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第1話「ジェーンとの出会い」
彼女の名は花崎彩純(はなさき あずみ)。
15歳の高校一年生の女の子である。
花崎彩純は多くの男の目を釘付けにさせる大きな胸と、(中学生までボクシングを習っていたことで)引き締まった身体の持ち主であった。
普段は年頃の女子高生として、友達と放課後にファーストフード店で喋るなど、ありふれた生活をしていた。
しかし、彩純には人には言えない秘密の趣味があった。
それはおおよそ6月〜8月、夏の雨の日に裸になって雨のシャワーを浴びること。
この日も馴染みの竹林に来ていた。
黄色いレインコートと黄色いゴム長靴、その下はパンティー1枚以外は何も身にまとっていない。
本人自身も傍らから見れば奇妙な趣味だと自覚しているのか、雨浴びする場所は、親族が所有する竹林に限られている。
その竹林は少々変わった所があった。
竹の中を進んでいくと、突然拓けた場所が出てくる。
黒っぽい石畳が地面に敷き詰められており、その中央に小さな祠がある。
(石の台座に木で作られた祠。
中には何か石を彫って作られたような像が見えるが、格子状の木枠の扉が閉められていて、よく見えない。
とはいえ、彩純はその像が何かは気にしてなかった。
せいぜい地蔵や仏像のような何かが入っている程度にしか思っていない。)
彩純は決まってその祠のある場所で裸になり、雨浴びをするのであった。
今日も無人の竹林で雨浴びをしていた。
しかし、この日はいつもと違った。
雨浴びを開始して数分経っただろうか…
誰かの足音が聞こえた。
「だ、誰?」
ハッと気付いた彩純はとっさに胸を片腕で隠しながら、足音のしたほうを見る。
次の瞬間、彩純は戦慄した。
「…………。」
無言で石畳の端に立ち尽くしている人がいた。
彩純と色違いの黒いレインコート、黒いゴム長靴を履いて立ち尽くす人。
女であった。
「……私もここで雨を浴びていたいの。いてもいいかしら?」
ポツリと呟くように彩純に問いかける女。
普通に考えて、平日の昼間にこんな竹林にいること自体異様ではあるが、同じ女であることと、若干気圧されていたのか、彩純は
「…え、ええ、別に構わないですけど…。」と
答えるだけであった。
女は「奇遇ね。同じ趣味の人がいるなんて…。」といいながら、レインコートを脱いだ。
彩純はその女の身体を見た瞬間、まるで感電したかのような寒気が一瞬全身を駆け巡った。
女は彩純と同じくレインコート一枚だけであり、その下は裸であった。
それはいい。
何に対し寒気がしたのか?
それは女の身体が血が通っていないように白く、そして全身切傷の跡だらけであったことだ。
さらに髪の毛は白に近い金髪とでも言えばいいのだろうか?
瞳の色は紫色。
まるで人間の姿をした別の何かのようであった。
呆然と彩純が見つめるにも関わらず、
その女はシャワーを浴びるがごとく、雨浴びを始めていた。
黒いレインコートを脱ぎ、同じく黒いゴム長靴以外は裸になった女の身体は、やはり全身切傷の跡だらけであった。
しかし、同時に美しさや気高さのようなものを感じさせる。
白い肌は、まるでアルビノの動物…それこそ神の使いだと言われる白い蛇のように美しさを兼ね揃えていた。
気が付けば彩純は女に半ば見惚れていたとも言える。
女は彩純に話しかける
「私はジェーン…あなたは?」
「あ…彩純」
「同じことをする人、しかも女…何か面白い巡り合わせね。」
「あ…あんた何者?ここ一応私有地なんだけど?」
「あら、そうだったの…これは失礼したわ。」
ジェーンはそう言うと、彩純をジッと見つめた。
紫色の瞳はアメジストを思い起こさせるような美しい輝きをしていた。
同時に、何とも言えない妖しさを放ってもいるが…
「身体を見るに、彩純、あなたは何か格闘技かスポーツを習っているわね?それも最近じゃない。」
不気味な部分を感じ取りながらも、彩純は答えた。
「そうね、ボクシングを5年ぐらいかな…」
「なら面白いわね、私と少し勝負してみない?」
「え?何言ってんの?」
「いいから…」
そう言うと、ジェーンは彩純が見慣れたポーズを取る。
ボクシングの構えだ。
「な、何考えてんだあんた…?」
戸惑う彩純だったが、ジェーンはお構いなしにパンチを繰り出してきた。
「…⁉」
本能的にパンチを避ける彩純。
「……本気かよ?」
「…………。」
彩純の問いかけも意に介さず、ジェーンはパンチを繰り出す。
避ける彩純、時々隙を見てパンチを返すが、絶妙な距離で届かない。
「こいつ、上手いな…強い。」
避ける、攻撃するを繰り返しながらも、彩純はジェーンの何かを感じ取ろうとしていた。
「しまっ…」
彩純の眼に、ジェーンの拳が迫る、傷だらけの…でも美しく白い拳が…
…………
固まる彩純の眼前で、ジェーンの拳は止まっていた。
恐らく大きなダメージを喰らうであろうパンチは、彩純の眼の前で止められていた。
「なんで…今のチャンスだったのに…?」
「……突然でゴメンね。あなたの能力を試して見たかったの。」
「試す?」
「あなたにこれを渡しても大丈夫かどうか…」
そう言うと、ジェーンは祠に立てかけてあるショベルを掴み、彩純の前に差し出してきた。
オレンジ色に塗装されたブレードとハンドル、それらを繋げる硬そうな木で出来たショベルだ。
「こ、これがどうしたの?」
いきなりショベルを渡される意味が分からず、質問する彩純。
「これから、この竹林で色々な敵が現れると思うの…。これはあなたを…それと、この竹林を守るために役立ってくれるはずよ。」
そう言いながら、ジェーンは受け取れと言わんばかりに彩純の前にショベルを差し出してきた。
気圧されたのか、思わずショベルを受け取る彩純。
年頃の女子高生よりは鍛えているとはいえ、そのショベルは振り回すには少々重すぎるぐらいだろうか。
「何かよくわかんないけど、こんなものを何に使え…あれ?」
消えていた。
彩純がショベルに目を向けていたほんの数秒で、
まるで最初から何も無かったかのようにジェーンの姿は消えていた。
ただ竹林の中に、いつもの雨音が響くだけであった。
「な、何なんだ?オバケ?」
訳も分からず立ち尽くす彩純であった。
…………
仕方なくショベルを持って家に戻った彩純だった。
洗面所で鏡を見ると、ジェーンの拳がかすった跡が所々に赤く、うっすらと残っていた。
今日あったことを頭の中で反芻する彩純。
どうやらジェーンは幻覚ではなさそう。
竹林は自分が来た道以外はまともに歩けるような場所がない。
なのに、ジェーンのレインコートと長靴には、笹の葉や泥が一切付いてなかった。
それに、あのショベルはいつから祠に立てかけてあったのだろうか?
あんなオレンジ色のものが、自分が抱き締めれる程度の大きさの祠に立てかけてあって、あることに気付かなかったとは思えにくい。
不思議な…わからないことだらけのまま、彩純は部屋に戻る。
オレンジ色のショベルは、確かに目の前にある…
つづく