テラーノベル
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「大森さん入られまーす!」
画面で見る煌びやかな世界とは裏腹に
目の前の大人たちのプレッシャーがのしかかる。
しかし、それを乗り越えてこそプロなのだ。
”年齢不詳の魅惑の大スター”としての。
「大森さんよろしくお願いします」
「えぇ、お願いしますね、笑」
今回のバラエティーの収録は
10代から俳優を続けている元貴にとって
若い子たちが多い。
そのため入れ替わりで
次々とキャストさんが挨拶に来る。
しかもものすごく恐縮して。
僕、そんなに怖いかと不安になるほどに。
それをなんとなく受け流していると、
ふと目に留まる人がいた。
「ぁ、あの、
大森さんが大好きで芸能界に入ってきたんです」
そう言ってきたのは肩に着くくらいの髪を
綺麗に結ってあって、すごく不安そうな男性。
「……藤澤さんですよね、笑、
ありがとうございます」
「、僕の名前、!」
「出演者さんには目を通しますよ、
今年映画にも出られてましたよね」
「っ~~/// そう、です」
感情に素直な表情に、一途で素敵な藤澤さん。
なかなかこの業界にはいない純粋さ。
「ぁ、収録はじまりますって、いきましょうか、」
「っはい!」
「___はいッ、今回も始まりました、
大人気芸能人の今更知れないことから
コアな細かい情報までお伝えしていく
この番組!!!!」
「ゲストはこの方々です!!」
ゲスト席から司会の声と
何台ものカメラを見つめる。
バラエティーは結構好きなほうだ。
……炎上はしやすい部類だけど。
そんなことを考えていると随分話が進んでいた。
「___藤澤涼架さん、大森元貴さんです!」
名前を呼ばれたとたんにいつものように
ファンが好きな笑顔を浮かべる。
「よろしくお願いします、笑」
「大森さんまさかこの番組に来てくださるとは、」
「いやいや恐縮ですが…、」
「しかし実際に会ってみると
オーラがすごいですね!」
あぁ、僕が主役になっている。
こういうのが共演者から
嫉妬を買うことになるというのに。
「そういえば、藤澤さんの情報、
僕気になりますね」
「っ、僕ですか!?」
「はい、笑、その僕です」
「ではですね、その藤澤さんの情報から
見ていきましょうこちらっ!」
司会がカーテンをめくると出てきたのは
藤澤さんの年表と経歴。
藤澤さんはこういうのに慣れていないのか
もじもじしている。
「はい、!まず藤澤さんが
俳優を志したのはいつ頃ですか?」
「ぇーっとですね、僕は学生のころ部活もなにも
やってなかったので早帰りだったんですけど、」
「そのときテレビで見てた
ドラマでかっこいいある人に憧れてって感じです」
「そのある人、というのは……?」
恥ずかしいのかなんなのか、
下唇をかんでちらちらと見てくる。
いや、藤澤さんが言ってよ。笑
「…大森元貴さんです、」
「ぁっ!大森さんですか!
このことはご本人知っていましたか?」
「えぇ、収録前の挨拶のとき
顔真っ赤にしながら教えてくれました、笑」
「やめてくださいっ/// はずかしぃ、」
そのあともほかの出演者さんの情報を見ていき、ついに僕の番になる。
「それでは最後に大森さんの
情報見ていきましょー!」
そこには人一倍大きいボード。
出演作全部書いてたら入りきらなかったんだろう。
今年ドラマ・映画含めて8本くらい出てるし。
CMも山ほど。
「いや、これまたすごい!
今年も凄い活躍ぶりですね!
大森さん、ここに書かれていないことで
なにかありますか?」
「んーっと、今まで言っていないことで言うと、
最近犬ころを飼い始めました、笑」
「なんと!大森さんは犬派ということで!」
「そこですか、笑」
このやり取りでスタジオは笑いに包まれる。
「ですが大森さん、わんちゃんお世話も
してるんですか、お忙しいのに!」
「僕のほうでもしてますけど…、
多忙なときも多いので友人に任せてるところも
ありますね、」
「……友人」
藤澤さんがオウム返しのように唱えて、うつむく。友人なんて普通だろう。それとも嫉妬心?
「……藤澤さん、僕の友人がどうかしました?笑」
「ぁ、えっと、」
「うん?」
「……それって、若井さんですか」
「若井!」
家につき早々叫ぶと、出てきたのは名の通り若井。
「なに?笑 俺がかっこよすぎた?」
「……僕、ストーカーに会ってるかも」
そう言うとふたりの間に痛いほどの沈黙が現れた。
若井にとって僕が危険な目に合うのは、
命と同じくらい嫌…らしい。
「おい、そいつ誰、すぐ警察に__
「ちょ、ちょっと待って!」
「いやいや、元貴危険じゃん!!」
元貴は一回息を整え、若井に向き合う。
「……あのね、今日共演者に
藤澤さんって人がいたの」
「うん、」
「その人が僕の友人の話になった時に
若井の名前知ってて…」
今の話を聞いて、悔しそうに顔をゆがめる若井。
実は若井は当初僕の芸能活動に反対していた。
それは元貴を思っているからこその答えで。 そのとき元貴が言い出した言葉は 今も若井に刻まれている。
『僕は自分の気持ち感情に任せたいんだ』
元貴らしい抽象的な考え。
若井は元貴のその自由な生き方に惹かれた。
「……わかった、なにかあったらまた言って」
「うん、」
若井の険しい顔が、最後まで離れなかった。
俳優パロ
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