夕方。高い丘を超えた先にポツンとある公園で一人の足立が座り込んでいた。無表情な彼女の視線の先にあるのは丸まったまま動かないダンゴムシ。
レイ「観察対象の状態..静止。外界からの衝撃に反応なし。」
白い手袋をはめた指先で軽く突く。しかしダンゴムシは動く素振りも見せない。
レイ「これにより考えられる対象物の状態….
<死亡>。これより観測を開始します。」
そのまま動かないダンゴムシを数十分見つめ続けた。子供の利用するはずの公園に人影は微塵もなく、代わりに時間が経過している証である夕陽が遠く見える山に沈んでいく。その時、鳴き声もあげず飛んで来た一匹のカラス。レイに見向きもせず、そのまま動かないダンゴムシをくちばしで掴み、飛んでいった。その様子をレイは、声も出さず追う素振りも見せずしゃがんだまま見過ごしていた。
レイ「観測物の移動を確認…観測終了します。」
ようやく立ち上がった彼女は、公園の古びたフェンスの先に広がるなんともない住宅街を見下ろし、公園を後にする。
人の声の聞こえないただただ静かな住宅街を歩き、裏路地を通る。そこに放置された古びた冷蔵庫が置かれていた。必要とされなくなった電化製品。珍しい物でもないが気になってしまった。..ただ回収されるのを永遠に待ち続ける事しかできない。死んでなお誰かの記憶に残り続け、生き続ける生物。対して初めから冷たい肉体に生命など宿っていない、壊れてしまえばそれ以上の機械。手袋を外し改めて自分の手のひらを見つめる。機械的な手には温度がない。そう、自分もいつかはきっと….手袋を再びつけ、終わり無い道を歩み始める。
早く帰ろう。
コメント
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熱で熱異常の曲パロかと思ったけどレイの観察日記みたいでほんわかするなぁ…なんか小さい子見てるみたい
たまにこうやって気が向いたら短編過ぎるけど一話ずつ世界観を変えたssを乗せます。