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その後、エトルリア帝国の各地で異変が立て続けに起こった。
人里離れた辺境、山奥、沼沢地、河川あるいは迷宮の奥深くに身を潜めているはずのドラゴン達が次々と姿を現し、天空から出現した光輝く存在と戦いを繰り広げ続けたのである。
ドラゴンたちは翼を持つ光り輝く存在が己の敵であることを明確に理解しているようであった。
彼らは全生命の頂点に立つ存在としての誇りにかけて雄々しく戦った。
個体であれば、間違いなくドラゴンの強さは光り輝く存在を圧倒しているだろう。
だがこれまで例外なく光り輝く存在は群れで出現し、力を合わせてドラゴンに立ち向かって行ったのである。
その為これまでほぼ確実にドラゴンは倒されて行った。
そしてドラゴンが倒れると、光り輝く翼を持つ存在はそのついでと言わんばかりに周囲の人間、あるいは亜人種や魔物であっても無差別に襲い掛かっていった。
彼の存在に知性があるのは明らかであったが、その攻撃性、凶暴さは異常と言うしかなく、全く対話や交渉が成り立たないのが不気味であった。
このような存在は他に例がないと言うしかない。
知性がある魔物であってもやはり殺戮本能、攻撃性が極めて強く、人類とは精神構造、価値観が全く違う為交渉決裂する場合がほとんどであるが、それでも会話はある程度成り立つ。
しかし彼の存在は人類と交渉や会話をする意思は皆無であるようであった。ただ攻撃し殺戮する対象としか見なしていないようである。
魔術師ギルドは人類の、いや地上に住まう全ての生命の敵対種である天空から現れ出でる光輝く翼を持つ存在を「天使」と名付け、その正体と対処方を探るべく総力を結集し研究に励んでいるようだが、未だ答えは見つからないようであった。
無理もないと言えるだろう。天使は生け捕りにすることは不可能と言うしかなく、死ねば痕跡を残さず消滅する為死体を解剖することも出来ないのだから。
数年ぶりのファ―ルス村での休息を諦めることを余儀なくされたフリードは最も近い都市であるレーアの町に行き、そこを彼の存在と戦う拠点とした。
そしてドラゴンと「天使」の出現の報告を聞くと、フリードは他の冒険者や傭兵を引き連れて討伐へと向かった。
「ドラゴンがまだ各地でこれほど潜んでいたとは」
フリードが驚いたのはまずその点であった。人類より遥かに寿命が長く、また天敵が存在しない為ドラゴンは眠りが深く、数十年も眠ることも珍しくないという。
その為滅多に人類と遭遇することがないのである。
だが彼らは天使の襲来を予期して次々と目覚めているらしい。
ドラゴンは天使の正体と目的を知っているのではないか。
(そして天使が出現したのは俺たちが竜王を倒したことが原因なのではないか?)
そう考えながら馬を走らせていたフリードの前にやはり騎乗した一行が現れた。
全員で二十名程であろうか、彼らはいずれもそろいの甲冑を身に纏い、その胸元には金色の羊の紋章が光っていた。
エトルリア帝国が誇る三大騎士団の一つ、金羊騎士団である。
彼らもやはり天使と戦っており、フリードと同じ目的地に向かっているのだろう。