事をしたんだよ。」
「叶わ無かったけど。」