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赤い月がますます濃く染まり、廃墟に長い影を落とす。
「……参式を出さなくちゃ、いけないみたいだね……」 雨宮はそう言いながら、口元を抑えた。
――その瞬間。
「……げほっ……!!」
雨宮の体が大きく揺れ、真紅の液体が彼の口から零れ落ちた。鮮血が地面に滴り、異様な静寂が場を支配する。
「……おい、どうした?」 日哉が剣を肩に担ぎながら、不敵に笑う。だが、その目は雨宮を見据えていた。「いきなり自滅か?」
「黙れ……!」 雨宮は苦しそうに声を絞り出したが、次の瞬間――彼の背後に異形の“影”が立ち上がった。
「……参式――“月喰ノ傀儡”」
それはまるで、月そのものが形を持ったかのようだった。ねじれた四肢、無数の目、歪んだ笑み。精神を侵すほどの禍々しさ。
「……なに、あれ……!」 吉田が思わず後ずさる。
「おいおい……冗談だろ……」 日哉の声からも、珍しく焦りが滲む。
しかし、次の瞬間――雨宮が再び咳き込み、膝をついた。
「ぐっ……!」
「おい、アンタ……大丈夫か?」 吉田が思わず問いかける。
「……ふざけるな……!」 雨宮が血まみれの顔を上げる。「僕が……これを……制御できないわけがない……!!」
しかし、その言葉を嘲笑うように、背後の“月喰ノ傀儡”は雨宮に向かってゆっくりと手を伸ばした。
「あ……?」
「雨宮……お前、それ……」 日哉の声が低くなる。
――それはまるで、操り手を喰らわんとする人形だった。
「くそっ……!」 雨宮は懸命に糸を操るが、傀儡は意に介さない。
そして――
「……食われるぞ、雨宮。」 吉田が冷静に告げる。
「黙れッ!!」
次の瞬間、月喰ノ傀儡が動いた。
「――ッ!!」
廃墟の一角が吹き飛ぶ。崩れた瓦礫の向こうで、雨宮の悲鳴が響いた。
「くっ……!」 吉田は影を操り、即座に日哉と共に距離を取る。
しかし、瓦礫の中から立ち上がった雨宮の姿は――
「……な、んだよ……それ……」 日哉が目を見開く。
雨宮の体は傀儡と融合し始めていた。片腕はすでにねじれた黒い糸と化し、顔の一部は異形の目に覆われている。
「……僕が……僕が主だ……!!」 雨宮は必死に叫ぶ。
しかし、その声はもう、人のものではなかった。
――赤い月は、さらに血の色を濃くしていく。
「……どうする、吉田?」 日哉が低く問う。
「決まってんだろ。」 吉田は冷ややかに微笑む。「止めるしかない。」
次の瞬間、戦いは再び始まった――