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学校行事の季節。修学旅行では班が違ったけれど、班行動する日が一日だけあって、その時たまたま会って班同士で喋った感じだった。
体育祭も合唱祭も、クラス全体で話すくらい。
それでも、彼とは直接話さなかった。
給食のとき、席が近くなると、やっぱり誰かを通して話す。
それが“普通”になっていった。
合唱祭に向けて練習を始めた頃、私たちのクラスはある提案をした。
それは、クラス全員で色は違うけれど、おそろいのミサンガをつけて出ること。
私を含め、クラスの女子数名でみんなの分を作るために、
合唱練習がない放課後、教室に残っていた。
夕方の光が教室の床をオレンジ色に染めて、笑い声が時々響くような、そんな穏やかな時間。
その時、友達がふとした調子で言った。
「ねぇ、彼って好きな子いるらしいよ」
聞き返す前に、「同じクラスで、同じ委員会の子だって」と続けられた。
少し胸がチクッとした。
やっぱり、私のことは嫌いなのかなと思った。
だから直接話してくれなかったのかもしれない。
でも、それなら――
どうして他の女子には普通に話すんだろう。
そんな小さな疑問が、ミサンガの糸よりも細く、
心の中にからまって離れなかった。
あの頃編んだミサンガの色、
いま思い出しても、胸の奥が少し痛い。