テラーノベル
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闇が、ざわりと波打つ。
無理やり引き上げられた“笑顔”が、ひび割れ始める。
引きつった口元。
動かない目。
それでも――笑っている。
「やめろって言ってんだろ!!」
ゆうなの声が響く。
その瞬間。
――コン、と。
どこかで、小さな音がした。
静かすぎるほど静かな音。
でも、はっきりと“違う”音。
にうの動きが、止まる。
つかさの目が細まる。
花子くんが、ゆっくりと振り向く。
闇の奥。
影たちのさらに奥。
そこに――
ひとつだけ、動いている“影”。
「……あーあ」
ぽつりと、声。
低くて、感情の薄い声。
「またやってる」
その影が、一歩前に出る。
光が、少しだけ当たる。
黒い制服。
俯いた顔。
手はポケットに入れたまま。
「ねぇ」
顔を上げる。
その目は――
底が見えないほど暗い。
「君さ」
ゆうなを見る。
まっすぐに。
逃げ場を与えない視線。
「誰かをいじめたことある?」
空気が凍る。
ゆうなが、息を詰まらせる。
「……な、に……」
答えられない。
その一瞬の沈黙だけで――
十分だった。
「……そっか」
小さく頷く。
「あるんだ」
決めつけるでもなく。
否定もさせない。
ただ、“そういうもの”として受け取る声。
にうが眉をひそめる。
「……誰?」
「新入り?」
その少年は、ちらりとだけにうを見る。
興味なさそうに。
「うるさいな」
「今、こっちが先」
空気が――変わる。
さっきまでの“歪み”とは違う。
もっと粘つくような、重たい圧。
花子くんが低く呟く。
「……境界じゃない」
つかさが笑う。
「へぇ」
「混ざってきた」
少年が一歩、踏み出す。
その瞬間。
――景色が、変わる。
闇が消える。
代わりに現れるのは――
教室。
でも、歪んでいる。
机が倒れている。
椅子がひっくり返っている。
床には、引きずった跡。
そして――
「やめろよ」
誰かの声。
でも、その声は届かない。
笑い声。
さっきとは違う。
もっと生々しい、現実の笑い。
「キモいって言ってんだろ」
「また来てるし」
「無視無視」
ガンッ!!
鈍い音。
誰かが、蹴られる音。
ゆうなの視界が揺れる。
「……っ、これ……」
「再現だよ」
少年――
**水稀 理玖(みずき りく)**が、淡々と言う。
「よくあるやつ」
教室の隅。
一人の“誰か”が、うずくまっている。
顔は見えない。
でも分かる。
“標的”だ。
「やめて」も届かない。
「痛い」も意味がない。
笑い声だけが増えていく。
理玖が、ゆっくりとゆうなの横に立つ。
「大丈夫」
静かに言う。
「これはね」
「加害者にしか効かないから」
その瞬間。
ゆうなの足が、動かなくなる。
「……え?」
床が、重くなる。
空気が、まとわりつく。
理玖の目が、ゆうなを覗き込む。
「ねぇ」
「どっち?」
「見てた側?」
「やってた側?」
逃げ場はない。
沈黙すら、答えになる。
花子くんが一歩前に出る。
「やめろ」
低い声。
「それ以上は必要ない」
理玖は、ちらりと見る。
「必要あるよ」
即答。
「こういうの、ちゃんと見ないと終わらないから」
にうが、くすっと笑う。
「へぇ……いいじゃん」
「それ、好きかも」
つかさは完全に楽しんでいる。
「地獄増えたね」
理玖は無視する。
ただ、ゆうなだけを見る。
そして、指を――鳴らす。
パチン。
その瞬間。
視点が変わる。
――殴られる側。
衝撃。
痛み。
息ができない。
笑い声が、上から降ってくる。
「……っ!!」
ゆうなが崩れる。
でも、終わらない。
何度も。
何度も。
同じ“場面”が繰り返される。
「意味ないでしょ」
理玖の声が響く。
「言葉なんて」
「どうせ誰も止めないし」
また、衝撃。
また、笑い声。
「だから」
「こうやって、分からせる」
花子くんの目が鋭くなる。
「……それは“救い”じゃない」
理玖が、少しだけ首を傾げる。
「うん」
「知ってる」
あっさりと言う。
「これは復讐だから」
理玖の目が、わずかに揺れる。
「……変わるよ」
小さく言う。
「少なくとも」
「やったやつは、忘れない」
静かな怒り。
消えない感情。
ゆうなが、歯を食いしばる。
「……でも……」
立ち上がる。
ふらつきながら。
「それで……終わりじゃねぇだろ……」
沈黙。
花子くんが、少しだけ笑う。
「おっ、、盛り上がってる」
つかさがニヤリとする。
「面白くなってきた」
にうは、じっと理玖を見る。
理玖は――
初めて、ほんの少しだけ迷う。
そのとき。
教室の奥。
うずくまっていた“影”が――
ゆっくりと、顔を上げる。
まだ笑っていない。
でも。
無理やりでもない。
ただ――
“見ている”。
誰かを。
そして。
小さく、声が漏れる。
「……やめて」
今度は――
届いた。
空気が、変わる。
理玖の目が、大きく見開かれる。
「……え」
初めての“想定外”。
ゆうなが、息を整えながら言う。
「……それ……聞こえたなら……」
一歩、前に出る。
「まだ終わってねぇだろ」
静寂。
にうも、つかさも、花子くんも――
誰も動かない。
ただ、その“変化”を見ている。
理玖の手が、わずかに震える。
そして――
ぽつりと。
「……うるさいな」
でも、その声は。
さっきよりずっと――
弱かった。
闇と再現と歪んだ優しさ。
全部がぶつかる中で。
もう一つの“物語”が、確かに動き出していた。
見てくれてありがと
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コメント
5件
(初コメ)内容が最高です!お気に入りに登録したいぐらいですね!笑(?)続き待ってます!(一応: ちなみに僕、楓華だよん。知らなかったらコメント消すね)
すっご!!文才すげぇね!!僕のキャラもちゃんと掴めとるし!最高!続き楽しみに待ってるよん♪
え?やば!天才じゃん! 続き楽しみに待ってるね!