「…は?」
五条は青ざめた。それもそのはず。何故なら、白い板に書かれた文字はー
「どちらかが死なないと出られない部屋」
「…ハァ?…んだよ、これ…」
夏油も文字に気付いた。しかし、五条が思っていたよりも夏油は冷静な反応をした。
「…傑、焦らねぇの?こんな、どっちか死ねって言われてる状況なのに…」
「まぁ、別に怖くもないからね。呪術師してる時点で覚悟は随分前にできてたし」
「そういう事じゃねぇだろ!!」
夏油の肩が揺れた。
「何自分が死ぬみたいなこと言ってんだ!!覚悟だったら俺だってとうの昔にできてる!!なんなら俺がー」
「悟」
「あ”ぁ!?」
「私は、非術師…いや、猿が嫌いだ。だからこそ、あんな馬鹿なことをした。でも、後悔はしていない。」
「あんなことって…なんのことだ…?」
「前も言ってくれたが、私の望む世界は、君になら実現できる。」
「さっきからなんの話だよ!!」
「とぼけないでくれ。君ももうわかっているだろ」
普段の夏油らしくない、強い言い方。
五条は揺らいだ。現実と夢が混同するような気色悪い感覚に、左胸が包まれた。
「私はもう、君の隣に立てない。今はもう、“二人で最強”ではない」
「君“だけ”が最強なんだよ」
「ーッ!!」
それは自身も自覚していることだった。最近二人での任務が無い。自分が、傑を置いていっている感覚。ライバルではなく親友。それが傍に居ないことは、五条にとってまさに苦痛だった。
自身の強さに、親友との友情を阻まれていた。
「君は生きてくれ。その方が呪術界の為だろう。」
夏油は、出口とは反対側の方向に歩いた。
「おい、どこ行くんだよ…!っ待てよ!俺が許さねぇよんなこと!!」
「…」
「俺は!! 傑と、…卒業、したかったのに…!」
「悟」
「!」
「夢の中だけでも、私を“呪術師”のままでいさせてくれてありがとう。」
「すぐる、ーっ!」
目が覚めると、自身の寮の天井が見えた。先程の質素な白い部屋とは違い、和風建築な高専の一部。あんな地獄から抜け出せたと、安堵することは出来なかった。
夏油傑の寮は、空室だった。
コンコン
>「五条?」
ガチャッ
「おい五条遅いぞ…って、泣いてんの?」
家入は困惑した。普段弱みを見せない最強の1人が、目の下を腫らしていたからだ。
「ーっ、しょ、うこ…」
「…ハァー、めんどくさいなぁ…」
わしわし
家入は、優しく五条の頭を撫でた。
「夏油のことか?今日は休むか?」
五条は頷くか首を振るだけだった。家入が、YESがNOで答えられる質問にしたからだ。
「あー… 何言えばいいか分かんないけど、夏油は別に、五条のこと嫌いだったな訳じゃないと思うよ」
「…そっか」
五条は少しだけ、安堵したような顔を見せた。
「あ、今日休まない」
「1人で行けるか?」
「ガキ扱いすんな 」
反転術式で人の心は治せない。 全く、どいつもこいつもめんどくさいな、と家入は思った。
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