テラーノベル
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・曲パロ(M/r/./シ/ャ/ー/デ/ン/フ/ロ/イ/デ)
・もはや名前お借りしてるだけ
・この世の全てと無関係
・全体的にキャラ崩壊・支離滅裂
・行間多め
・捏造100%
・言うほどCP要素がない
・グロ表現有り
・CPはrttt、rimn、ruwn、rbkg
・本編約9000文字
・わかりにくい表現が多々
・解釈不一致多々
?? side
___救いようのない罪に……救済と復讐を。
どこからか、そう聞こえた気がした。こんな夜に誰かが外に出ているのだろうか。
ほんの少しの興味が湧いて、寝間着のまま適当に靴をつっかけて外に出た。
さくさくと草を踏みながらあたりを散策していると、不意にぞくりとした寒気が走った。
ばっと焦り背後を振り向くと誰もいない。けれど、まだ寒気が全身の神経という神経を逆撫でするように気持ち悪く駆け回っている。
そして次に瞬きした瞬間、ざくり、と肉が切れるような嫌な音。
遅れて腹部を見れば、大きく貫通して血を滴らせている刃物のような切っ先。思い切り引き抜かれ、地面に倒れた。
手で腹部を抑えようが血は止まらない。手が真っ赤になって、口からごぽ、と血を吐き出した。
視界がぶれる。音が遮断される。全身への血の供給が止まる。
誰だ。誰が刺した。背後の誰かはもうどこにもいない。どうして、誰がこんな。
まともに言葉も口にできず、意識が落ちてそのまま消えた。
No side
とある村。
その村にも、世界と同じように太陽が昇り、朝が訪れた。
それぞれ村人が起床し朝飯を食べたり、朝の運動に出たりしている。
が、ここで何人かが異変に気づく。一人足りなくないかと。
村人達はそれに気づき、まずまだ顔を見ていない彼の家を訪れた。村人の内、いない彼と特に仲のいい者が「ちゃんと家に入っていったのを見た」と証言したからだ。
鍵は開いたままで、恐る恐る中を覗くと電気は消えている。そして玄関には彼の靴がない。家に入った後外に出たということになる。
そこから総出で捜索が始まった。彼の名前を呼び、あちこちを歩き回る。が、誰かが「は、?」という声を上げたことで場の空気が凍る。全員がそこに集合すると、そこには。
血溜まりの中で生気を失った状態で倒れている佐伯イッテツ__村人達が探している人物、その張本人がいた。
そしてその血溜まりの隅に、血で濡れるギリギリのところで落ちている一枚の紙があった。
その紙を神官…赤城ウェンが拾い上げ、書かれていた文字を淡々と読み上げる。
『気高き古の悪魔が蘇り「誰か」に憑き
穢れし村人の魂に死を施すだろう』
その横で、「ちゃんと家に入っていったのを見た」と証言した、佐伯イッテツと特に仲の良かった村人…宇佐美リトが冷静さを欠いた様子でその遺体に駆け寄る。
「て、つ……?なんで…ッ!!」
泣き崩れている宇佐美をちらりと視認しながら、葬儀屋である星導ショウは黙々と遺体のエンバーミングを始めた。
その身を清め、少しの間の腐敗を防ぐ。そしてあらかたの血を拭い終えると遺体を抱え上げた。
「イッテツは…一度、俺が預かります
こんな血だらけの服と身体、
あまりにも可哀想です」
それだけ言うと、そのまま行ってしまった。
残された六人には重い沈黙が走る。現実を受け入れられない者、口元を手で抑え絶句する者、血溜まりから目を背ける者。
そのまま朝が過ぎていき、夕方になってしまった。教会に集まった七人は誰が佐伯を殺したのかの話し合いが始まった。
「まず外部からの差し金という線は?」
「いや、ここは人来たことないやん今まで。
それに人の気配だったりは
ロウが鋭かったりするやろ?」
「あぁ。俺達以外の人の気配は
何もなかった」
そうなると察せるのは。
宇佐美が口元を抑え目を見開いた。青ざめ、信じられないという顔をしている。
そして思い浮かんでしまった嫌な考察を述べる。
「なら…この中の誰かが、」
「佐伯を…あんな目に…?嘘やろ、」
途中で言葉をつまらせた宇佐美の言葉尻を拾うように叢雲カゲツが言葉を紡いだ。
全員が全員その仮説を否定したかったが、それ以外考えられないのも事実。
「…悪魔とかそういうの、
俺は興味ねぇ」
「はぁ?!小柳お前、人死にが出てんだぞ?!
ちゃんと真剣に考えろ!
それか誰だよ、名乗り出ろ…!」
ふい、と顔を背けた小柳ロウに、伊波ライは言葉を荒げた。
人が死んだ動揺と、絶対に殺した犯人を見つけなければという使命感がその大きな瞳に宿っている。
それを、佐伯を棺桶に収めた後の星導が宥めるように発言した。
「ライ、落ち着いてください
けど、俺も小柳君には少しだけ賛成です
悪魔なんて存在しませんよ」
「まぁ皆、そんな怖い顔せんといてや!
大丈夫、俺が守ったる!騎士やからな!」
重々しい空気の中、騎士である緋八マナは立ち上がり、村人たちを元気づけるように明るい声を上げた。
そして腰に収まっている、自らの武器であるレイピアに触れた。それを見た村人たちは緋八マナの計らいにより落ち着きを少しだけ取り戻した。そして夜が深まる前にと自分たちの家に帰っていく。
自分も戻ろうと歩き出そうとした時、背後から誰かに名前を呼んで引き止められた。
「マナ」
「…ライやん。どないした?」
「良かったの、騎士だって言って」
「あの空気、俺嫌だったんよ
皆笑ってる顔のほうが似合うで」
「そうじゃなくて…!
マナ自身が襲われるかもしれないのに、」
「だぁいじょうぶやって!
俺強いんよ、それにテツの仇も取らな
気が済まんねん。ごめんなライ」
二人きりになった教会で、説得にかかる伊波を緋八は落ち着くように促しながら言葉を返す。
伊波はそんな緋八を見て、もうどうにもできないと勘づいてしまった。
諦めたように一度俯くと、おもむろに自分のヘアピンを外した。自分が肌見放さずつけている、黄緑色の。それを緋八に差し出す。
「これは…?」
「それ、マナに預ける
もう俺には止められない。それは分かる
だからせめて、仇取ったら返しに来て
絶対、約束だからな」
緋八はそれを受け取り、なぜだか泣きそうになった。ぶんぶんと頭を振って振り払う。
そしてそれを、自分の前髪をかき分けて丁寧につけた。改めて伊波に向き直った。
「……似合う?」
「うん。めちゃくちゃ」
お互い泣き笑いになっているのがなんだかおかしくて、緋八の方からもぉなんなん!と怒っているようでいて嬉しさのほうが滲んでいる声で伊波の肩を組んだ。
今は、マナといれる時間を大事にしよう、と苦し紛れに切り替えた伊波は、笑いながら緋八の肩を組み返した。
二人で鼻歌を歌いながらそれぞれの家へと戻っていった。
緋八は、こっそり伊波を含む皆が寝静まったのを確認すると外に出た。レイピアを常に構え警戒の体制を緩めない。
もし本当に村人たちの中に犯人がいるなら、次は誰を襲うかわからない。また誰かが殺されてしまうのは嫌だ。防がなければならないと目を鋭く光らせる。
風が吹く。夜は冷え込む。それにほんの少しだけ気が逸れた。逸れてしまった。それがいけなかった。
「___っ、?!」
一瞬の隙を狙われた。瞬きするまもなく眼前に黒いローブを深々と被り、大鎌を持った男が迫っていた。
すかさずレイピアで大鎌をいなそうとするも弾かれ、遠くに飛んでいく。声も上げられず、足を払われ尻もちをつかされた。
そしてその大鎌を男が大きく振りかぶる。緋八は立ち上がろうとするも、ローブから覗いたあの瞳の色を見た途端動けなくなった。
「なんで……なんでなん!
お前、こんなことする奴ちゃうやろ!」
それでも男は大鎌を振り下ろす。その瞳を底冷えするくらいに光らせながら。
緋八の服が真紅に染まる。広がっていく。生命を覆い潰さんとするように。
そしてその地面に大きく、どこまでも不格好な赤い華を咲かせた。
翌朝。一足先に起きた伊波は緋八宅のインターホンを押した。確認しに来たのだ、生きているのかどうかを。
が、いつまでたっても家主は出てこない。家から漏れる明かりはない。律儀に扉は鍵がかかっている。
とてつもなく嫌な予感がした伊波は他の村人たちを起こし、マナがいない、とまた昨日のように捜索にあたった。
そして皮肉にも、緋八を一番最初に発見したのも伊波だった。嘘だ、と目の前の光景に息をするのも忘れる。
佐伯と同じように、身体に穴を開けた緋八が血溜まりの中に横たわっていた。呼吸が止まっており、顔色が紙のように白い。
咄嗟に手首に手を当てても、脈が伝わってくることはいつまで立ってもなかった。
そして伊波の様子を見た村人たちが集まってくる。昨日はあんなにも笑って自分たちを元気づけてくれた頼もしい騎士の死を目の当たりにした。
そしてまた紙が一枚、隅に落ちていた。同じように赤城は内容を淡々と読み上げるばかりだった。
『怒れる古の悪魔が哀れなる【騎士】を救い
穢れし村人も残らず殺してみせるだろう』
涙も枯れ、怒りだけが残る伊波の横で、星導はまた遺体のエンバーミングを始める。佐伯の時と同じようにその身体を抱え、棺桶に入るのにふさわしい姿に整えに、誰よりも先に戻っていった。
そして話し合いが行われたのは、昨日よりも早い昼に入りたての時間帯だった。
どん、と伊波の拳が紙をぐしゃり、と握りしめ机を叩く。誰も何も言わなかった。何を言っても今は伊波を刺激してしまうだけだ。
結婚の約束までした想い人を失うのは誰だって辛いに決まっている。それが誰かに殺されたとなるとなおさら憎悪するだろう。
「何が救済劇だ……
こんなのただの傲慢だろ…ッ!」
怒り狂う伊波を見て、赤城も覚悟を決めたように口を開く。
「もう黙ってらんない
夕方までに犯人…悪魔を吊るすよ」
「いや、俺が仇取ってやる…!」
赤城の横で、宇佐美が意気込む。佐伯に続いて緋八まで。許せないという怒りの感情が節々から感じられた。目を閉じればあの遺体がちらつく。無理やり振り払った。
「どうせ、皆このまま
死ぬんだろうな」
「ロウ!」
「なんだよウェン
お前さっきから吊るすだの言ってるけど
まだ確証もないだろ
この中の誰が悪魔なのか」
「それは……!」
小柳は試すように赤城を見た。赤城が言葉に詰まらせたのを見ると、ほらなと言うように表情を呆れさせ赤城が持っていた、佐伯の遺体近くにあった紙を抜き取った。関わらないほうがいいと警告するように。
「っやめろやお互い疑うの!
皆誰も信じられんくなるくらいなら
ぼくが吊るされたる…!」
更に嫌な空気になりかけたところを、がたっと席を立ち上がった叢雲が変えようと言葉を発する。昔から自己犠牲に走る癖がある彼の発言は、今まで黙っていた星導によって片手で制された。
「皆さん落ち着いてください。…ところでライ
これ、ライのヘアピンですよね?
どうしてこれを、マナが持っていたんですか?」
ヘアピンを掲げちらりとライを見る。その目には明らかに疑いの色が宿っている。確かに、村人たちは教会で一度伊波と緋八が二人きりになっていたことを知らない。疑われるのも無理はない。
血相を変えた伊波は必死に弁明したが、結局は星導の発言と証拠が決定打となり、伊波は処刑されてしまった。
皆今までの仲間が処刑されるのを各々の気持ちを持ちながら苦々しく受け止めると、これで悪魔はいなくなったか、と夜になってそれぞれまた自宅に戻っていった。
夜が深まっても、一人隠れて教会で違和感を覚えていた赤城がどうにかこの違和感を突き止めようとしていた。
こっそり伊波と小柳の手から回収し直していた二枚の紙を並べ、見比べる。二枚とも同じ筆跡だ。が、この筆跡を持つ村人に該当者は思い浮かばなかった。
最初から外部の線を消したので考えつくのは、誰かがわざと筆跡を変えた。そうとしか思えない。
そして伊波の発言。「救済劇」なんかじゃない、と言っていた。救済劇。もし本当に犯人がこれを何らかの劇だと思っていたら?
でたらめではあるがそう仮説すると、村人であてはまりそうな人物が絞り出される。
村人皆劇は好きだ。佐伯、緋八、伊波がいなくなってしまった今、五人の中で特に劇の話をしたりしている人物は。
「まさか___ッ!」
それと同時に背後に気配が迫る。振り返った時にはもう遅い。男は既に大鎌を緋八と同じ時のように大きく振り下ろそうとしていた。そのまま抵抗も許されず魂を刈り取られるかのように貫かれる。
(……こうなるの、分かって
紙取ってくれたんだろうな、
ロウきゅんは)
脳裏に浮かんだのは、赤城がふざけて呼べば「ロウきゅんて呼ぶな」とあしらそうな彼。
どくどくと血を流しながら、声を出す経路も潰された赤城はかひゅ、とか細い呼吸一つこぼしてそのまま息絶えた。
それとほぼ同時刻。
寝床に入っていたはずの小柳が不意に目を覚ます。
赤城が死んだ。行かなくても分かる。白狼である自分にとっての番の生命反応くらいは感じ取れる。
それに泣きもしない。気がつけば赤城から一度抜き取ったはずの紙が消えていた。おそらくこっそり取り返されたであろうことを察してふっと笑った。どこまでもお人好しな奴、と。
そして紙とペンを取ると、ほとんど書き殴るように文字を走らせた。短い二文。
それをわかりやすい位置に置くと、自分の妖刀を取り出す。長年しまっていたものだが切れ味は健在だ。
それを確認すると、躊躇なく自分の心臓めがけて深々と突き刺した。心臓ごと背中まで貫く。番が先立ったのであれば自分も、という白狼としての考えだった。
再会できるかは定かではないが、もし会えたら自刃するなんてと怒るんだろうなと思いながら静かに目を閉じた。
翌朝。
朝に顔を見せるメンツが目に見えて少なくなっている。
そしてまた残りの村人たちは捜索に走り出した。まだ、悪魔は消えていない。
偶然小柳の自宅の前で鉢合わせた宇佐美と叢雲の二人は、顔を見合わせると玄関扉を押した。鍵は開いていた。
暗い部屋の電気を手探りでつける。ぱっと明るくなる。
そしてそのすぐ目の前には、血しぶきが壁に飛び散り、ちょうど心臓部分を妖刀で貫いて倒れ伏している小柳の姿があった。
二人して目を見開き息を呑む。息絶えているのは明らかだった。そして叢雲がおい、なんかあるぞとかろうじて正気を保ちながら机の上を見る。
叢雲が手に取った紙を宇佐美も覗き込む。またあの悪魔が書いたものかと思いきや今回は違う。筆跡は明らかに小柳のもの。
『早く殺しに来ればよかったのにな
神官を庇った俺はもうお前にとっちゃ
邪魔者だろ?』
誰相手かも書かれていない紙。これは村人宛かそれとも、悪魔に向けてか。
顔を見合わせると二人は紙を持って立ち上がった。二人の中で誰が悪魔なのかはもう見当がついていた。今すぐにでも吊し上げてこの悲劇を終わらせなければならないと。
二人が向かったのは教会だった。なぜなら星導が教会方面へ捜索に行ったのを目視していたから。
扉から押入れば、案の定星導はいた。血だらけで息絶えていた赤城の遺体を綺麗にし棺桶に入れていた。
その表情はなんともいえない。葬儀屋という仕事柄だからではあるが長年村で共にした仲間たちを何人も棺桶に入れている。泣き崩れたり取り乱す様子は一切無かった。
単純に精神が強いのか、感情のコントロールが完璧なのか…それとも。
慈愛すら浮かべたような目で棺桶の蓋の中で眠っているであろう仲間を見つめているその姿に、二人の背筋にぞくりと得体のしれない何かが走った。
先に宇佐美が動いた。勢い良く星導の胸ぐらをつかむと、どういうつもりだという風にぎりぎりと拳を握りしめた。その後ろでは叢雲が扉前で立っていた。
「怖いですよ、二人とも」
「っるべ、てめぇ……!
お前が…お前が悪魔なんだろ?!」
「ひどいなぁ、俺はただ皆を
綺麗にしてただけなのに
それに、俺が清めた遺体は
みぃんな【人間】でしたよ?」
更に怒り心頭になる宇佐美とぐっと拳を握りしめる叢雲。確信していた。この葬儀屋が、この悲劇を生んだ悪魔なのだと。
その思考を知ってか知らずか、星導は二人と見据えた。どこかすべてを見透かしているような眼光。
そしてその視線は宇佐美を外れ、叢雲一点に止まった。
「残念です。…カゲツとは、
二人旅行の話もしてたのに。
まぁ嫌やって断られましたけど」
「…星導、」
「やだなぁ、こんな時に限って
それで呼ぶのやめてくださいよ
…惜しくなるじゃないですか」
「ぼく、どうすればよかったか
もうなんも分からん」
宇佐美は一瞬だけ聞くな、悪魔の戯言だというふうにカゲツを見るが、ぐっと奥歯を噛み締め星導に向き直る。
「もう皆死んだ。それに、おまえも……
頭ん中ぐちゃぐちゃや」
「…なら、俺のこと
一生引きずっててもらえますかね
忘れられさえしなければ、ずっと誰かの中で
生き続けられるみたいなので」
「……嫌や」
「はは、また断られちゃった
でもよかったですよ、話せて」
夜が来る前に、と星導は最期を迎えた。葬儀屋の彼をエンバーミングする技術を、残された二人は持ち合わせていない。
空いている棺桶を引っ張り出してきて、その長身を収めた。
そして二人は教会を後にした。家が密集している場所に戻ってきておもむろに宇佐美が祝杯上げよう、と叢雲を自宅に誘った。叢雲は素直に頷く。
キッチン棚から宇佐美は酒を取り出した。彼自身酒は飲めないはずだが。本人曰く赤城に熟成名目で押し付けられたらしい。苦笑いしながら酒を叢雲が運んできたグラスに注いだ。
「宇佐美は?酒無理やろ」
「…おー。だからお茶になるけど
カゲツは大丈夫か?」
「ええよ別に。酒あんまり飲まんけど」
二人は向き合って、何に乾杯していいのか迷った後何も付け足さず乾杯、とだけ言ってそれぞれ飲む。
変化が訪れたのはその直後だった。不意に叢雲が咳き込んでその場にドサリと倒れた。
宇佐美はその叢雲の様子を眉一つ動かさず見下ろした。
「…カゲツ、お前さぁ
グラスに毒盛った?
ま、俺がグラス入れ替えたの
気づかなかったのがダメだったな
それに自分が盛られる想定してなかったろ」
叢雲はやがて咳の最中に赤が混じった唾を吐き出し始める。心臓が激しく脈打ち、それも嘘みたいに静まっていく。
宇佐美の輪郭からぼやけていき、身体が底冷えするような寒さに襲われながら、叢雲はその生命を手放した。
それを最後まで見ると、宇佐美はあの大鎌を抱えて歩き出した。そして叢雲の方を一度だけ振り返った。
「いいゆめみろよ」
宇佐美が真っ直ぐ向かったのは墓地だった。
そしてとある棺桶の前で立ち止まると、そのままどさりと座り込んだ。
棺桶の蓋を開けると、そこには葬儀屋の手によって綺麗になり清潔な服に着替えさせられていた佐伯の遺体があった。その体は何処も腐敗していない。
その顔は今は無表情で、あの大きい口で笑う笑顔も聞き心地の良い低音も、その面影を失ってしまった。
「テツ……終わった、…終わったよ
結局…誰がお前を殺したのか、
わからないまま…」
今はもう喋らない佐伯に一人話しかけている宇佐美は、まるで劇に出てくる主人公だった。
そっとその色白な頬を両手で包んでも、人肌の温もりは返ってこない。ただ冷たいだけ。
それに泣きながら笑うと、大鎌を持ち上げた。切っ先を向けたのは自分の胸元。
「俺…お前がいない世界で
生きてくの、無理だよ」
ぐさり。大鎌が宇佐美の胸元を大きく貫き切っ先が背中を突き出る。
ごふ、と血が口の中を満たす。奇しくも佐伯と似たような死に様だった。
引き抜くまでの力は残っていない。貫通したまま佐伯の棺桶の隣に倒れた。
あの世でまた再会できることを願って、宇佐美という名の悪魔はその生命を断ち切った。
それから数時間後。
蓋が開いたままの棺桶。その近くに猫が一匹寄った。そしてにゃおん、と一声。
そうすると猫は煙のように消え、代わりに死んでいるはずの佐伯の遺体の指が、ピクリと動いた。
やがて睫毛が数回震えて、その瞼を押し上げた。紫水晶のような瞳がほんの少しだけ光を宿す。
「…残機……久々に使ったから
復活がだいぶ遅れ、」
身体を起こした途端、佐伯の目は絶望に見開かれた。
宇佐美だ。宇佐美の遺体。死んで数時間の、まだ血が垂れ流しのままの。突き刺さった大鎌もそのままだ。
はく、と口を開閉させながら棺桶から這い出てきて、その大きな体を上半身だけ抱き起こす。
今の佐伯の力で大鎌を引き抜くことは不可能だ。それに仮に抜けたとしても佐伯はしようとしないだろう。どう見たって死んでいる。
「……な、……どう、して…」
その声は震えていた。
結論から言うと、宇佐美は実質仮死状態だった佐伯の隣で、本当に自死してしまったということになる。
死のすれ違い。それはさながらロミオとジュリエットのようだった。
あまりのショックで涙も出てこない。一度戻った瞳の光がもう失われつつあった。
そして宇佐美の懐に収まっていた短剣を見つけて抜き取った。なぜ宇佐美がそれを持っていたかは佐伯には分からなかったが、そんなことはどうでもよかった。
顔色を完全に失いつつある宇佐美を見下ろす。そして頭部を持ち上げるとそっと唇を重ねた。まだ、ほんの少しだけ温かかった。
「だいすきだよ、リト君」
佐伯はそう言うと、力任せに自分の心臓めがけて短剣を突き立てた。肉がぐちゃりと切れる音がして、力を失った佐伯の身体はだらりと宇佐美にもたれかかる。
猫はもう現れない。鳴かない。
二人の恋人は、血だらけになりながらも最期まで互いに寄り添うように自ら命を落としたのだった。
これは、救われない世界で起きた、今はもう誰もいなくなった村のお話。
END.
役職一覧
mn…騎士
wn…神官(恋人)
tt…村人
rt…村人(悪魔)
ri…村人
kg…村人(狂人。要は悪魔陣営)
ru…村人(恋人及び悪魔陣営)
rb…葬儀屋
考察、感想などお待ちしております
が、前提の事実として
・ttをやったのは七人ではない
つまり↓
・rtは最初から黒(悪魔)ではなかった
・同じくkgも最初から黒ではなかった
・ruは黒陣営に非協力的だった
ということは記しておきます
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