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テラーノベル(Teller Novel)
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英治が、口をあけて突っ立っている。

「本当ですか。健太さん、コピー曲やるんすか」

弘子が続けた。

「ジェットだけは、別なんですね」

「どうしてわかるんだ?」

コピー曲が誰の曲だとか、俺から電話口で語った覚えはない。

彼女は、俺の携帯の待ちうけ画面をゆび指した。そこには、パールホワイトの、星型のギターを持って立っている男がいた。真白い化粧をした顔にサングラス、つばの大きな、魔女のようなとんがり帽子を被っている。俺は、ジェットがいかにすごいバンドだったか、それはプレスリー、ビートルズに続くスターになれたはずだったと力説した。その話になるといつも熱いですねと英治が言う。

「私前から思ってたんですけど、言っていいですか」と弘子が言う。

「この人と健太さん、すごく似てます」

俺は携帯を二つ折りに閉じた。ジェットのギタリスト、バルドゥビーダの画面も消えた。

「確かに似てますよ」と英治が続けた。

「どこが?」

俺は顔にペイントしたことはないし、髪だってこんなに長いし、帽子は被らない。ギターも星型ではない。

「身勝手さが」と英治は答えた。

俺は立ち上がり、拳で英治の出っ張った腹にブローを数発入れた。弘子は腹をかかえて笑う。

「健太さんは、そのままでいいと、私思います」

英治は俺の攻撃をよけながら、自らのこぶしを、天高く突き出した。

「健太サイコー、オオーッ」

「お前馬鹿じゃねえか」と俺がいうと、弘子が再び笑い転げた。

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