コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
体を引き摺りながら黒風はやっとの思いで猪八戒の元に取り付いた。
「はぁ…、はぁ…。猪八戒さんっ!!」
ぬぷっ…。
ぬぷぷぷぷっ…。
黒風は猪八戒の体を抱き上げながら、腹に刺さった尖った岩を抜いた。
「はぁ…。こく…ふう?悪いな…。」
「はぁ…、はぁ…。良かった…。」
猪八戒の腹の傷は少しずつだが、閉じて行っているのが分かった。
猪八戒は荒くなった息のまま体を起こし、鉄で作った刀を手に取った。
「猪八戒さん!?何してるんですか?!」
「何って、加勢しに行くに決まってるだろ。」
「む、むちゃですよ?!そんな、ボロボロなのに!!」
黒風の言葉を無視して、猪八戒は走り出した。
玉の姿を見つけた哪吒は、玉の方に飛んだ。
ビュンッ!!
勢いを付けた哪吒はそのまま太刀を玉に向かって振り下ろした。
「た、玉!!」
哪吒の気配を感じた三蔵が玉を庇おうと哪吒の前に出た。
その光景を見た悟空が器用に足を使って、転がっていた剣を持ち上げ、少し剣を上げ回し蹴りをしながら剣を蹴飛ばした。
ビュンッ!!
キィィィン!!
「っ?」
哪吒は突然、飛んで来た剣を弾きながら近くにあった岩に足を下ろした。
そのまま剣が飛んで来た方向に視線を向けた。
「「っ!?」」
目が合った悟空と哪吒は驚いていた。
悟空と哪吒はかつて、500年前に訪れた海の中の宮殿で出会っていた。
悟空は哪吒の顔を見てすぐに思い出した。
哪吒は宮殿の時と悟空の審判の時にも会っていた。
「お前、あの宮殿にいた…。」
「っ…。」
声を掛けて来た悟空から哪吒は視線を外した。
「哪吒!!!」
「っ!!」
石の声を聞いた哪吒はハッとして遠のいた意識を取り戻した。
「哪吒、経文は目の前です!!さっさとあの狐を殺して経文を引き摺り出しましょう。」
「そうはさせるかよ!!」
石の言葉を聞いた沙悟浄は、石に向かって鏡花水月を振り下ろした。
キィィィン!!
「ッチ。鬱陶しい奴だな、妖って奴は!!」
「経文が何かは知らねーけどな…。玉を殺す気なら先に俺がお前を殺す。」
「邪魔をするなら殺すまで。来いよ、相手してやる。」
石はそう言って、指をクイクイと動かした。
「調子に乗るなよクソガキ。」
キンキンキンッ!!!
沙悟浄と石は目に見ない速さで、刀を振るっていた。
側から見たから互角だと思われるが、沙悟浄の体の方が斬り傷が多かった。
石の方は服が破けただけで、傷は負っていなかった。
ガンッ!!
フラ付いた沙悟浄は刀を地面に強く突き刺し、体勢と息を整えていた。
「はぁ…、はぁ…。」
「いや、いや!!捲簾!!」
沙悟浄のボロボロの姿を見た玉は、沙悟浄の元に行こうとしたが、三蔵が強く抱き締めて動きを止めた。
「行っちゃ駄目だ玉!!」
「離してっ、離してよ!!」
「玉を行かせちゃ駄目な気がするんだ!!」
「…え。」
「ゴォォォォォォォ!!!」
倒れていた鯰震が口を開けて玉の方に向かって来たと同時に哪吒も太刀を構えて向かって来た。
三蔵もエアガンの形になった霊魂銃を構え、鯰震に銃弾を放った。
ドドドドドドドッ!!
何故なら悟空が如意棒を使って哪吒の攻撃を受け止めていたからだ。
キィィィン!!!
悟空はそのまま哪吒の脇腹に蹴りを入れ、三蔵達から引き離した。
ドォォォーン!!
蹴りを入れられた哪吒は大きな岩に激突した。
「哪吒!!?貴様ァァァァ!!!」
怒りに満ちた石が悟空に向かって来た。
石の姿を見つけた悟空は素早く指を動かした。
「ノウボウアラタン、タラヤアヤサラバラタリアサタナン。」
そう言って悟空はパンッと音を立てて合掌した。
石が悟空に向かって刀を振り下ろした瞬間。
キィィィン!!
光の大きな壁が現れ、石の攻撃を弾いた。
「障壁(ショウヘキ)術!?ど、どうして、妖のお前が使えるんだ!?」
「あ?お前に関係ねーだろ。俺にばっか気を取られてていーのかよ。」
悟空はそう言ってからニヤリと笑った。スッ。
「っ!!」
気配を感じた石は慌てて振り返ると、猪八戒が鉄の刀を振り上げていた。
「遅せーよ、ばぁーか。」
「っく!?」
ズシャァァァァア!!
石の背中を猪八戒が斬り付けた。
「ぐぁぁぁぁああああ!!」
霊魂銃の弾を受けた鯰震が叫びながら海に倒れた。
ザパァァァァアン!!
大きな水飛沫が立った。
「くっそがぁぁぁぁあ!!」
石は振り返り、猪八戒の肩を斬りつけた。
グシァァァァァァァ!!
「ぐあぁぁあぁぁぁぁ!!」
「猪八戒!!!」
後ろに倒れそうになった猪八戒の体を沙悟浄が掴んだ。
ガシッ!!
沙悟浄はそのまま猪八戒の肩を抱きながら、石の肩に刀を振り下ろした。
グシァァァァァァァ!!
「うがぁぁぁぁぁぁ!!」
石の叫び声が響き渡った。
「ったく、ボロボロなのに無茶してんじゃねーよ。」
「はっ、お前に言われたくねーよ。」
「前にもこんな事あったのか俺達。」
そう言って、沙悟浄は猪八戒を見つめた。
猪八戒はフッと笑って「腐る程。」と答えた。
「ガァァァァァァァァ!!!」
ビリッ、ビリビリビリ!!
海から出て来た鯰震の体は真っ黒に染まっていた。
それと同時に地鳴りと電流が走った。
「この匂い…。牛魔王のっ!?おい!!三蔵!!気を抜くんじゃねーぞ。」
悟空はそう言って、如意棒を回し構え直した。
「何か様子がおかしい…?」
「大きい攻撃が来るわよ坊や。」
三蔵の言葉を聞いた玉はそう答えた。
それを悟ったのは沙悟浄もだった。
「陽春、緑来!!動けるなら気を張れよ!!」
「「了解!!」」
沙悟浄の言葉を聞いた陽春と緑来は姿を影と煙に変え、警戒体制になった。
「石、いつまで寝ている。」
哪吒の声が聞こえると、地面に転がっていた石の指がピクッと反応した。
カツカツカツ…。
無傷の哪吒が鯰震の前で足を止めた。
スッ。
哪吒は、鯰震に背中を向け、太刀を掲げた。
ゴォォォォォォォ!!
ドゴォォォーン!!
太刀に電流が纏った。
「石、お前はそのまま寝ているつもりか。」
石はムクっと起き、哪吒の前に膝を付いた。
「すみません。治癒に時間が掛かりました。」
猪八戒と沙悟浄が負わせた傷は石の体にはなかった。
「なっ!?傷が治るの早くないか!?」
石の体を見た猪八戒は驚きのあまり叫んでしまっていた。
「アイツ等は半妖だけど、ただの半妖じゃねー。何らかの力なのかそれとも…、別の…。」
「半分に分断する。石、お前は残った方をやれ。」
「承知しました哪吒太子。」
ビュンッ!!
ドゴォォォーン!!
哪吒が大きく太刀を振るうと地面が2つに割れ、悟空達は飛んで太刀の攻撃を避けた。
「うおっ!?」
「危なっ!!!」
そう呟いたのは、沙悟浄と猪八だった。
沙悟浄は猪八戒の体を支えつつ、哪吒の攻撃を避けていた。
「死ね、妖怪共。」
地面の破片に混じれて石が2人の背後を取っていた。
地面に着地していない2人は、石が後ろにいる事に気が付いていなかった。
シュシュシュシュッ!!
白い煙と共に、短剣が石に目掛けて飛ばされた。キンキンキンッ!!
石は短剣を素早く弾き飛ばし、煙を斬った。
シュルッと刀から擦り抜けた煙は石を大きく包んだ。
シュシュシュシュッ!!
煙の中に閉じ込められた石は、視界が不自由な中、飛ばされれてくる短剣をひたすら弾き飛ばした。
石の前方には猪八戒、背後には沙悟浄がいた。猪八戒は鉄の刀からいつもの銃に変え、沙悟浄も鏡
花水月を構え直した。
スッ。
2人は一斉に石に向かって走り出した。
タタタタタタタッ!!
2人の気配に気が付いた石は、沙悟浄の攻撃を受け止めつつ猪八戒に蹴りを入れた。
パンパンパンッ!!
猪八戒が放った銃弾を避けつつ、沙悟浄に向かって刀を振り下ろしたが手応えを感じなかった。
沙悟浄は鏡花水月の技を使いながら石に接近し、攻撃を仕掛けていた。
そんな沙悟浄の援護するように猪八戒は銃を使い攻撃している中で、哪吒が玉に向かって行っていた。
カツカツカツカツカツ!!!
哪吒が物凄い速さで玉の元に駆け寄り、左脚を斬った。
シュンッ!!
「うっ!!?」
「玉!!半妖に聞くか分かんねーけど…っ!!」
ドドドドドドドッ!!
エアガンの形になった霊魂銃を連弾した。
哪吒は霊魂銃の弾を避けながら、再び玉を斬り続けた。
三蔵は指を素早く動かした後、九字に指を切った。
すると、玉を囲うように大きな結界が張られた。
「玉!!大丈夫か!?」
「だ、大丈夫よっ…。それよりも…。」
玉はそう言って沙悟浄のいる方向に視線を向けた。
ビュンッ!!
哪吒に向かって如意棒が飛んで来た。
悟空の隣にいは陽春がおり、陽春の足元から影が延びていた。
ピクッと哪吒の眉毛が動いた。
陽春の姿を見た哪吒は、不機嫌な表情を見せた。
「少しは俺の役に立てよ女。」
「女じゃないわよ!!陽春って名前があるんだからね!?あの女を殺さないと気が収まらないんだから。」
そう言って陽春は哪吒を睨み付けた。
「…。邪魔だな女。」
ビュンッ!!
哪吒は陽春に向かって走り出した。
物凄い速さであっという間に陽春の目の前まで距離を縮めていた。
悟空は咄嗟に陽春の手を引き、自分の後ろに下がらせ如意棒で太刀の攻撃を受け止めた。
キィィィン!!!
ギリッギリ…。
「お前っ、コイツに何かしたのか?!むちゃくちゃ怒ってんだけど!?」
「し、知らないわよっ!!」
カツンッ!!
陽春の影が哪吒に向かって棘を飛ばした。
キンキンキンッ!!
哪吒は太刀を巧みに操り影を弾きつつ、陽春の腕を斬りつけた。
「ぐっ!!」
ドドドドドドドッ!!
三蔵も哪吒に向けて霊魂銃を撃ち続けている中、突然聞こえて来た叫び声で地面が揺れた。
「ギャアアアアア!!!」
ボコッ。
ボコッ、ボコッボコッボコッボコッボコッ!!
鯰震の体がボコボコと音を立てながら跳ねていた。
まるで体の中で何かが暴れているようだった。
悟空はその光景を見て、直感が確信に変わっていた。
「お、おい、あの鯰どうしたんだ?急に苦しそうにしてるんだけど。」
三蔵はそう言って、悟空に尋ねた。
「アイツが六大魔王だって言っただろ。牛魔王の血を飲んだ末路だ。」
「ま、末路って…?」
「牛魔王の力は強大なんだよ。そんな血を飲み力をつかったから体が拒否する。それだけだ。」
鯰震の体がドロドロになり黒い泥がポタポタと地面に落ちた。
「グァァァァァァァァァァァ!!!」
理性を失った鯰震は悟空達に向かって大きく口を開け、ジタバタと地面を這いずりながら向かって来た。
「とにかくアイツは苦しんでるんだよな。」
「まっ、そうなるな。」
三蔵の問いに悟空が答えると、三蔵は札と数珠取り出した。
「神に使えし物は苦しんでる奴を解放してやるのが仕事だ。俺はアイツを祓うぜ悟空。」
そう言って、三蔵は鯰震に向かって札を飛ばした。