テラーノベル
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そろそろ夏が近づいてきた頃、暑い日差しが差し込むのを俺はカーテンを閉めて遮る。
蝉の音が煩いほど鳴り響いて頭がどうにかなりそうだ
「今年も最高気温ねぇ」
この暑さは一体どうにかならないのか、返事もくそもないただの独り言に頭を捻る。
そういえば、冷蔵庫の中にアイスあったっけな。
エアコンガンガンな俺の部屋は外と違い涼しく、軽い足取りで冷蔵庫の中身を覗いて見た。
ひんやりしていてこれまた気持ちいい。
「げ、アイスないじゃん」
あー、買いに行くのめんどくさいな。
名残惜しく冷蔵庫を閉める、電気代が多くなってしまったらたまったもんじゃないからね。
自室に戻り日差しによって温められたベッドに沈み込む
暑い。
そんな俺にとっては重大な事を考えていると、スマホから着信音が鳴り響いた。
「もしもし…」
「今にも死にそうな声してんね、ゆあんくん」
「そりゃあね」
着信音の犯人はじゃぱぱだった。
お前はこんな暑いのによく元気だな、と伝えようとしたがその気力さえも暑すぎて飲み込む。
「あのさ、お願いというか協力して欲しい事があるんだけど」
「何…?」
ガラガラの声で返事した。俺悪くないよ、悪いのはこの暑さだから。
スマホ越しにじゃぱぱのゴクリという音が聞こえた。今暑くて気力なんて物はないので勿体ぶらないで早く教えて欲しい。
「引かない?」
「え、引く内容なの…?」
「いや、違うけど……うーん、そうなるのかな?」
何それもう俺は現時点でじゃぱぱ、お前に引いてるよ。お前は俺にどんな事を協力させようとしてんだ。
「で?何を協力して欲しいの?」
沈黙が続く、俺だって暇じゃないんだからね。
「俺と1日だけ恋人になって欲しいんだよね」
……待てよ、色々突っ込みたいところはあるがとりあえずじゃぱぱにもう一度聞いてみる。
「…ごめん、聞こえなかったんだけど」
「俺と1日だけ恋人になって欲しい」
俺の聞き間違いなのではという希望は儚く消えた。
「いや、別にいいけどなんで俺?」
「じゃぱぱモテるから俺じゃなくてもしてくれる人沢山いると思うけど」
「あー……親が彼女は作らないのかって煩くて」
「お見合いとかさせられそうになってんの」
「今の時代にお見合いとか親も親だよな」
じゃぱぱは貴族とかそこまではいかないが一般の家庭より少しお偉い家系だ。
じゃぱぱの親も高校三年生になっても今だに彼女を作らないじゃぱぱに痺れを切らしたのだろう。
「で、俺言っちゃったんよ。言いずらかったから今まで言えなかったけど男の彼女が居るって」
「そしたら親が1回会いたいって言い出してさぁ…」
「何やってんのお前」
「だって彼女作りたくないんだもん」
これでもじゃぱぱは結構な女嫌いだ。全員という訳でもないが自分の資産やスペックだけで近寄ってくるから苦手らしい。
「はあ、それで?」
「だからゆあんくんに俺の恋人役として俺の親と会って欲しい」
「ええ…」
「マジで!一生のお願い!」
その言葉前にも聞いたようなデジャブ感を感じつつもじゃぱぱの家も結構難アリな家だ、じゃぱぱ自身も苦労しているんだろう。
仕方ない
「いいよ」
「え!?まじで!?」
「それでいつ行ったらいいの」
「えっと、明日かな」
「明日ァ!?」
ジリジリとした日差しが俺を溶かす。
俺は一体こんな真夏に何をやっているんだ……
重たい手でインターホンのボタンを押すと爽やかそうなじゃぱぱが出てきた。おのれ。
「あ!ゆあんくん」
「暑い…」
「中入ろっか、どうぞ」
「……おじゃましまーす」
俺はじゃぱぱと結構前からの仲だが実際じゃぱぱの家に行ったことはなくこれが初めてだ。
中に入るとちょっとお高そうなチェック柄のテーブルクロスやオシャレなシャンデリア。
え、俺が今居るのってじゃぱぱの家だよな??
一般家庭の俺には馴染みのない物ばかりでちょっと目眩がしそう。
奥からパタパタと音がなるとじゃぱぱの親が出てきた。……どんな人なんだろう。
「あらあら、貴方がじゃぱぱの彼女さん?」
「お母様、お宅のじゃぱぱさんにいつもお世話になっているゆあんと申します。」
「ふふ、畏まらなくていいわ。さ、ソファに腰を下ろして」
「ご丁寧にありがとうございます…」
それがまた高そうなソファで、一瞬躊躇うが慎重に座る。じゃぱぱのお母さん案外いい人なの……か?
「色々聞きたいことはあるのだけど…じゃぱぱとはどのような経緯で?」
「じゃぱぱさんとは私が高校1年の時同じ部活の先輩として最初関わってきました。最初こそ関わりは少なかったですが、じゃぱぱさんの部活に取り組む真剣な態度や性格に惹かれていって……告白したらOKもらえた感じです。」
中々上手くいったんじゃないか?じゃぱぱも唖然と俺を見ている。俺だってやる時はやるんだから、なめんなよ。
「甘酸っぱいわねぇ、貴方なら私の息子を任せても大丈夫そうだわ」
「……失礼ですが俺が男という事に疑問は無いのですか?」
「ええ、私はじゃぱぱに内面を見てもらえる人と付き合って欲しかったから。」
「そう、でしたか……」
紅茶、ありがとうございましたと1つ会釈をして立ち上がる
「あら、もう帰るの?もう少しゆっくりしてもいいのに」
「貴方なら大歓迎よ?ねえ、じゃぱぱ」
「でも、ゆあんくんの用事とかあるから」
「良ければ」
「ゆあんくん!?」
好奇心という物だろうか。じゃぱぱの家に呼ばれる事なんて今後は殆どないだろうから少し興味が出た。
「ふふ、良かったわ。もう夜遅いし先にお風呂に入っちゃいなさい」
じゃぱぱに風呂場へと案内される時に声を掛けられた。
「まさか母さんがあんなにゆあんくんの事気に入るなんて……」
「珍しいの?」
「ウルトラスーパー珍しい」
なんだよそれ、と小学生が言いそうな言葉を吐いたじゃぱぱに呆れながら風呂場へと足を運ぶ。
「……やっば」
「流石の俺でもそれは毎回思うんだよなぁ」
案内された先は風呂場ではなくもはや銭湯で、石で作られた壁は白い煙をより目立たせていた。
「身体洗うか」
「背中長そっか?」
「え……いや、いいよ」
流石に何もしないのも申し訳ないと感じたがじゃぱぱに呆気なく断られてしまった。
「ふぅ……気持ちぃ」
「久しぶりにお湯に浸かったかも」
「家であまりお湯溜めないの?」
「節約」
お坊ちゃんには縁のない言葉だろうな。少しの皮肉とからかいを入れてじゃぱぱにつげた。
「……そっかぁ」
ガラガラガラガラ…ピシャン。
「あ〜!気持ちよかった……」
「じゃぱぱ髪乾かして〜」
「はいはい、自分でやりなさい」
ちぇ、こういう時だけ大人なんだから。じゃぱぱから渋々ドヤイヤーを受け取って髪を乾す。
「どう?お湯加減は大丈夫だったかしら」
「丁度良かったです」
「それは良かった」
ささ、早く席に着きなさい。お腹減った頃でしょう?とじゃぱぱのお母さんに呼ばれる。
「え、晩御飯までいただいても大丈夫なんですか?」
「じゃぱぱの彼女さんだもの、当たり前よ」
次々出てくる料理はどれも手が凝っている物ばかりで、俺の知らない料理名の物が沢山あった。
外国の料理とかちらちら見えるがレベルの高いものばかりで手が少しきごちなく動く。
「いただきます」
「おいしっ!?」
「良かった、手を凝ったかいがあったわ」
くすくすと笑う仕草はじゃぱぱに少し似ていた。じゃぱぱってお母さん寄りなのかな。
「それにしても、じゃぱぱはいい人を捕まえたわね」
「ンブッ」
急に話を掛けられたからだろうか。じゃぱぱが咳き込む。
「大事にしなさいね」
恥ずかしそうに目を背けていた。へえ、じゃぱぱのくせにかわいいとこあんじゃん。
そんな2人を見ながら俺は手を合わせる
「ご馳走様でした」
「皿、自分の分洗いますね」
「大丈夫よ?」
「流石に申し訳ないので皿洗いだけでもやらせてください」
「そんなにいうなら……ありがとう、分かったわ」
俺はやけにデカイキッチンに入って皿を洗う。前に少し切った傷が染みて地味に痛い感覚が伝わると同時に背中が重たくなった。
「ゆあんくん」
「何、じゃぱぱ?」
「……ごめんね、迷惑掛けちゃって」
「いいよ、別に」
そう俺の恋人(一日限定)は心配そうに、また申し訳なさそうにもたれかかってくる。
「お前の女嫌いも早く治せよ?」
「うん」
なんだかんだいってこいつの為に色々してやってる俺も甘いなと思いながら。
皿洗いも終わって今頃俺ならゲームをしている時間。エメラルドグリーンの目が俺の顔を覗き込む。
「ゆあんくーーん?」
じゃぱぱの髪はまだ完全に乾いていないのか少ししっとりとしていた。
「そろそろ寝るよ、大丈夫?」
「あ、あぁ……大丈夫」
「本当〜?」
9時か……俺がこんなに早く寝るなんていつぶりだろうか。こんなの絶対明日何かあるだろ。
そう思いながらドアを開けるとダブルベッド
ダブルベッド??
「え、ここで寝るの……?」
「あ嫌だったらごめん……俺ソファーで寝るけど」
「全然大丈夫全然大丈夫!!」
「逆に一緒に寝てもいいの?」
「うん」
ふかふかのベッドに足を入れて寝っ転がるとじゃぱぱもベッドの上に乗って寝転んだ。
黒を中心とした色をしていてじゃぱぱらしくないなと思いながらマクラに顔を沈める。
「んん”ー……」
「眠いの?」
「ぅん………」
じゃぱぱが手で目を擦ったものだから声をかけると眠いらしい。
とは言う俺は微塵も寝れる気配はない。
決して緊張しているとかじゃなくて俺が不健康な生活を送っているからだと信じている。
おやすみ、じゃぱぱに一声かけて部屋の電気を消した。
ちゅんちゅんちゅん
目をうっすら開けば部屋は明るくて、ふと時計に目を向けると
「……10時!?」
隣を見るとじゃぱぱは居ない。
手から感じるのはふかふかなベッドのシーツで溺れそうだった。
そそくさ早く髪を手でとかして服を着替える。
俺はもう一度閉じようとする瞼を頑張って開いて慌てて部屋から飛び出した。
途中置物に足をぶつけてこれがまあまあ痛く、声に出ない悲鳴をあげながら。
「すみません!寝坊なんかしちゃって…」
「あら!……ふふ、おはようございます。」
「おはようございます。どうしたんですか…?」
「いいえ、何も無いわ。じゃぱぱに今ゴミ出しを頼んだとこなの」
「昨日はありがとうございます」
じゃぱぱのお母さんはいいのよ、と一言。
すると玄関からじゃぱぱの声が聞こえたので足を運んだ。
「もう、帰るの?」
「流石にね」
「お泊まり、楽しかった?」
「うん」
じゃぱぱは幸せそうな顔でそっか、と微笑んだ。
2人に見送られながら玄関を出る。相変わらず蝉は煩く鳴いていた。
昨日の今日に続いて色々あったな、家に帰って日記でも書こうかな
多分、長くて4日ぐらいで飽きると思うけど。
じゃぱぱの家と違い外は蒸し暑く、早足で自分の家へと急いだ。
……首元に1つの赤いあとがあるなんて知らずに。
コメント
1件
…これってjpyaじゃないですか? てぇてぇですね~ yajpも好きですけどyajpyaも好きなんですよねぇ!!