「悠〜、中間、何位だった?」
「、、、あー。」
「、、、なんて?」
「、、、お前から言えよ」
「ええ〜、自信ないのか?」
「で、何位?」
「、、、」
「お前も自信ないのかよ」
、、、えー、僕は悠。現在、1学期中間試験の結果発表日。ぼちぼち夏だ。隣にいる友達は真守。
頭は悪いけど運動神経抜群。顔も整っている。なんかこの間女子に告白されていた。
羨ましくは、ない。
「、、、12位。」
「うっわめっちゃ高いじゃん、俺なんて89位だぜ?自信持てよお」
「真守だって体育の成績は5だろ、それに89位は赤点じゃないし。十分凄いじゃん」
「ははっ、ありがとうございますう」
真守は、僕よりコミュ力も高くて、みんなに好かれるタイプだと思う。女子にもモテるし。その割に恋愛に興味がないんだから、ますます憎たらしい。
「一位は、、、まあ言わずもがな鈴原だろ」
「、、、うん」
「凄いよなあ、美人だし、頭良いし、運動できるし、性格いいし。」
「ほんと、羨ましい、、、。」
「お、もしかして、あいつのこと好きなの?」
「、、、」
「黙ってるってことは、イエスだな」
「黙っとけ」
鈴原凛。同じクラスの女子だ。僕は彼女のことが、好き、、、だ。ふとした時に彼女の、髪の毛が揺れるのを見て、首筋がくすぐったくなるような、、、。取り柄のない僕とは違うとつくづく思う。
時は放課後☆
放課後、校舎の屋上で小説を読む。真守は運動部に所属しているから、それが終わるまで本を読んだり勉強したり校庭を眺めたりして時間を潰す。部活が終わったら真守が屋上まで迎えに来る。
大体読むのは青春もの。自分が学生だから想像しやすい。背中から下校する生徒たち、陸上部の掛け声、空気の振動が僕の意識をその一文字一文字に混ぜ込む。
「ガシャ」
「「、、、あっ」」
真守かと思ったら、まさかの鈴原。目があって、首の根っこから脳みそへ痺れた。雲の様に白い肌を見て、自分の顔を覆い隠したくなったが、彼女の視線に射止められてうまく動けなかった。
「ごめん、邪魔しちゃった?」
「いや、俺は大丈夫。鈴原も、屋上に用事あるのか」
平静を装う。
「うーん、ただ暇だから、ちょっと散歩してたの。この場所良いな、眺めが素敵。」
校庭に面している側の柵にもたれている僕の隣に来て、噛み締めるように言った。
ほんの少しの沈黙が流れ、話題を探す。
「えっと、、、そういえば、中間試験の結果、一位だっただろ。おめでとう。」
「ありがとう。悠くんも、、、えーと、12位だったじゃん、十分凄いよ。」
「そんなことないよ、僕なんて勉強しても勉強してもこれより高い点数が取れないんだ。鈴原はホント、なんでも持ってるよ。羨ましい。隣の芝生は碧いどころか、花まで咲いてそうだ。」
本心だった。自分を言葉に起こすたび、それが後ろめたくなる。
「、、、そんなことないと思う。私は確かに成績が良いけれど、悠くんみたいに頑張れない。私が才能を持っていると言えばそれで終わりだけれど、悠くんの努力家なところ、とっても素敵だと思う。色んな色の芝生があっても良いのよ、たとえ芝生が綺麗でなくても、家やペットは綺麗かもしれないし。」
「何も綺麗じゃ無かったら?」
意地悪な質問だった。好きな人に悪態をついてしまうなんて。卑屈な自分を恨んだ。
「そんな人はいないと思う。自分を過小評価しすぎ。寧ろそんな人は自分を追い詰められる、成長できる人よ。きっと全部汚い人はそのことにすら気づかない。」
僕よりも何倍も頑張ってるだろうに。お世辞だと心臓を落ち着かせようとするが、体に血がめぐって紅潮する。熱を冷まそうと顔を上げて風を受ける。
「、、、ありがとう。」
「、、、それにさっき、私は何でも持ってるって言ってたけど、一つ、持ってないものがあるわ。」
「、、、何?」
まさか。鈴原にもそんなものあるんだ。
「悠くんの心と、それを伝える勇気、、、かなあ。」
えっ、、、、まさか。
発せられた一文字一文字が僕の脳みそに届く。外の音が邪魔なほどに。
少しだけ紅くなった彼女は小走りで階段へ続くドアへ向かう。
最後に
「でも、勇気はもう持ってるかも!」
と、振り返って言った。
「やっぱり、何でも持ってるじゃん、、、」
彼女が素敵だと言った景色を眺めると、雲が夕焼けを反射して赤く染まっていた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
こんにちは、1ヶ月ぶりです
はじめての恋愛ものですねー
一ヶ月に一回くらいの頻度を目指します!
👋
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!