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病院に着くと、
『おや?甘君と琥珀さん、来てくれたのですね。』
新田先生が来てくれた。
『ぜひ、向こうの部屋で話しましょう。』
新田先生に向こうの部屋へ案内され、部屋に入る。
『その後、体調の方はどうですか?』
『おかげで元気です。』
特に問題はない。
肩以外は。
『そうですか、それは良かったです。』
そして、僕と琥珀さんの前に麦茶の入ったコップを置く。
『琥珀さんも久しぶりですね。』
琥珀さんは、ちょっと怖がってるみたいだ。
あれ?
先生とは昔のことを話してたりしたんじゃ…
『琥珀さん、大丈夫?』
琥珀さんは僕の腕を握り、黙ったままだった。
『琥珀さんちょっと怖がっているみたいで…』
『私が、怖がらせてしまったのでしょうか。大丈夫ですよ、琥珀さん。』
でも、喋ろうとしないどころかみようともしない。
それは、新田先生に限らないことだった。
昨日、如月さんの話は聞いていたみたいだったけど、いつも怖がって見ようともしない。
『新田先生、琥珀さんはいつもこんな感じなんです。』
僕とは目を見て話すし、逆にくっついてきて離れようとしない。
『もしかしたら、人間不信のようなものかもしれませんね。』
人間不信、
人が信じられず、怖くなる。
『昔の酷いイジメなどが原因で、人間に対して恐怖心を持った可能性が高いでしょう。』
それは、僕にも少しわかる。
夢で、恐ろしいものを見たから。
それ以上のことを琥珀さんが知っているなら、そうなっても仕方ないことかもしれない。
だけど…
それは、寂しいことだ。
『ですが、助けてくれたことや一緒にいたことからか甘君に対しての恐怖心はないようですね。』
琥珀さんは僕にしがみついたまま、離れない。
僕のことは怖がらずにいてくれるのは嬉しい。
でも、それなら、
他の人と会うのは、琥珀さんにとって怖いことなら、
どうしよう。
琥珀さんはどう思っているんだろう。
『どうしたらいいんでしょう…』
『多くの優しい人と話すことで恐怖心が薄れることもあるようですが、ほとんどの場合は悪化してしまうそうなので…』
もし、悪化したら…
それを考えるだけで、辛い。
『あまり、他の方と会わせない方が良いかもしれません。』
やはり、そうなるか。
なら…
剣士を続けられなくなる。
買い物は?
1人にする?
でも、琥珀さんは1人も怖いみたいだし…
それも難しいな。
『甘君、君が優しくし続けることでも変われるかもしれません。』
『そうですか…』
それでやってみるしかないか、
優しく、
僕は優しくすることが出来るだろうか?
それからはあまり話すことがないまま、帰ることになった。
結局お礼も伝えられず、
先生は忙しそうだったので、言う暇がなかった。
琥珀さんはどうしよう。
剣士はどうしよう。
これからどうすればいい?
『ごめんね、』
琥珀さんが謝った。
『琥珀は大丈夫だから、』
そうは言うけど…
『本当に大丈夫なのか?』
大丈夫そうには見えない。
『甘ちゃんが隣にいてくれたら大丈夫だよ、』
『でも、剣士はやめるよ。あそこは怖いことが多いからやめた方がいいでしょう?』
琥珀さんは寂しそうだった。
『琥珀に気を使わないで、甘ちゃんのしたいことをして欲しい。』
『・・・』
でも、続けられないよな…
『甘ちゃんは剣士、続けたい?』
それは…
何も知らない中で、
ほとんどの人は僕を悪者扱いする中で、
僕に居場所を与えてくれた。
危険な仕事ではあるけど、
僕は、
『続けたいとは思ってる。』
だけど、
1番寄り添ってくれたのは、
辛い時も手を握ってくれたのは、
僕にとって1番大切なのは、
琥珀さんだ。
『甘ちゃんに迷惑はかけたくないから、続けて欲しい、』
そんな…
『優しい人もいるってことは知ってるから。きっと、優しい人といれば怖くないはずだから、ね?』
琥珀さんは笑顔だった。
『いいのか?』
『うん!』
琥珀さんは頷いた。
家に着く。
今日は琥珀さんが借りている家に帰った。
『甘ちゃん、』
琥珀さんが僕の名前を呼ぶ。
『どうしたの?』
『琥珀も、強くなりたい。出来るかな?』
強くなる、
応援するべきなんだろうけど…
その必要があるのだろうか。
僕が強くなって、琥珀さんも守れるようになれば良いのでは?
・・・
『なりたいと本気で思っているなら、琥珀さんにだって出来るはずだよ。』
そうだ、
琥珀さんがなりたいと、言ったんだから、
応援するべきだ。
支えてあげるべきだ。
『一緒に強くなろう。』
『うん、ありがとう甘ちゃん。』
僕も強くなりたいから、
だから、
一緒に強くなろう。