―貴方へのこの想いはどこにやればいいのか。
太宰が好き。そう気づくのに時間はかからなかった。この気持ちに気づいたのは17歳のときだが、彼奴に心を奪われたのは7年前出会ってすぐ、多分一目惚れだろう。
彼奴は俺の気持ちを知らない。知ってほしくもない。多分、いや、100%拒絶される。
ガキの頃は彼奴の隣にいれるだけでじゅうぶんだった。彼奴にとっての「相棒」という存在だったから。誰よりも信頼していたし、されていると思っていた。
でも違ったみたいだな。
彼奴は俺の前から姿を消した。何も言わずに。たった一人の「親友」のために。
俺は彼奴にとっての特別でもなんでもなかった。
再開してできた体の関係も最初こそ嬉しかったが俺は彼奴のただの性欲処理でしかなかったのだ。
使い勝手の良いただの駒にすぎなかったのだ。
仕事終わりそんなことを考えながら自分のセーフハウスに向かっていると探偵社の奴らと楽しそうに歩いている太宰の姿が目に止まった。
「あんな笑顔俺に向けてくれたことなかったな 」
俺にしか聞こえないほど小さな声で呟いた。
ーポロ
「えっ? 」
気がつくと視界が涙でぼやけていた。
胸が苦しい。息が詰まる。涙がさらに大粒になって溢れてきた。
やっとの思いで視界を開き、周りを確認すると太宰がこちらに歩いてきていたた。目が合うと、とても嫌そうにかつ、心配そうに。
「やぁ中也。今日も相変わらず小さいね。」
「ところでなんで泣いているんだい?」
「……」
「ちょっとなんとかいいなよ。」
あぁだめだ涙がおさまらない。胸の痛みがさらにました。
気がつくと俺はセーフハウスに向かって走リ出していた。後ろから太宰が「中也!」と叫んでいたが止まらなかった。
太宰のあの俺を見たときの嫌そうな顔を見直して気付いた。彼奴は俺のことを特別な相手とも相棒だとも思ってなかったんだ。
セーフハウスにつくとすぐ寝室のベットに潜り込んだ。
(やっぱりな……彼奴の特別にはなれねぇ)
よく考えて見れば当たり前のことだったんだ。彼奴は男だ恋愛対象はもちろん女だ。それに俺みたいなバケモノあいつが好きになるわけない。力を制御することもできない役立たずな俺を見てくれるわけがない。
そう考えるとまた涙が溢れてきた。
7年間の太宰への想いに蓋をしようと決意し、俺はそのまま眠りについていた。
太宰が好き。この気持ちは変わらないだろう。でも彼奴が俺からの好意を嫌がるなら……この気持ちに蓋をしよう。
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