『ね、大我』
「ん?」
『俺、彼女できたんだ!』
「…え、」
突然の報告、突然の失恋。
でも、本当は心のどこかで分かってたんだ。
俺に勝ち目なんてないってことも。
本当は知ってたよ、
「…」
あなたが恋に落ちた時、その横で俺は
そっとあなたに恋をしていた。
ずっと見ていたけど、あなたは
何にも気づかないで笑っていた。
『ほら、写真も撮ったんだ〜』
「…いいじゃん、」
俺が一番聞きたくない話をしているあなた。
それでも、話を聞き続けるのは
あなたに会えなくなるよりはまだ少しだけましだから、
本当にあなたの口から聞きたいことは
終電の時間でも、彼女の悪口でもない。
せめて、今日のために切った髪に気づいて
似合ってるよ、と言って欲しかった。
『それでさ、今度彼女の誕生日なんだけど』
『プレゼントどんなのがいいと思う?』
「え、」
俺の方が、先にあなたを好きになったのに。
俺じゃ駄目なの?
言いたいことは数えきれないほどある。
でも、
俺があなたを好きなくらいあなたもその人を想っているなら
俺じゃやっぱり駄目か、
「…」
じゃあ、しょうがないよな。
「彼女さんが喜びそうなものは、」
最初からあなたの幸せしか願っていないから。
たとえそれが私じゃないとしても
ちゃんと最後は…
隠した想いが見つからないように
横から背中を押すから。
「…誰よりも幸せに、してあげて。」
想いを実らせることができなかった俺がするべきことは、
あなたとあなたの大切な人の幸せを
祈ることだから。
『ありがとう!』
本当は、本当は
横にいるだけで辛いのだけど。
コメント
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うゎあ… 今回も最高! 今胃腸炎で死んでます笑