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鷹槻れん

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そこまで告げて、私にしか聞こえないくらいの小声で
「僕自身も、計画を知らなかったために高橋と日織さんが近付くたびに無駄にヤキモキさせられてしまって……貴女を酷く責め立ててしまいました。――本当に申し訳なく思っています」
言われた瞬間、会議室でのことを思い出した私は、恥ずかしさに目線を下向けた。
そんな私には気づいていらっしゃらないのか、修太郎さんは健二さんを睨まれると、「僕のため、というのは有難く思いましたが、やはりもっとやり方がなかったのか?と腹立たしくもありますね」と付け加えられた。
修太郎さんからの厳しい視線を受けた健二さんが、
「――え? 俺?」
非難を受けることは全く予想もしていなかったという表情で驚かれるのへ、修太郎さんは盛大な溜め息をおつきになられた。
「日織さんと高橋は仲がよかっただろう? そんな人間の、存在自体が嘘だったと言われたら、お前、どう思う?」
修太郎さんがお兄さんのお顔をしてそうおっしゃると、健二さんはハッとしたお顔をなさった。
「すみません、日織さん。俺、そこまで考えられてなくてっ」
高橋であったときと、健二として貴女に接していたときにさしたる隔たりは作っていなかったつもりではあったけれど、それでもやはり丸っきり同一人格ではなかったと反省なさると、健二さんが私に頭を下げていらした。
「俺……っていうより高橋か。彼のことを頼りにしてくださっていたのに……本当、すみませんでした!」
「わ、私の方こそ狭量でごめんなさいなのですっ」
健二さんが非を認めてくださったことで、モヤモヤとしていたものが嘘みたいに晴れた。そればかりか、自分が怒ってしまったことさえ申し訳ないような気持ちになってしまう。
考えてみると、今まで私はそういう人との軋轢とか……心の機微のようなものをあまり感じずにのほほんと暮らしてたような気がする。
健二さんから、世間の荒波に揉まれて欲しい、と言われて飛び込んだ臨職体験だったけれど、荒波というのはある意味マッサージのような感じで、気持ちをほぐしてくれるものなのかなぁとか思ってしまう。
途端、筋肉隆々な揉み師さんが頭の中に浮かんでくる。その方に肩とか腰とかモミモミされている妄想が炸裂して、おかしくて思わずクスッと笑ってしまう。
すると、「日織さん?」と修太郎さんから声をかけられた。
「あっ、揉みっ……」
と思わず言いかけて、慌てて口をつぐんだら、「また妄想の世界に行っておられましたね?」と笑われてしまった。
このところ、少しそういう頻度が減ってきたかも?と自分のなかでルンルンだったのに……。
やってしまいました……。
恥ずかしくてしゅんとしたら、修太郎さんが「僕は日織さんのそういうところも含めて愛しく思っています」と言ってくださった。
「本当……ですか?」
恐る恐る問い掛けたら、「だってそれは僕の影響なんでしょう?」と微笑まれた。
幼い頃の、修太郎さんに読み聞かせをしていただいた頃の楽しくて堪らなかった気持ちを思い出した私は、にっこり笑って「はい!」とお答えした。
「――それじゃあ、そろそろお開きにしますか」
健二さんがそうおっしゃったのを合図に、色々驚きの告白が目白押しだった会合は幕を閉じた。
とりあえず、当人同士のお話は全て済んだ……のかな?
だとしたら――次はいよいよ両親の番なのですっ……!
そう思ったら、にわかに緊張してしまった。
コメント
2件
修太郎さんがやたら高橋さんとひおりちゃんが親しくするたび嫉妬むき出しでおかしくなっていたのは彼が日織ちゃんの許嫁の健二さんだと知っていたからなんだとそう言う過去のあれこれがストンと腑に落ちた気がしました! 健二さんもひおりちゃんへの非道が良くなかったと非を認めてくれてよかったね、ひおちゃん! 「揉みっ!」に笑ってしまった🤣
うわ、このエピソード、修太郎さんの謝罪がすごく良かったですね。あの会議室でのシーンを思い出してるところで「僕自身も計画を知らなくてヤキモキした」って、自分も痛みを共有してたんだなと分かって、なんだか温かい気持ちになりました。健二さんが「高橋のことを頼りにしてたのに」って頭下げるのも、二人とも誠実でいいなって。 日織さんの妄想が炸裂して「揉みっ!」って言いかけるところ、可愛すぎて思わず笑っちゃいました。修太郎さんが「そういうところも含めて愛しい」って言うの、もう恋人同士の空気が尊すぎますよ……。 さて、次は両親への報告。緊張する気持ち、すごく分かります。でも今の日織さんなら大丈夫な気がするなあ。続きが待ち遠しいです!