テラーノベル
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「 夜空。」
もとぱ
深夜。
病室は静かだった。
僅かに窓を開けると、夏の夜風がカーテンを揺らした。
遠くに小さな虫の声。街の喧騒はもう 何処にも無くて、ただ星が幾つも瞬いていた。
「 起きてる…? 」
滉斗が囁くと、ベッドの上の元貴がゆっくりと瞼を開ける。
「 …うん、なんかね…..眠れない 」
声が掠れている。
でも、それはもう滉斗にとって聞き慣れた音だった。
「 俺さ、今でも信じられないんだよ。」
「 何が?」
「 お前とこうして、手を繋いでること 」
滉斗は元貴の手を、優しく包む。
点滴の痕が残る手。傷の跡が薄く残る腕。
それでもずっと あたたかかった。
「 最初はさ、元貴 ずっげぇ素っ気なくて。あん時、結構傷ついたんだぞ。 」
「 ….. ごめん、ね 」
「 いいって、今こうして 傍に居てくれてるんだから。」
元貴は笑った。弱々しく でも心からの笑みで。
それを見て、滉斗はもう一度言った。
「 俺、好きだよ。元貴が ちゃんと笑ってるとこ 」
「 …..僕も、滉斗の事 大好きだよ… 」
そう言った後で、元貴は視線を天井に向けた。
「 ひろと…..。」
「 ん? 」
「 …..また、来年も夏も… 」
声が震えた。
滉斗は何も言わず、その細い肩を抱きしめた。
「 大丈夫。来年も 再来年も…ずっと傍に居るから。」
「 …ほんとに?」
「 ああ。俺の隣、お前の席 もう誰にも譲らない 」
そして夜が明けた。
窓の外には、夏の朝焼け。
でも、夜の星空のように もう静かな音しかしなかった。
ベッドの上で眠る元貴の表情は穏やかで、少しだけ 笑っているように見えた。
滉斗はその手を もう一度握る。
「 ありがとう。出会ってくれて…生きてくれて。」
その言葉に答えるように、ふと風が吹き カーテンが揺れた。
その先に、透き通るような朝の空が広がっていた。
“君がくれた夏”永遠に忘れないよ___
#3.「 終わりを告げる星の下で 」
これにて「 夜空。」終了です。
大森さん。いつかこうなってしまわないか心配です。
コメント
2件
待って流石に泣けた😭 めちゃめちゃ感動なのだが🥺 終わり方とかも素敵過ぎる💓😖 確かに、omrさんいつかこうなっちゃいそうで心配😿 素敵なお話ありがとうございました♪他のお話の方も楽しみにしてる!!