コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ムツキ、ナジュミネ、アル、リゥパ、妖精たち、そして、途中から合流した白フクロウのルーヴァはついに世界樹の根元まで辿り着いた。
「ここが世界樹の根元か。近くで見ると大きすぎるな」
ナジュミネは思わずその大きさに絶句する。木というにはあまりにも大きすぎる世界樹は、端から端までが肉眼で捉えるのに困難である。
「まあ、創世の初期からあるこの世界樹は、妖精族にでも理解の外にある異質な存在だからね。魔人族や人族では正直理解できないものだと思うわ」
リゥパは嫌みではなく、事実としてナジュミネに淡々とそう話した。
「そのようだ。妾には理解できぬ。ところで、世界樹は具体的にどういう役割をしている? 世界の循環をしているというのは前に聞かされて何となく分かるのだが」
「それは俺から話す」
ナジュミネの質問にムツキが反応する。リゥパはどうぞといった素振りで彼を促す。
「すごく簡単に言うと、海、陸、空のそれぞれにある栄養や魔力、エネルギーと呼ばれるものたちを平均化するんだ。あとは、どこかに澱みが発生しないように強制的に新しい栄養や魔力、エネルギーを流し込み、搾りかすのようなそれらを吸収する」
ムツキは地面に木の枝で簡単な絵を描くような感じで説明をする。実際には地面は草や木の根、枯れ葉に覆われているので絵で見ることはできないが、何となくナジュミネにも伝わっているようだ。
「世界樹には膨大なそれらが詰まっているということか」
「いや、実際はそこまで世界樹に強い力があるわけじゃない。あくまで鍛冶師や細工師みたいなものだ。元々ある鉄や金属を使いやすいように加工して、誰かに渡しているようなものだからな」
「なるほど」
ナジュミネは少しずつ理解できるように噛み砕きながら、言葉の1つ1つを呟いていく。
「さて、そろそろラタが来てもいいはずだが。いつもお喋りをしたくて、俺たちが来るよりも早くに来てウズウズしているのに。」
「そうね、珍しく来ないわね?」
ムツキ、リゥパ、アル、そして、ルーヴァは何か異変があるのではないかと勘繰った。
「ルーヴァ、ちょっと適当に見てきてくれるか? 【クレアヴォイアンス】は細かい制御ができないから、リス一匹を見つけるのは難しい」
「それはいいんですけど、あっ、ムツキ様。だったら、あふっ……あーしを離してくれないかしら? 言っていることとやっていることが違うわよ? んぅ……もうずっと全身をどこかしらまさぐられて、なんかあーしやばいんですけど!」
ムツキはルーヴァに出会ってから、がっちりと掴んでおり、触りたい放題で手が止まることはなかった。
「そう言われてもな。中々、出会えないモフモフはおモフをたくさんしておかないと損だからな。それにそれは、俺のモフモフ捌きにメロメロってことだろ? いいじゃないか。気持ちいいなら」
「ここまで……くぅ……来るとムツキ様は変態を通り越して、け、形容しがたい何かな気がするわ」
「褒めるなよ」
「んあっ……褒めてないわよ?!」
「え? 褒めてないのか?」
「そうよ?!」
ムツキのよく分からないボケに、ルーヴァが冷静なツッコミを返す。
「ムッちゃん、ルーヴァを離してあげて。人型じゃないのに、なんだか声だけでもやらしいわ。代わりに、ルーヴァがいない間は私をたくさん触っていいわよ! 昨日から我慢してるでしょ?」
リゥパがそう言って、引き締まった腹をチラリと見せる。長袖に長ズボンの格好の中で白いお腹がやけに映えており、ムツキも少しグラつく。
「な! 旦那様。リゥパだけではなく、妾だっておるぞ!」
ナジュミネもまた長袖に長ズボンの軍服姿だが、彼女は自分の武器である胸を強調するためか、ボタンを2つほど外して、ムツキに見せつける。
そして、次に言葉を発したのは、アルだった。
「……お二人とも、話がまったく進まないので、一旦静かにお願いできますか?」
「はい……すみません」
「はい……すまぬ」
アルの冷静な指摘にリゥパとナジュミネは服装を戻しつつ小さく了承の言葉を呟いた。
「マイロード、早くルーヴァを離してください。さすがにラタの気配が一切しないのは心配です。何かあったのかもしれません。早く向かわせましょう」
「はい……」
ムツキはルーヴァをまさぐる手をようやく止めて、ルーヴァを空へと放った。ルーヴァは最初上手く飛べずにふらついたが、やがて、まともになった。
「さて、ルーヴァ、頼みましたよ」
「はーい! ちゃちゃっと見てきますわー!」
ルーヴァは意気揚々と世界樹の上の方へと羽ばたいていった。