クッッソ真面目に書きます。いつものふざけてる夢ちゃんはいません。
長いかも
「うわっ雨じゃん最悪…」
天気からなんとなく予想はしていたが、まさかこんなに土砂降りになるとは思わなかった。
「傘持ってる友達みんな帰っちゃったし…どうしよ…」
数分、どう帰るか迷っていると
「やぁ夢」
と聞き覚えのある声が斜め後ろから聞こえた。
「ん?」
少し驚いて振り向くと私の幼なじみ、太宰治が明るい表情を私に向けていた。
「久しぶり」
実は太宰に会うのは久々で少し気まずい空気になってしまった。
「あ、あー久しぶり…」
「ふふ」
私の弱気な返答に太宰は面白がるように愛想笑いをした。
「どうしたの?」
「あー傘忘れちゃって…」
「帰る?一緒に」
「えっ」
驚いた。中学の時あんなにウザかったあの太宰が一緒に帰ろうとするなんて
「嫌ならいいけど」
「…うん、帰ろ」
太宰以外に傘を持ってる人なんていないと思い、ヤケクソになって受け入れてしまった。
なんか悔しい。
靴を履き替え校舎を出た。
太宰が傘をさす。
「いいの?」
私なんかと帰っていいのかと疑問に思ってつい聞いてしまった。
「お嬢さんを置いといて帰れないからね」
女性の扱いに慣れているのか、私を口説くように言った。
「てゆうか天気予報見てこなかったの?」
馬鹿にするような口調で太宰が言った。
「忙しかったの…」
「朝の天気からなんとなくわかるでしょ」
ギクッと体が跳ねる。
「うるさい…」
太宰のさす傘はとても高い。もともとの身長が高いからだろう。
「私身長低いしなぁ…」
ボソッと呟くとそれは太宰の耳にも届いていたようだった。
「身長高くなりたいの?」
「低いよりは高いほうが良くない?」
「まぁ、確かに」
納得したように太宰は返答する。
「彼女とか、できた?」
なんで私はこんなことを聞いているのだろう。太宰の恋愛なんて興味ないハズなのに。
「心中は毎回断られてしまってね、今はいないよ。」
あんなに女性に慣れていそうなのに、彼女が居ないなんて意外だ。
「そっちは彼氏いるの?」
「いるわけないじゃん、一生できない気がする」
「意外だね」
え?意外?今意外って言った?
「それ、褒めてんの?」
「そうかもね」
「ハッキリしてよ」
地面から周囲に漂うアスファルトの匂い。雨の日にしか感じられない独特で私の好きな匂いだ。
それと同じくらい、彼の近くにいるときしか感じられないこの匂いも好きだ。
「じゃあさ、好きな人とかいる?」
突然の太宰の質問に私は驚いた。
「好きな人かぁ…居ないかな」
「私は居るよ」
「えっ」
また驚いてしまった。太宰に驚かされるのは今日で何回目だろうか。
「だれだれ?」
私は興味津々で太宰に聞いた。
「ふふ、夢って言ったらどうする?」
「えっっ???」
固まってしまった。嬉しいのか驚いているのか自分でもよくわからない。
いや、これは喜びかもしれない。少し胸が高鳴っているのが理由だ。
ん?待てよ?そしたら両思いじゃね?
「ちょ、ちょっと嬉しい……」
私は照れながら言った。
「…………本気で言ってる?」
「え、あ、うん…………」
あ、やばいこれ。また気まずくなってきてる気がする。
……顔見るか………………
ちらっと彼の顔を覗くと真っ赤になっていた。
「驚いた?」
「う、うん」
やっと太宰を驚かせることができた。ちょっとうれしい。
「あーでも、付き合うとか言ってないし…」
「なら言うよ、好きだよ。付き合ってください。」
「よ、よろしくお願いします…」
ついに私もリア充になることができた喜びが脳を横切る。
「…カレカノって何やんの?」
「手くらい繋いだっていいんじゃない?」
太宰も驚くことができるのかと少し嬉しくなった。
この出来事をきっかけに私は雨が好きになることができた。
雨にも、太宰にも感謝している。
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