テラーノベル
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レンは崩れた壁に背を預け、脇腹の裂傷から溢れる熱を、震える指で押さえ込んでいる。
意識の淵で、冷たいコンクリートの感触だけが現実を繋ぎ止めている。
廊下の奥から響く、重く、規則正しい軍靴の音。
レンが血に濡れた愛銃を引き寄せた瞬間、影の中からシオンが静かに姿を現した。
シオン「……おやおや。死に際まで、そんなに鋭い瞳(ツリ目)で僕を射抜くのかい?」
シオンは自らの得物であるライフルを壁に立てかけ、無防備な足取りで距離を詰めていく。
彼は膝をつき、レンが構えた銃口を自らの額に押し当てながら、恍惚とした表情を浮かべた。
レン「……シオン……。死ねよ、お前……。俺を狩りに来たんなら、とっとと撃て……」
シオン「殺す? まさか。僕が求めているのは、君の命じゃない。君の絶望と、僕への依存だよ」
シオンはレンの傷口に指を滑り込ませ、溢れ出す鮮血を自らの喉元へと塗りつける。
レンは激痛に顔を歪めながらも、シオンの瞳に宿る狂気的な色に、身体の芯が震えるのを感じていた。
救われた安堵よりも、肌を這う指の執着に背筋が凍りつく。
左足首に繋がれた銀の鎖が、レンが寝返りを打つたびにジャラリと冷徹な音を立てる。
この部屋には時計も、差し込む太陽の光もない。
ただ、重厚なドアの向こうから聞こえるシオンの規則正しい足音だけが、レンにとっての唯一の時間だった。
シオン「……おやおや。目覚めてから、もう三十分も天井を見つめているね。何を考えているんだい?」
影の中から溶け出すように、シオンが姿を現した。
彼は手に持った銀の盆をサイドテーブルに置くと、椅子をベッドの傍らに引き、腰を下ろす。
一分。二分。
シオンはただ黙って、獲物を観察する猛禽類のような鋭い視線を、レンの全身に這わせていた。
レン「……視線が、うぜえんだよ。……殺し屋なら、さっさとトドメを刺せ」
レンは掠れた声で毒づき、自慢の鋭い「つり目」でシオンを射抜くように睨みつけた。
だが、その鋭さはシオンにとって、極上のスパイスでしかない。
シオンは満足げに目を細めると、冷たい指先でレンの顎を強引に掴み、自分の方へと向けさせた。
シオン「トドメ? まさか。君という最高傑作を、たかが弾丸一発で終わらせるなんて、そんな勿体ないことできないよ」
シオンは盆から、消毒用の薬品とピンセットを取り出した。
それは、レンの脇腹に刻まれた、自らがライフルで穿った弾痕を処置するためのものだ。
シオンはレンのシャツの裾を、拒絶を許さない力強さで捲り上げる。
レン「……っ、触るな。自分でやる……」
シオン「暴れないで。君が痛がると、僕の心臓が壊れそうになるんだ。……嘘じゃないよ?」
シオンはわざとらしく自分の胸に手を当て、微笑んだ。
ピンセットが傷口の奥に触れる。
鋭い激痛にレンが奥歯を噛み締め、シーツを拳が白くなるほど強く握りしめると、シオンはその苦悶に満ちた表情を食い入るように見つめた。
傷を抉るような処置の手つきは、恐ろしいほどに丁寧で、そして病的なほどに遅い。
シオン「ほら、いい子だ。……君の血は、乾くととても綺麗な赤になるね」
シオンは血に染まったガーゼを光に透かし、愛おしげに眺めた後、それをレンの頬にゆっくりと押し付けた。
鉄の匂いが鼻腔を突き、レンは嫌悪感で総毛立ち、鎖を激しく鳴らしてシオンの胸元を蹴り飛ばそうとする。
しかし、シオンはそれを予見していたかのように、レンの細い両手首を片手で一纏めにし、ベッドの頭側に叩きつけた。
レン「……離せ……! お前、マジで気持ち悪いんだよ……ッ」
シオン「嫌だよ。君がそうやって僕を罵り、全力で拒絶してくれるたびに、僕の中の何かが満たされていくんだ」
シオンはレンの喉元に手を伸ばし、脈打つ箇所を親指でじわじわと、時間をかけて押し込んだ。
呼吸を奪われ、視界が火花を散らすほどの圧迫。
レンが苦しげに顔を歪めるのを、シオンはかつて戦場でも見せたことのない甘美な微笑で見つめ続けていた。
レン「……殺せ……。こんな真似、いつまでも続くと思うなよ……」
シオン「続くよ。君がこの鎖を引きちぎる力も、外の世界へ戻る希望も、僕が一つずつ、丁寧に摘み取ってあげるから」
シオンはレンの髪を力任せに掴み、逃げ場を奪うように至近距離でその瞳を覗き込む。
出口のないこの密室で、二人の時間は濁った蜂蜜のように、どこまでも遅く、濃厚に停滞していった。
拒絶の言葉を吐くたび、鎖はより深く、魂を縛り付けていく。
憎悪と安らぎが混ざり合うこの場所で、レンは自ら、檻の一部へと変わっていく。
1話終了
稀にしかエ、ロない思ってください
暴力型ヤンデレメインです