「ここ……どこ?」重い瞼をこじ開けて昨日あったことを頭の中で再生する。
「孤児院のベッドだよ!」
「うわぁ!?」
2段ベッドの上から覗き込むように頭が話しかけてきた。
「僕モノスっていうんだ!モノって呼んでよろしく!」
軽やかに2段ベッドから降り、勢い良く手を差し出され、握手を急かしてきたのでその手に右手を差し出した途端
「よろし____」
「ねーねー君はどうして孤児院にきたの?僕相部屋って初めてなんだ!君は何歳?あぁ!もう朝ご飯に遅刻しちゃう!君も早く来なね!」
マシンガントークを繰り広げている内に、いつの間にか着替えが終わり、さっさと食堂へ走って行ってしまった。
あ…嵐みたいな子だったな。
「君食堂分かんないよね!来て!」
「わっ!」
されるがままに食堂にたどり着いた。もう皆集まっていて朝ご飯の用意をしていた。
「モノ!廊下は走らないでって言ったでしょ」
「ごめんなさーい」
「君いい所に。ちょっと来て」
「はい?」
昨日お兄さんと話していた人だ。
食堂から抜け、「相談室」と書かれた部屋に入った。
少し緊張しながら勧められた席に座った。
「君のことはルーキスさんから聞いたよ大変だったねぇ」
聞き覚えのない名前に疑問を持ちながら話を繋ぐ。
「いえ、僕が至らなかっただけですので」
「ところでルーキスって?」
「君を助けてくれたお兄さんだよ」
「あぁ!ルーキスさんと言うんですね」
「あら!その歳でちゃんと敬語を使えるのね凄いわ」
「いえ大したものでは、でもありがとうございます」
産まれてこの方褒められた事なんて両手で数え切れる程しか無いのでこんなことだけで褒められると少し恥ずかしい。
「ごめんね本題に入ろうか」
「まずここについて話すわね。ここは第二都市プレイマトール孤児院。ここにいる子は皆身寄りのない子達よ。朝は、朝ご飯を食べてそれから近所の学校に通ってもらうわ」
「分かりました」
学校という言葉に抵抗を感じる。前はいじめの標的だったのでいい思い出なんか一つも無い。
「貴方はまだ手続きご終わってなくて学校に行けないのごめんなさいね」
その言葉に少し胸を下ろす。
「大丈夫ですよ、逆にお手数お掛けして申し訳ないです」
「いいのよ、代わりに学校に行けてない子と遊んでくれると嬉しいわ」
「任せてください」
孤児院では皆が歓迎してくれて、自分を責めてくる人や、悪口を言う人、やりたくない事を強要する人が居なくて安心した。
それから数日が経ち、孤児院にも慣れてきて、ついに学校に編入する日が来た。
「ノア!まだー?」
「待ってモノ、この制服複雑過ぎる!」
まだ緊張して心臓の音が聞こえる。手も震えて上手くボタンが掛けられない。
「もうノアは僕の1個上なのにまだまだだな」
「違うよ緊張してるだけ」
「大丈夫皆優しいよ」
「そうだといいけど……」
不安が除けないまま登校することになった。
「ノアは3階だよね、僕2階だから。じゃーね」
「うん、ありがとう」
モノと離れて孤独感がノアの事を襲う。前の学校のようにいじめられないか、馴染めなかったらどうしようなど負の感情が頭を巡る。
「大丈夫?」
後ろから肩を叩かれ、その方向を向いてみると真っ黒な艶の映える天パで、悪い物を一切映さないような純青色の瞳を持った少年が心配そうにこちらを見ていた。
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