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書き方を大幅に変えた結果、大変な駄作になって申し訳ない… 小説ってやっぱり難しい。
ホワイトクリスマスのソ日です。(フィン日じゃないの?と思ったそこの貴方、ソ連×日本にハマりましょう)
雪は夕暮れとともに降り始め、街を静かに包み込んでいた。 日本は待ち合わせ場所で背筋を伸ばし、きちんと手袋をはめ直した。
(遅れてはいけません……)
そう思いながらも、胸の奥は落ち着かない。 “デート”という言葉を口に出した覚えはないのに、今日はそれ以外の何物でもなかった。
「…待たせたか」
後ろから掛けられた、耳に心地よいテノールの声。 振り返ると、そこには待ち侘びた人物ーソ連が立っていた。 いつもの軍服ではなく冬服にロングコート姿なのだが、身長が高いためにとても似合っている。
「いえ。私も今来たところです」
嘘ではない。 大切な日だからこそ余裕を持って来ただけだ。
「寒くないか」
「大丈夫です。…しっかり着込んでいますから」
そう答えると、ソ連は納得していない顔で日本を見る。 そして何も言わず、少し距離を詰めた。
「……近くにいたほうが、暖かい」
理由が不器用で、でも優しい。 日本は小さく笑って、黙って頷いた。
並んで歩く二人の歩幅は、自然と揃う。 日本はソ連の歩調に合わせるのが得意だった。 いつもそうしてきたから。
「今日は…その、ありがとうございました」
日本が勇気を出して言う。
「何がだ」
「時間を作ってくださって」
ソ連は一瞬言葉に詰まり、視線を逸らした。
「…お前が、無理をしていないか、気になったからな。それだけだ」
本当はそれ以上の気持ちがあるくせに、 ソ連はうまく言えない。
日本はそれを分かっているから、責めない。 ただ、健気に、そばにいる。
その距離感は、近くて遠くてもどかしい。
屋台の前で足を止めると、湯気が白く立ち上る。 日本がカップを受け取ろうとした瞬間、ソ連は日本の手がかじかんでいるのに気づいた。
「冷たい」
ソ連はそう言って、何の前触れもなく日本の手を握った。 ぎこちないが、離す気はない。
「…っ」
「すぐ温まる」
命令口調なのに、行動はとても優しい。 日本の頬が赤くなる。
「ありがとうございます…」
「礼を言われることじゃない」
そう言いながらも、手はしっかりと包み込んだままだ。
イルミネーションの下、雪が静かに舞う。 日本は少しだけ勇気を出して、ソ連の袖を掴んだ。
「今日のクリスマスが…1番楽しいです」
その一言に、ソ連の動きが止まる。
「…そうか」
短い返事。 だが、手を繋いでいる力がほんの少し強くなった気がした。
雪はしんしんと降り積もり、街を白く染めていく。
「ホワイトクリスマスだな」
「はい。…とても静かで、綺麗です」
「…お前みたいだな」
思わず口に出た言葉に、ソ連自身が驚いたように黙り込む。 日本は一瞬固まり、次の瞬間、控えめに微笑んだ。
「……光栄です」
雪の降る神聖な夜。
二人の距離は、握られた手の温もりのように、確かに近づいてきていた。
雪の降る帰り道、二人はゆっくり歩いていた。 並んでいるのに、少しだけ言葉が減る時間。
日本は手袋越しに、まだ離れていない手の温もりを確かめるように指を動かした。 その小さな仕草に、ソ連は気づいていた。
「…なあ」
低く、ためらいが混じった声。 ソ連は前を向いたまま、ぽつりと続ける。
「…俺で良かったのか?」
その言葉は、驚くほど弱くて、正直だった。 自信のなさも、不安も、全部隠さずに零れ落ちたような声。
いつもと違うソ連の様子に驚いたような顔をして、日本は一瞬立ち止まりソ連を見上げた。
「どうしていきなりそんなことを…?」
「俺は不器用だ。 …気の利いたことも言えないし。優しくできているかも分からないし、…親日国でもない。」
雪が二人の間に落ちる。 白くて、静かで、逃げ場がない。
日本は少し考えてから、そっとソ連の手を握り直した。 今度は、自分から。
「…ソ連さん“だから”です」
その答えに、ソ連が目を見開く。
「真面目で、不器用で…でも、誰よりも優しい」
「それに、私のことを、ちゃんと見てくださいます」
日本は照れたように視線を伏せながらも、言葉を続けた。
「なのでソ連さんで良かった…いや、」
「ソ連さんが良いんです」
そう言うと、優しい笑みをソ連に向けた。
しばらく沈黙。 やがて、ソ連は小さく息を吐き、日本を引き寄せた。
「……そう言われると、逃げられんな」
声は相変わらず不器用だが、腕はとても優しい。
雪の夜。 不安を抱えたままでも、選び合った答えは、確かにそこにあった。