[似ているのは、誰?]
リビングのソファで、若井は息子を膝に乗せ、ゆったりとゆれていた。
息子はすっかり寝息を立てており、愛犬ミロ(二代目)がその足元で丸くなっている。
涼架が温かいココアを二つ持ってきて、隣に座った。
「あなた、またそんなに揺れてたら、また、響(ひびき)を甘やかすことになるわよ」
涼架がココアを若井に渡しながら、笑って言った。
「いいだろ、たまには。それに、この時間が俺の癒やしなんだから」
若井はココアを一口飲み、満足げにため息をついた。
涼架は、眠っている響の顔を優しく撫でた。
「ねぇ、本当にこの子、あなたにそっくりよね
特に寝顔」
「え、どこがだよ。俺はもっとクールだろ」
若井が口を尖らせると、涼架はくすくすと笑った。
「そうじゃなくて。こう、ちょっと口元が緩んでら感じ。あと、寝てても眉間に皺がよってらのは、絶対にあなた譲り」
「なんだと!それは、俺がいつも真剣に曲作りのこと考えてる証拠だ」
「はいはい。でも、ピアノを弾いてる時の指の形は、私に似てる気がするの」
涼架はそう言って、響の小さな指に触れた。
「確かに、そこは涼架に似て繊細かもな。俺みたいに力任せじゃない」
「でもね、一番似てるのは、あのね…」
涼架は言葉を区切り、若井の顔を見た。
「不器用なところ」
若井は一瞬固まったが、すぐに吹き出した。
「おい!それ、どういう意味だよ!」
「だって、そうでしょ?好きな気持ち隠すために、変なちょっかい出しちゃうところとか。この前も、幼稚園の女の子のお弁当のおかずを、わざとひっくり返しちゃったらしいわよ」
涼架はそう言って、若井を小突いた。
「うわぁ…それは、俺の遺伝子だわ。間違えない」
若井は苦笑いしながら、響をそっと抱きしめた
「でもね、滉斗。そう言うところも、私は好きよ」
涼架は、そっと若井の肩に寄りかかった。
「本当に大切な人だから、素直になれない。不器用だけど、誰よりも温かい。それは、あなたのおじいちゃんから受け継いだ、最高の贈り物だもの」
若井は、涼架の言葉に何も言わず、ただ、彼女の頭を優しく撫でた。
「そうだな。このおとぎ話みたいに、この子もいつか、自分の『運命の女神さま』見つけるんだろうな」
「ええ。そして、その時が来たら、私たちは笑って送り出してあげましょ。だって、私たち『さよならの意味』知っているんだから」
暖炉の火が静かに揺れるリビングで、二人は顔を見合わせ、温かく微笑みあった。
彼らの物語は、今、静かに次の世代へと受け継がれていく。
番外編!!読んでいただきありがとうございました♪
「norn」を元に作ったお話なのでぜひ聴いてみてください!
コメント
4件
やん♡素敵な家族だこと🫶🏻💕 響の遺伝が若様そっくりで可愛い笑 完結ありがとうございました!
ホントになんでnornでこんな神作作れるんですか?すごすぎます