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それから何日経った頃だっただろうか
雑音と共にモスキート音のような悲鳴が響いた
穏やかな優しい日に聴こえたそれは気圧がのめり込むようだ
男は居らず自分だけの部屋
逃げ出そうとドアに走るが脚の関節痛が酷く、がくりと斜めってしまう
涙を流そうにも頭痛がある
時刻午前11時7分
ようやく死ぬのだろうか
意識が静かに沈む頃だった
喉ぐらを掴まれそれは止む
「ねぇ」
声は震えて手汗が生暖かく滲んでいる
なのに声を絞りだしてでも口に出す
そんな男が不気味であった。
そそっかしいがこんな苦い顔は見た事すらなかった。
放った言葉はこんなものだった
「ずっと愛してる」
何故だろう男の苦しみがまとわり付いてきた
髪の毛についたガムみたいにべっとりと剥がせない
ぎゅっと男を抱き寄せた。
何故かわからない
わからないが頭を撫でた
男はそれに答えるように涙をこぼらしていた
男を握る片方の手は憎悪と苦しみで溢れている
空笑いをした
男は津田海聖という男を殺していた。
津田海聖とは近所で有名な不登校だった
聞こえたのは津田の悲鳴だろう。
血生臭い匂いと排泄物の匂いがして、眉間にしわが寄る
開いたドアに目をやると浴室に横たわっているのが隙間から見える。
きっと痛かっただろう
鼻だけが凹み、鼻血が垂れてる
男に鼻を殴られたんだ
頬はどんどん火照りを無くし汗は染み込む
心臓は大きく揺れくらんとした
冷えきった1Kのワンルーム
死んでしまった津田海聖
僕もこうなってしまうのだろうか。
不安なのかも分からなくなり極限の果てまでも幸せと感じる時間がある事でさえも辛く感じるのだろう
それともここまで来てしまったらもう感じもしないのだろうか
まるで花瓶の中の残り水で育てられたビタみたいに。
いや、動かない熱帯魚でも感情はあるのだ
ただそう見えるだけだ
その美しい尾びれの身なりは最後まで人々をザワつかせつづくだろう
それでも死んでしまったら内臓が腐敗し水面にプカプカと浮かぶ
それだけ
それで終わりだ
悲しいくらいに儚く淡い。
そして軽い死である
ぼやーんとした意識の中男とヤった
しゃぶりつかれる
そしてそれを受け入れ喘ぐ
無我夢中だった
気持ちよくなんかなかった
だが苦しさが一瞬ごくわずかに薄れるような気がした
心地よかった
行為は何時間か続いたと思う
行為の内容は忘れてしまった。