私は外で倒れていた。
記憶が無いが、『人形』という事と、『捨てられた』と言うのは分かる。
そこから数々の出会いをした。
丹波と名乗る、親の様な人や優しい近所の人。
後になって、『傾奇者』と呼ばれる少年が加わった。
彼は私と似ていて、仲の良い双子、と見間違われるぐらいには仲が良かった。
…そんな平和な生活は、ある日突然終わりを告げた。
フォンテーヌの技術師を名乗る男が言った。
「丹波様は、罪に恐れを成して出頭しました。」
と。
『へ…?』
絶望した私達に追い討ちをかけた。
「丹波様からこれを預かっています。この問題を解決する為にはこれを持って御影炉心の中心へ行って下さい。」
私達は疑いもせずに中心へ向かった。
途中、死にかけたのを助けてくれたのはあの装置だった。
フォンテーヌの技術師に中身を問いただしたが、
「ご自分でご確認ください。」
の一点張り。
中身を確認すると…
しわくちゃになった、心臓が入っていた…
『心…臓…?』
「丹波…!」
私は走り出した。
裏切り、恐怖、不安…
私の中でそれが渦巻いた。
丹波が裏切って…
傾奇者ですら裏切る気がして…
怖かった。
逃げ出したかった。
力尽き、意識を失いかけている時、私の脳の中から声がした。
「スメールの…すらさ…せ…へ…いらっしゃい…」
その言葉が言い終わる時、私は意識を失った。
最後に見かけたのは、満月の月、満開の桜…そして、月光で照らされた海だった…
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!