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雪あかりうすく障子の白がふくらんで
庭は墨のごとし
霜夜の道
下駄の歯がこつりこつりと
星まで澄む
火鉢の炭
赤子の息のようにひそと燃え
言葉は少し
井戸のつるべ
縄ひややかに指へ食み
掌のひびに沁む
薄氷の川
小石ひとつ投げて
遠くかすかな音
冬の市
白菜の白まぶしく
声は掠れてあたたかい
台所の湯気
鍋のふちより溢れ
母の横顔がやわらぐ
裏木戸の柿
枯れ枝に一つ
鳥の黒点
帰り道の雪
犬の足あと二つ増え
家が近づく
夜ふけの静けさ
積もる音のなさが
積もる気配になる