大森side
涼ちゃんと連絡が取れなくなって二日が過ぎた。
心配になってタクシーを拾って家に向かう。
通い慣れた涼ちゃんの家。
その家から漂う雰囲気は
いつもとは違う暗さがあった。
不安になりながらチャイムを押し、扉に手をかける。
軽く引っ張ると簡単に扉が開いた。
「ったく、不用心なんだから、…」
涼ちゃんに何かあったら若井が泣くぞ、
と心の中でぼやきながら「涼ちゃん、」と呼ぼうとして
ふと玄関の靴の数が少なくなっていることに気づいた。
黒いスニーカー、白いサンダル、薄いピンクのウォーキングシューズ。
全部、涼ちゃんのものばかりである。
その瞬間、ズビッと啜り泣く声が家に響いた。
鼻をつく異臭。
暗く重暗い雰囲気。
消えた若井の私物。
涼ちゃんの身に何が起こったか。
恋愛を沢山重ねてきた僕たちは
一瞬で察することができた。
「、ふ、笑」
「ふられちゃったよ、元貴」
部屋に行って、涼ちゃんを抱きしめると
涼ちゃんは掠れた声で囁いた。
今にも泣いてしまいそうな顔で笑っている。
その顔に強く心が締め付けられた。
涼ちゃんの家からは若井の匂いは消え去っていて
代わりに腐った食べ物の匂いや
埃の灰が被ったような匂いが充満している。
「、…なんで」
「…他に好きな人が出来たんだって。」
「…そう」
暗い雰囲気の室内に響いた自分の声は酷く低かった。
「…若井のことなんて、忘ればいい」
「無理だよ、若井は……、」
「若井のこと、今でも好きなの」
「ふられたのに、?」
わかってる。
傷ついた涼ちゃんにこんな言葉をかけるなんて
駄目だってわかってる。
「…若井のこと、忘れられない」
若井と涼ちゃんはお似合いだった。
かっこよくて優しい若井と
ふわふわして可愛い涼ちゃん。
二人はいつもお互いを支え、
助けあい、
そしていつも幸せそうに笑っていた。
「…涼ちゃん。」
「…若井より、僕のほうが涼ちゃんを幸せにできる」
コメント
6件
たのしみ!!!
うわぁ…複雑になってきた…まだ未練がある涼ちゃん…どっちを選択するんだろ…続き楽しみ😖
くぅぅ切ない😭でも、めっちゃ好きや…((( 涼ちゃんはどう返事するのかな🤔めっちゃ楽しみ🥰