コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
英治が、口をあけて突っ立っている。
「本当ですか。健太さん、コピー曲やるんすか」
弘子が続けた。
「ジェットだけは、別なんですね」
「どうしてわかるんだ?」
コピー曲が誰の曲だとか、俺から電話口で語った覚えはない。
彼女は、俺の携帯の待ちうけ画面をゆび指した。そこには、パールホワイトの、星型のギターを持って立っている男がいた。真白い化粧をした顔にサングラス、つばの大きな、魔女のようなとんがり帽子を被っている。俺は、ジェットがいかにすごいバンドだったか、それはプレスリー、ビートルズに続くスターになれたはずだったと力説した。その話になるといつも熱いですねと英治が言う。
「私前から思ってたんですけど、言っていいですか」と弘子が言う。
「この人と健太さん、すごく似てます」
俺は携帯を二つ折りに閉じた。ジェットのギタリスト、バルドゥビーダの画面も消えた。
「確かに似てますよ」と英治が続けた。
「どこが?」
俺は顔にペイントしたことはないし、髪だってこんなに長いし、帽子は被らない。ギターも星型ではない。
「身勝手さが」と英治は答えた。
俺は立ち上がり、拳で英治の出っ張った腹にブローを数発入れた。弘子は腹をかかえて笑う。
「健太さんは、そのままでいいと、私思います」
英治は俺の攻撃をよけながら、自らのこぶしを、天高く突き出した。
「健太サイコー、オオーッ」
「お前馬鹿じゃねえか」と俺がいうと、弘子が再び笑い転げた。