厄災がやって来るたび、渡辺と目黒の絆は強くなり、渡辺は何かがあったとき、目黒に言えるよう努力をしている。だが、まだまだ厄災の方が勢力が強く、渡辺は負けそうになる。
家のドアの前で渡辺は立ち尽くしている。というか、あるものを凝視している。
どう見ても「血溜まり」に見える。
自分は元気で怪我などしていない。
他所のお宅と間違ったわけでもない。自分の家で玄関を出たら「それ」はある。
渡辺は今、仕事から帰って来た。
軽くパニックになり、それでも警察を呼ぶということは出来た。
事情を聞かれたが、今帰って来たところで、覚えがない。
事件・事故・イタズラの方向で調べられそうだ。
イタズラ、だったら「血」じゃないかもしれない。それに、考えるのも嫌だが、人間の「血」かどうか分からない。警察は、渡辺が芸能人だと認識している。「恨みを買った覚えは?」と聞かれても、答えようがない。
警察ー片付けてもらっていいですよ。一部採取しましたから。
渡辺ーはぁ。
警察ー何かあったら連絡ください。
渡辺ーよろしくお願いします。
ポリ袋・ゴム手袋・トイレットペーパー・消毒液・洗剤・漂白剤・ブラシ等を用意して、夜中までかかって掃除した。
部屋でソファにコロリと横になる。 疲れすぎて動けない。
でも、警察に連絡しないといけない。郵便物の中に切手のない封筒があり、「血溜まり」を作ったかもしれない人物からのもの。
どうやって、渡辺の家を特定したのか分からない。だが、グループを知っていて、渡辺を知っている。
警察ー手紙はこれだけですか?
渡辺ー郵便物の中にありました。
警察ー中、拝見します。
「事務所に何度もファンレター出しました。1度も返事ありませんでした。もう、あなたなんか好きじゃないです。でも、悔しいから私は自分を刺しました。生きながらえたら覚悟してくださいね 琴音」
警察ーファンの方なら、覚えはないでしょうね。
渡辺ーはい、知りません。
警察ーこの手紙預かります。それから、あなたの指紋採取させていただきます。
渡辺ーはい。
全てが終わって、ソファから立ち上がることも出来ない。
元から帰宅が遅かった、辺りは朝を迎えようとしている。
今日も昼前から仕事がある。
だが、今から横になって仕事に間に合うように起きれる自信がない。
渡辺ー俺が何したってんだ。
独り言は虚しく部屋に響き、渡辺は、携帯を見つめている。
1番に目黒に言うべきだろう。
だが、まだ寝てるはず。あやふやな内容で起こすのは申し訳ない。
はっきり分かってから伝えようと携帯を充電器に差した。
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