二年生になると同じクラスに彼女がいた。彼女は確かに美人だった。髪は背中まで届くサラサラのロングヘアー。そして今まで見たことないほど整った顔つきをしていた。メイクで化かされたような作られた美顔ではなく、神様が気まぐれに創造したと思わせるような自然な印象を受けた。また、授業で先生に指名されたときくらいしか聞けることがなかったが、声も美しかった。
クラスメートで僕の数少ない友達であるリョータが密かに彼女を女神と呼んでいるが、そう呼びたくなる気持ちは分かる。でも実はすぐに手首を切るメンヘラ。地味で平凡で目立たない、ないない尽くしの僕なんかが手懐けられるような相手ではないと知っているから、僕は彼女に興味なかった。
彼女を狙っていた男子はリョータばかりではなかった。ただ彼女は誰とも関わりを持たず、一切笑わなかった。いつもぽつんと自分の席に座っている彼女を見て、やっぱりリクとかいう悪い先輩の餌食になってしまったのだろうと信じた。
僕と彼女の席は教室の一番後ろの隣同士。でも一言も言葉を交わさないまま五月になった。ある晴れた日の昼休み、リョータが面倒な提案をしてきた。
「今日の放課後、女神に告ろうと思うんだ」
「いよいよか。友達として全力で応援するよ」
メンヘラだけどいいの? とか、そういう余計なことは言わない。恋愛して頭の中がお花畑になっている相手に水を差すようなことを言ったって聞く耳を持たないだろうし、話したこともない女子のことで数少ない友だちとの関係が悪くなるのも馬鹿らしい。
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