コメント
1件
最後のノアが、かわいそうだけど、ここから、もっとすごい物語ができるのだと信じて、第2話まで、気長に待ってみる
煌めく世界の片隅で
ノアは目覚めた。地球から60光年離れた宇宙船の中で。
ノアには任務がある。地球の代わりとなる星に辿り着くために、宇宙船でワープを繰り返しているのだ。しかし、50年も前にコールドスリープ中の肉体から離れ、幽体離脱をしてしまい、自らの身体に戻ることも出来ず時間だけが過ぎていた。
ノアの視界の中にあるのは、真っ暗な輝きと多数の星々。宇宙船の中には、己の身体と、コールドスリープ中の仲間たち。会話パターンが8万以上ある娯楽用ロボットも積んであったが、幽体離脱中のノアには反応しない。宇宙船制御用AIも同じく、反応はなかった。
ノアは毎日暇を潰すために、船内のデジダル書簡の漫画や、小説も読み尽くしてきた。数100種類ものゲームも飽きるほどやり尽くしていた。宇宙船は光速で移動しているため、オンラインゲームも、あっという間にサービス終了してしまい、ノアは娯楽に飢えていた。
ノアは日が経つごとに新しいことに挑戦し続けた。頭の中で最強の怪獣について考えたり、カメラに自分を写そうと努力したり、コールドスリープで寝ている仲間に落書きを行っていた。
そんなある日、ノアはあり得ないことを思い付いてしまう。
「コールドスリープで寝ている仲間を起こしてしまおう。 」
もちろん、任務的には許されない。コールドスリープから目覚めるのは目的の惑星に近づいてからと設定されていて、それまで何十年経つかも解っていなく、到着した時には、よぼよぼの老人に成ることもおかしくない。
しかしノアは、そうなれば起こした仲間にも悪く、地球で待っている人達にもこっぴどく怒られるだろうと、考えを改めてコールドスリープに触るのは止めて行こうと決めた。
そして更に20年の月日が経った。毎日色々なことをして暇を潰していたノアだが、精神的な限界が近づいていた。愛玩ロボットは壊してインテリアに、娯楽用ゲームは改造してホラーゲームに、想像上の怪物はより強力へとなった。
一生分の孤独と向き合っていたノアは、ついに禁断の方法に手を付けてしまう。
ノアは自分の本体と、仲間のコールドスリープを解除してしまった。
急いで 解凍処理をしていたノアだが、途中で違和感に気がつく。
コールドスリープから出た仲間達が全員心停止をしていた。
実は初めてノアが幽体離脱したとき、地球では大規模な戦争が勃発していた。亡国からのコンピュータウィルス攻撃により、宇宙船を飛ばした施設は壊滅。宇宙船もネットワークを介してウィルスに感染していた。その時コールドスリープにも異常が発生し、乗組員達も凍ったまま死んでいた。
そして戦争により地球からあらゆる生命が消え失せ、現在座標がわからなくなった宇宙船はワープゾーンから抜けられずにいた。
だがそんな事実をノアは知ることも出来ず、解凍を失敗して仲間達を殺してしまったと思い込み、罪悪感に包まれ、また一人孤独な宇宙の旅をし続けるのだった。