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Mrs. GREEN APPLE/もりょき
人に迷惑かけるな。
自分の力でなんとかしろ。
生きたいなら生きろ。
死にたいなら死ね。
ずっとそんな生き方でいる。
誰かに迷惑かけるくらいなら迷うことなく死を選ぶし、命なんか特別扱いするほど大切なものじゃない。
でも、涼ちゃんは違う
藤澤「もときー」
大森「ん?」
藤澤「最近さ、なんか無理してない?」
ソファーに座っていると、涼ちゃんが話しかけてくる。
俺と涼ちゃんは付き合っていて同棲もしているが、自室でそれぞれ寝ているため忙しい今はあまり顔を合わせる機会がない
大森「無理って、なに?笑。べつに元気だけど」
藤澤「元気そうじゃないんだよ。良かったらさ、この後温泉行かない?気分転換になるかも」
大森「だから大丈夫だって笑。急にどうしたの」
藤澤「すぐ大丈夫って言う…。もーいいから来て!!」
半強制的に助手席に座らされ、車が動き出す。
いくら大丈夫と言っても彼は聞く耳を持たず、道中のドライブスルーでアイスを奢ってくれた
藤澤「はい、バニラ。ほんとにこれで良かったの?色んな味あったのに、、」
大森「うん。シンプルなやつが1番すき」
藤澤「へぇ〜。もう少しで着くからこれ食べて待っててね」
藤澤「ふぃー、やっと着いたぁ!」
大森「ここ、、どこ?」
藤澤「だから言ったじゃん笑。温泉だよ。早速リフレッシュしに行こ?」
俺の手を引っ張り受付を済ます。
手ぶらで来たから備品を色々借りて、いざ扉を開けると
ーガラガラー
大森「え、人いないじゃん」
藤澤「いるわけないよー。プライベート温泉だからね。」
大森「え?どういうこと?」
藤澤「元貴あんま人混み好きじゃないでしょー?だからここを知ってから、ずっと連れて行きたくて予約してたの。ここなら何も気にしないで入れるからね」
そっと俺の頭を撫でてシャワーに向かう涼ちゃん。
あまりにも苦しかった
俺のどの部分が、彼にここまで気を遣わせてしまったのだろうか
藤澤「えいっ」
大森「わ!やめて!!顔にかかる!」
ボーッとしているとシャワーを俺の方に向けられた。
藤澤「いずれにせよかかるんだからいいでしょ笑。早くしないと暗くなっちゃうよ?ここは露天風呂もあるんだからね」
涼ちゃんの隣に座り、大人しく身体を洗う。
露天風呂付きのプライベート温泉…
きっと高かったろう。あとで多めにして返そう
身体を洗い終わった俺達は温度を確認してゆっくりと足先から湯につかる。
藤澤「うわぁー!きもちー」
大森「あったかい…」
藤澤「ね〜、 温泉とか久々だよね」
手のひらでお湯をすくってそれをじっと見つめる。
温泉なんか人が多いしうるさいしで嫌いだ。
でもこういう人がいない所もある。
嫌いなものでも、別の楽しみ方がある。
そんなようなことを教えられてる気がして心がキュッと締め付けられた
藤澤「…….消えないでよ」
ふいに涼ちゃんがボソッと呟く。
大森「え?」
藤澤「元貴って勝手に無理して一人で抱え込んじゃうからさ….気がつく頃にはスっと居なくなっちゃいそうで怖いんだよ、。」
今度は俺の目を見つめてそう言った。
泣きそうな顔で、苦しそうな顔で。
藤澤「一人で生きてくことなんか無理ってホントは分かってるでしょ?もっと甘えてきてよ。」
俺の手を取り、指先を優しく撫でる。
うん、分かってる。
人間である限り、一人で生きることなんか不可能だ。
それでも、俺は何故か甘えられない。
どこまでが許される “甘え” なのか分からないんだ
藤澤「甘えられなくても、俺が気付いて甘えさせてあげるからね。任せて!」
表情を一変させ、ぱあっと明るく笑う涼ちゃん。
それにつられて俺も笑うと、涼ちゃんは満足したように “この話はこれで終わり!” なんて言って俺の腕を引っ張り、また違う湯の方へ導かれた。
藤澤「いやー、気持ちよかったね!俺もいい気分転換になったな」
ある程度あったまり脱衣場で涼んでいると、涼ちゃんがコーヒー牛乳をどうぞと渡してくれた
俺の隣で涼ちゃんはフルーツミックス。
コーヒー牛乳は苦いのか甘いのか分からなくなって苦手らしい。
そんなところはまだまだ子供で、フルーツミックスを “あまーい!” なんて楽しそうに飲む。
大森「ありがとう」
そう言いながら涼ちゃんに抱きついた。
色んな感情が込み上げてきて、涙が止まらなくなってしまったから。
涼ちゃんは驚きながらもそんな俺を優しく受け止めてくれる。暖かい手で、背中を撫でながら。
彼の優しさに触れまくった日。
今度は俺が君に返せるように。
少し心が休まったら、君が好きな動物園にでも連れて行ってあげよう。
そう心に誓った