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──────────目を覚ました。液体の中に浮かんでいるのだろうか。身体が軽かった。目の前には人間達が何人も集まってカルテを見ていた。薄ら目に入った其のカルテには私の名前だろうか『ウォール』と記載されていた。ある1人の男が近寄って来た。なんだろうと考えて居ると其の男は自分の入っているカプセルのガラスに手を付けては何かを話して居るようだった。その時は理解出来る程の知能は無かった為不思議と其れを見て首を傾げる他無かった
──────────────────────────────其れから5年後。
今もまだカプセルの中で暮らしている。身長や体重も普通の人間の子と然程変わらない程に成長していた。今も少しは言語を話せるようになった。だが、会話を出来るかと言われればそうでは無い。唯言葉を発せるようになっただけだった。前にカプセルの外で何かを喋っていた男は毎日自分の所に来てくれては話し相手になってくれていた。度々プレゼントをくれてその中には服やアクセサリーなどが入っていて、少しばかり自分でお洒落をしてみたい年頃だった自分にとってはとても嬉しい品物だった。服の着方は分からなかった。だから、其の男に教わった。食事の食べ方も表情の作り方も殆ど今ある知能は其の男から教わったものだった。
??「おぉ、ウォール。今日も今日とて元気だなぁ゛?」
と其の男は自分のカプセルの前に座り胡座をかいて、また新しい洋服を渡してくれてはそう言った
ウォール「ア…ィアトウ」
??「ありがとうってか?すげぇじゃねぇか!」
とにかっと笑って見せた男に自然と自分も笑ってしまった。
──────────其れからまた数年後
何歳になったのだろうか。10歳は超えていた。会話も可能になり、男の名前を聞くことが出来て其の男は『カルナ』と名乗った。今ではカプセルの外に出ても肺呼吸が出来た。他のところに歩き回っては新しい友達も出来た。皆はカプセルの中で眠っていることが多かった。夏になっても其の子達は長袖の儘だった。「暑くないの?」と問いをしても「暑くないよ」と返されては何も言えずにいた。まぁ、水の中だし暑くは無いのかと思っていた。友達のところを周り終えてはカルナのところへ遊びに行っていた。最近は忙しい様で遊んでも話してもくれなくなっていた。悲しいそう思ってもカルナは仕事をしているのだから仕方がない。そう自分に言い聞かせて居た。
ある日カルナに「遊びに出掛けよう」と手を伸ばされ、嬉しく思っては其の手を掴みエスコートされるかのように連れて行かれた。着いたのは大きな建物で少し目にした人物達は皆ドレス等を身に纏って居たものの何か目隠しだろうか。良くは見えずに其の人物達とは別の入口から中へ入った。
カルナ「ウォール?お前はマジックや泳ぎが得意だろう?今日お前は舞台と言うお前がさっき見た人達の前に立って其れを披露するんだ。凄いと認められれば新しい洋服を買おう。」
ウォール「本当に!じゃあ私頑張るね!カルナ」
と何の疑いも無く彼に笑顔を向けては黒服を着た男性4、5人に連れられ舞台と呼ばれる場所に立った。
その瞬間だった。人々が拍手を送る中。1人の男性が
「さぁ!本日の目玉商品の登場です!」
商品…?自分には良く分からなかった。商品なんてどこにも無い。この舞台に立って居るのは自分だけだ。なのに商品なんて。と考えているとふとカルナに言われた事を思い出した。新しい洋服が貰えなくなってしまう。と思えば大きな水の入ったガラスの中でマジックと言われていた泡を出して見せたり、水の中を綺麗に泳いで見せた。マジックとカルナに言われたいたものはマジック等では無い。この子自身の能力なのだ。この子の能力は『泡』。水の中で披露した泡を出現させるだけならば可愛いものだ。この子は素手で触れた物を泡に変え自身の身体に吸収出来るのだ。触れた物を泡に変える。其のことについてはこの子は何も知らなかった。唯自分は泡を出すというマジックができる。そう思っていた。そんな能力を持つ者を欲しがる客人は次々に札を上げて行った。そう。此処は舞台等ではない。オークション。そう呼ばれる場所だった。そんな事とは露知らず札が上がることは褒めて貰って居ると勘違いをしては嬉しそうに笑っていた。するとオークションの運営者だろうか
「では!この商品は1億円での落札となります!」
そう言い立ち上がって近付いて来る男に首を傾げた。何故近付いてくるのだろう。舞台が終わったならば今にでも帰りたい。カルナ?何処に居るの。そうまだ幼い彼女にとっては恐怖でしかなかった。其の男は自分の目の前にしゃがむと
伊織「よろしくな。ウォール。私は伊織だ。」
と前髪は長くマスクまでしている為顔は見えなかったが差し伸べられた手を見ては握手をする他無かった。ようやく舞台裏に帰るとカルナが居た。早く帰って皆に会いたい。
ウォール「カルナ〜…」
と何時もの様に彼にて伸ばさればその手は振り払われ
カルナ「近付くんじゃねぇよ…化け物が」
そう言われれば唖然とした顔をして。
ウォール「え、あ、…あはは…な、何言うの?カルナ…」
恐る恐る彼に手を伸ばそうとすると彼は銃を手に持ち此方へ向けて来た。
ウォール「カル……ナ…?」
信じたくない。嘘だ。そんなの有り得ない。あれほど優しくしてくれたのに。嘘だ。嘘に決まっている。違う。カルナは疲れて居るだけだ。きっとそうだ。
現実を見たくは無かった。信じていたかった。だけれど目の前の状況は変わることなど無かった。
カルナ「お前を愛したことなんて一度もねぇんだよ…。何勘違いしてんだ?…お前なんかが愛される訳ねぇだろ。こんな化け物が。」
汚物を見る。そんな目で見ないで。お願い。やめて。いつもはもっと笑ってみてくれる。何かの夢だ。夢と言わせて。でなければこんなの
信じられない。信じたくない。─────────
唖然とした儘彼を見ていれば先程の伊織と名乗った男性がカルナの肩を叩けば何かアタッシュケースを渡してカルナがそれを見て頷けばカルナは遠ざかって行った。
ウォール「待っ…゛!カルナ!…カルナ!゛」
涙を流し乍彼に手を伸ばすもカルナと自分の間には伊織が入って来て、手を伸ばす自分を無視するかのように首根っこを掴めば乱雑に床に投げ捨て。
伊織「もう諦めたらどうだ?お前は商品。私に買われたんだ。彼奴はお前を大事に育てて来たそうだな?その理由は分かるか?変な傷がついてちゃ売れないんだ。だから、イラついても殴ったりしないで大切に大切に育てて来た。どうだ?そんな父親同然の人物に捨てられた気分は」
ウォール「うる…さい……」
そう言い放ち。彼を睨めば。
伊織「奴隷同然のお前が何を主人にそんな目を向ける。カルナの奴。全く躾が出来ていないな。」
そう呟く彼の隙をついては逃げ出そうと彼と真反対の方向へ走り出すも何故か体が動かず
伊織「さっき握手をした際にお前の指に軽く私の髪の毛を結んだ。私の能力だ。今後お前の首には首輪が着く。簡単に取れると思うなよ?」
髪の毛を鷲掴みにされては一発頬を殴られた。痛い。なのに涙なんて出なかった。殴られた。其れよりもカルナに捨てられた。そちらの方が苦しく悲しかった。もう、嘘だなんて言えない。これが現実なのだ。そう思えば何も抵抗する気は起きなくなり
伊織「連れて行け」
そう他の黒服に告げれば、腕を掴まれ其の儘車に乗せられ、足首には手錠が着けられ。こんなのまるで囚人のようだ。そう思えば少し笑うも本心から面白いだなんて思ってない。唯気を紛らわせたかった。現実と向け合わなければいけない。そんなの分かっている。だけれど、もう少しだけ。もう少しだけでいいから。カルナとの楽しかった思い出を其の儘に楽しかったと思えるようにしておきたい。
車が動き出し。数時間経ったのだろうか。時間なんて分からないが何処かに着いた。大きな建物だ。入口を通り中へ入れば。
嗚呼、もういいや。
そう思ってしまえば楽しかった思い出などどうでも良くなった。
何処だろう。地下と思われる場所に来ては牢屋の中に投げ入れられた。冷たい。人肌恋しい等と冗談を言うには丁度良いのかもしれない。今日からここが私の家か。