テラーノベル
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遠い記憶。鬱蒼とした幼少期の森で、幼いリナは湿った落ち葉の上に倒れていた。指先の皮は破れ、腕全体が痛みに激しく痙攣している。目の前に突き立てられているのは、幼い身丈の倍以上もある竜骨の弓幹だ。
「立て、リナ。腕の力で引こうとするな」
見上げれば、岩山のような獣人ガウルが立ち尽くしていた。鋭い眼光。その声に容赦はない。
(動かない……もう指の感覚がないよ、おやじ)
「お前は人間だ。腕力で獣に勝てると思うな。足を掛けろ。背骨を使え。全身を一本のバネにしろ!」
ガウルの怒号が森を揺らす。リナは歯を食いしばり、這い上がるように立ち上がった。孤児院で打ち捨てられていた自分を拾い、生きていく術を教えてくれた男。その期待を裏切るわけにはいかなかった。
泥の中に靴底を深々とめり込ませ、弓幹の基部を踏みつける。弦に指を掛け、背骨をしならせて全身の体重を後ろへ叩きつけた。
ギギギ……と、これまでピクリともしなかった竜骨が、不気味な悲鳴をあげる。
(死ぬ……身体が千切れる……!)
「引き絞れ! 命を削って弦を引け! さもなくば森に喰われるぞ!」
限界を超えた筋肉が悲鳴をあげ、視界が真っ赤に染まる。
――バツンッ!
解き放たれた弦の衝撃で、リナの小さな身体は豪快に後ろへ弾き飛んだ。泥まみれになりながら大の字に倒れ込み、激しく上下する胸を押さえる。
(あ……今、引けた……?)
荒い息を吐くリナを見下ろし、ガウルの厳格な顔が、ほんの一瞬だけ誇らしげに緩んだ。無骨で巨大な手が、血と泥で汚れたリナの頭を乱暴に撫でまわす。
(あたたかい……おやじの手だ)
「よくやった。だが……明日からは今の十倍引かせるぞ」
「……鬼」
かすれ声で呟く幼いリナの横で、豪快な獣人の笑い声が、どこまでも暗い森の奥へと響き渡っていた。
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もか@リムるな🫶小説コン開催
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コメント
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おお…第7話、めっちゃ良かったわ。幼いリナが竜骨の弓を引くシーン、全身のバネを使って最後の一線を越える描写が熱すぎる🔥「おやじ」の厳しさと、その奥にある愛情がひしひしと伝わってきて、頭撫でるところでグッと来たわ。この過去があって今のリナがいるんだなって思うと、これからの成長がますます楽しみ。続き、待ってる!