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【登場人物】女2人 男2人 ナレーター何人でも ???(誰かわからん人)
女2などの名前は好きに決めてもらって大丈夫です!
声劇フリー台本です!
女1
ねえ、肝試しいこうよ
何気ない友人の提案から全てがはじまった。
八月。 夏休みというものは想像以上に長い。 どこに行ってなにをするのも自由だ。 暇を持て余すのは必然だった。
女1
女2の地元に超有名な心霊スポットあるって話してたじゃん。 そこいこうよ
男1
それ「神隠しトンネル」 だろ。 ネットで超有名な
男2
塞がれてるはずのトンネルの片側が開いていたら、 異界にいけるって都市伝説だっけ?
男1
そうそう。 トンネル建設の邪魔だからって潰された村の祟りって噂だろ
女2がメッセージに気付いたときには既にグルー プチャットは心霊スポットの話題で持ちきりになっていた。
女2
ごめん、今気付いた
男2
おっ、 待ってました!
女1
女2、 もうすぐ実家帰るって言ってたじゃん。 ついでにそこ案内してよ
女2
やめたほうがいいよ
そこ、地元の人は絶対に近づかない。 近づいちゃダメっていわれてるから
男2
うわw
これは都市伝説の信憑性増してきたね
女1
案内してくれるだけでいいの! トンネル入るのは私らだけでいくから! ね 、お願い!
男1
付き合ってくれるお礼に家まで送ってくからさ!
女2
(どうしよう……)
女2の反対を押し切り、 友人たちはすっかり肝試をしにいく気満々になっている。 流れていくトークを見ながら女2はスマホを握りしめ、 ため息をついたのだった。
男2
やってきました~神隠しトンネル!
三日後の深夜二十三時。
女2を含めた男女四名は山中のトンネル前に立っていた。
街灯一つない山道。ナビ上はいき止まりになっているが、目の前にはおどろおどろしいトンネルが佇んでいた。
軽自動車が一台やっと通れそうなほどの狭いトンネルの入り口は申し訳程度に錆びた一本のチェーンで塞がれている。 車のライトでトンネルの奥を照らしてもなにも見えない。
じっとりとした夜の熱気と、 蛙や虫のうるさい鳴き声が不気味さをさらに駆り立てていた。
男1
じゃ、 早くいこうぜ
女1
男たち、 二人して逃げたりしないでよね
入り口で立ち竦んでいるゆづるを置いて、 三人はさっさとトンネルの中に入ろうとしていた。
女2
ねえっ、 本当にいくの!? やめたほうがいいよ!
女1
ここまできて引き返すわけないじゃん。 女2は本当にビビりだよね
男1
待ってていいよ。 元々女2は案内だけの約束だし
男2
すぐ帰ってくるからさー
女2の制止を振り切り、 三人はスマホのライトを 頼りにトンネルの奥へと進んでいく。 最初は中から彼らの楽しそうな声が反響して聞こえてきたが、そのうちなにも聞こえなくなった。
女2
なんでこんなことに…
一人残された女2は不安を滲ませながらトンネルの奥をじっと見つめていた。
鼓動が速まる。 背後から気配を感じて振り向いたが気のせいだった。
底知れぬ不気味な気配と恐怖感に襲われるのは、こんな真夜中に人気のない山奥にある最恐の心霊スポットの前に立っているせいだろう。
???
このトンネルに入ると神隠しにあうから近づいちゃダメなんだって
子供の頃、一度だけ探検と称してこのトンネルに来たことがあった。
なにも知らずに中に入ろうとしたら止めてくれた少年がいたことを、 女1はぼんやりと思い出した。
???
この奥には昔村があったんだって。でも トンネルが塞がれたから、もう誰も入れないんだ
少し年上の頼れるお兄ちゃん的存在だった。 物知りな彼は、手を繋ぎながら色々なことを教えてくれたっけ。
とても優しくて、 幼心に憧れを抱いていた。 でも、今はもう彼の名前も顔もよく思い出せない。
女1
きゃあああああっ!
その時、トンネルの奥から友人の悲鳴が聞こえた。
女2
女1!?
トンネルに向かって名前を叫んでも返事はない。 いつの間にかうるさかったはずの虫たちの声が消え、辺りはしんと静まりかえっていた。
女2
女1、男1、男2! 大丈夫!?
もう一度叫ぶが返事はない。 鳥肌が立ち、冷や汗が噴き出す。 不安と恐怖で心臓はうるさいくらいに音を立てた。
女2
どうしよう、どうしよう
警察に連絡するべき? でもここに来るまでかなり時間が必要だ。
それに、肝試しに来たなんていったら迷惑がられるに決まっている。
スマホを握りしめ一分、二分過ぎていく。
だが待てど暮らせど友人たちは戻ってこない。 こうなったら助けを呼ぶよりも、 自分がいったほうが早いはずだ。
女2
行くしかない。 私が行くしかない…… 大丈夫、怖くない
手が震えていた。 外は暑いはずなのに、 歯がガチガチと音を立てる。
???
神隠しにあったら、向こうの世界に閉じ込められたまま帰ってこれないんだ
って頭の中に蘇るいつかの少年の声を振り払い、 女2は思い切ってトンネルの中に駆け出した。
女2
(走って、 女1たちと合流して……すぐ、引き返す!)
トンネルの奥はいき止まりのはず。 だからこうして 走れば絶対に友人たちに追い付くはずだ。 ゆづるは極力周りは見ないようにして、 足元だけを見つめていた。
自分の足音だけが反響している。 しばらく走ったけれど、 友人たちはまだ見つからない。
女2
ねえ、みんなどこにいるの!?
女2は泣きたくなった。
肝試しなんて碌なことがないんだから、 絶対に行きたくなかった。
友人たちのせいでもあるが、 押しに弱く彼らを止めきれずついて来ることしかできなかった自分を悔いた。
女2
帰ったら絶対ラーメン奢ってもらうんだから!
恐怖を怒りに変え、 女2は走った。 その時、正面からぶわりと強風が吹き付けた。 土埃に一瞬目を閉じる。
あれ、なんで正面から風が? このトンネルは片側が塞がれているはずなのにーー。
女2は目を疑った。
見えないはずのトンネルの出口が見えたからだ。 その向こうには真っ赤な夕焼け空が見え、風が吹き付けている。
まるでなにかに導かれるように女2が足を動かすと、出口はどんどん近づいてくる。 そして彼女は友人とすれ違うことなく、 とうとうトンネルをくぐり抜けてしまった。
片側が閉じられているはずのトンネルの向こう側
– そこには夕焼けに染まる不思議な世界が広がっていた。–